先のSONY SS-G333ESに続き、そろそろBOSE 121WB(WestBorough)の音質についての印象もご紹介していい頃だと思う。
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しかしその前に、いつものように同機の主な仕様から。
方式:1ウェイ1スピーカーバスレフ方式
ユニット:フルレンジ11.5cmコーン型(D-222)
インピーダンス:6Ω
外寸:幅270x高さ168x奥行180mm
重量:4.2kg
同機の選定過程において、BOSE製小型スピーカーに関し色々調べている際によく目にした特徴として、「設置条件に左右されず、どのような置き方をしてもBOSEの音が出る」というものがあった。
それを確かめてみよう――と意識したわけではないが、既に多くのオーディオ機器があり、新たに置けるスペースはごく限られていたことから、取り敢えずはそこ、和室の地袋の上へ、インシュレーターなども使わず直置きしてみた。
同機は横置きが想定されているようなので、これを踏襲。
もっとも、これには縦置きモデルもあり、両者は化粧塗装を施した面が違うだけで、どちらをどう置いても問題ないらしく、これも上の特徴を裏打ちする証左の一つと言えそうだ。
駆動するアンプはPanasonicのRAMSA WP-1100Aである。
さて、そこから再生された音に接しての第一印象は、以下の記事に書いた通り、「実におとなしく優等生的、よく言えば至極均斉のとれた音色なのだが、些かその度が過ぎているようにも感じられる、」というものだった。
もっとも、同じくBOSEの人気小型モデルである101MMが粗っぽいけれど溌溂な音を聴かせるのに対し、121WBは上の特徴を具えている、とのレビューを少なからず目にしていたので、一種のプラセボ効果を蒙ったのかもしれない――
と初めは思ったのだが、その印象が単なる気のせいではなかったことがすぐ明らかとなった。
忘れもしない、三回目の試聴の際、早くも音質が当初のものから大きく変化したのである。
この時かけたのはBill Evans Trioの「Explorations」で、前二回では各楽器がお互いの顔色を窺いながら、前へ出ないようにとひどく気を付けている感じだったのに、それが突然、はっきりと自己主張を開始したのである。
念のため別のアルバムに変えてみても、元のおとなしさに戻ることはなかった。
もっとも、自己主張と言っても、一般的観点からすれば決して強いものではなく、傾向としてはやはり全体の均衡が重視されている点を特質とすべきと思う。
わずか二時間ほどの音出しにより、これほどの変化を来たしたのだから、これはエージングではなくリハビリテーション効果と言うべきだろう。
そして、RAMSAは既に一年近く定常的に使用して高い安定度を示しているので、その効果はスピーカー121WBに生じたと見做して間違いない。
さて、そこから一ヵ月経過した現在の音質はというと、その間、初めに経験したような劇的な変化は生じず、基本的その変容後後の特質を保っている。
冒頭に挙げた通り、搭載されているのは11.5cm径のフルレンジユニットユニットゆえ、正直、ずしりと地に響く重低音や天へ突き抜けるような高音の伸び、精細な解像度などに驚嘆させられることはなく、また立体感・奥行きの面でもやや物足りなさを否定できないが、音楽を音楽たらしめている要素は損なうことなく再現する能力を具えており、それがフルレンジらしい、自然な帯域バランスと定位の良さと相俟って、肩肘張らずに音楽を愉しませてくれる。
DIATONE DS-66EX、SONY SS-G333ESの再生音をそれぞれ分析的、総合的キュービズムとすれば、BOSE 121WBはさしずめ琳派の情景を描き出してくれるスピーカー――といったところだろうか。
なお、当初のべた置きでも何ら問題なかったのだが、個人的にこの形はあまり好きでないため、二週間ほど経った時、ダイソーにあった小さな円形のゴムシートを121WBの底面四隅に貼ってみたのだけれど、音質への影響はほとんど(というよりまったく)感じられなかった。
また、以前、別のスピーカーを地袋上に直置きして鳴らした際、低音のぼわつきに閉口したものだが、今般の121WBではそれもなし。
よく言われるBOSEスピーカーの特徴を実地確認することとなった。