蓼科高原日記

音楽・本・映画・釣り竿・オーディオ/デジタル機器、そしてもちろん自然に囲まれた、ささやかな山暮らしの日常

スピーカー ONKYO(オンキョー) M55―機種選定から入手まで

ONKYO(オンキョー)については、予てよりプリメインアンプのIntegra(インテグラ)シリーズやスピーカーに対して少なからぬ関心を持っていた。

 

特に、1980年代後半に発表され、いわゆる598戦争の嚆矢となったD-77は、12インチ(30cm)クラスのウーファーを具えたモデルを手元に置きたいと考えて機器選定を行った際、筆頭候補の一つとして狙ったのだがなかなか価格が予算と折り合わず、SONYのSS-G333ESを入手したことでそれきりになったという経緯がある。

 

その後も何度か、次の1990年代に世に出たD-102およびD-202の小型スピーカーが折に触れて意識されたが、これらも購入するには至らなかった。

 


一方、今年に入ってTechnics(テクニクス)のプリメインアンプSU-8055と出会い、1980年より前のモデルへの興味が湧き上がり、その頃のスピーカーへも目が向いてDIATONE(ダイヤトーン)DS-251を我がオーディオシステムに加えることとなったのは既述した通りだが、この際にもオンキョーという名は常に念頭にあった。

 


結局これらも見送りつつ、やがて自分なりにほぼ満足できるシステムが出来上がり、設置スペースもほぼ尽きたことから、ここしばらく新たな機器に対する関心は静まっていたのだけれど、先日、そんなONKYOの一品たるM55を思いがけず目にして衝動的に購入してしまった。

 

20230830-ONKYO M55

 

敢えて機種選定と言うなら、これがその次第である。

 


その一品の状態は、経てきた年月相応の汚れと傷が外観に散見されるものの、この時代のスピーカーらしい重厚な作りであることが一目でわかり、くすみ汚れを落とせば見違えるようになる可能性が感じられる。

 

機能面については、「音出し未確認」というのが気になるところで、さらにこの頃のモデルらしくアッテネーターが搭載されており、ここに劣化が生じている恐れも多分に懸念される。

 

また、エッジが劣化崩壊しているので、例によって張り替え作業も必要だ。

 


しかしこれらの瑕疵を考慮しても、3500円という価格は決して高くはないだろうし、何より一期一会の世界ゆえ、これも一つの縁、出会った時に――という気持ちを大事にした。

 

その本領を十全に発揮させるべく、これから手塩にかけたいと思う。

 

 

 

 

Special Relativity and Classical Field Theory(特殊相対論と場の古典論) Leonard Susskind(レオナルド・サスキンド)、他著

Special Relativity and Classical Field Theory(特殊相対論と場の古典論)」は、スタンフォード大学教授レオナルド・サスキンドが同大学で行った社会人向け講座(The Theoretical Minimum)から誕生した三冊目の書籍である。

 

20230826-Special Relativity-Cover

 


古典力学および量子力学を主題とする先立つ二冊は邦訳されたのに対し、この「Special Relativity...」は原書刊行から5年が過ぎようとしている現在も訳書は出ていない。

 

lifeintateshina.hatenablog.com

lifeintateshina.hatenablog.com

 

しかしながら、個人的に前の二邦訳書には何度か混乱を覚えた一方、原書に当たったところたちどころに解消した経験があるため、痛痒は何ら感じない。

 


同書の内容は、タイトルが如実に示す通り特殊相対性理論と場の古典論で、次の目次を挙げることでもう一段具体的に想像されるだろう。

 

第1講:ローレンツ変換
第2講:測度と4元ベクトル
第3講:相対論的運動の法則
第4講:場の古典論
第5講:粒子と場
第6講:ローレンツ力の法則
第7講:基本原理とゲージ不変性
第8講:マクスウェルの方程式
第9講:マクスウェルの方程式から導かれる物理的帰結
第10講:ラグランジュ(解析力学)に基づくマクスウェル(電磁気学)
第11講:場と古典力学

 

 

 

 


同書の最大の特徴は、読者(聴講者)およびその目的を念頭に、「The Theoretical Minimum―(次の段階へ進むための)必要最小限の理論」を提供すべく、徒な厳密性や自己完結性は求めず、物理理論の骨格を明確に述べている点であり、これは先立つ二冊と共通している。

 


初めに展開される相対論的力学は、他の一連の講座との繋がり・関係も深く意識されており、その運動法則はLagrangian、作用および最小作用の原理といった解析力学の考え方に基づいて導出され、後半の場の理論への自然な展開が図られている。

 

細かなことながら、初めに光速を1としてローレンツ変換の表式を簡略化すると同時に、式としての対称性を明確にしているのも印象に残った。

 


場の古典論についても、「古典力学」の主題の一つであった粒子のLagrangianから非相対論的な場のLagrangian、そして相対論的なそれへと順次階梯を上がる形になっている。

 

そして終盤に場の代表例である電磁場およびそれを記述するマクスウェルの方程式が取り上げられるが、それは相対論の源泉となったローレンツ力に関するアインシュタインの考察に準じての電磁場テンソルの導入、さらにマクスウェルの方程式の導出という構成で行われ、そこからクーロン、ファラデー、アンペールの各法則を演繹するという、歴史的経緯および電磁気学の一般的入門書とは逆の過程を辿っている。

 

 

このような理論物理学書通例の記述形式を採用したのは、基本原理からの理論展開という、同書の他部分、さらには前二書の基本姿勢に則してのことだろう。

 


ぽつぽつとExerciseは含まれているものの、それらはいずれも基本事項の確認を目的としたものゆえ、計算能力の養成には他書を併読する必要があるだろうけれど、物理学の面白さを味わうには好個の一冊(というより一シリーズ)であることは間違いない。