蓼科高原日記

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SONY SS-G333ESの音質

SONY SS-G333ESのポジショニングは次の画像の通りである。

 

20220509-SONY SS-G333ESの音質

 

田舎家ゆえ、部屋はそこそこ広いのだが、薪ストーブ設置スペースや大型FFファンヒーターを収めたペチカ風設えがある上、既存の家具やオーディオ装置もかなりの場所を占めているため、生活の動線確保を考えると両スピーカーの対称的設置は実現できなかった。

 

実際、リスニングポジションは上の画像のほぼ撮影位置で、掘り炬燵に腰を据え、少し左に向いてとなる。

 


ここで、前の記事の最後に付言した、今般のスピーカー設置作業を通じて気付いたことを述べよう。

 

はじめ、上の条件の下でもできる限り左右の対称性を得るべく、取り敢えず角度と距離をざっくりと目視で測って右スピーカーは少し遠くに設置し、左は若干内側へ振った。

 

そして音楽を再生してみたのだが、明らかに音像が左に寄ってしまっていたのである。

 

SS-G333ESをドライブするアンプは同じソニー製のTA-F555ESXで、モノラルモードでの再生もできることから、これに切り替えてみたものの、状況に変化はなかった。

 

無論、バランスつまみはきちんとセンターに位置している。

 

 

 

 


違いの出ているのは音量だけで、音質的な差異は感じられないので、ユニットの不良ではないと思われ、実際、確認のため同じアンプでDS-66EXを鳴らしてみると、音像は左右チャンネルの間にバランスよく定位している。

 

ここまで来れば、SS-G333ESにおける音量のアンバランスはポジショニングに起因しているだろうことは間違いなく、試みに、音の小さく感じられる右スピーカーを15cmほどリスニングポジション方向へ近づけてみた。

 

すると今度は音像が右へ振れてしまったのである。

 


従来、いずれのシステムにおける再生でも、リスニングポジションは両スピーカーのほぼ垂直二等分線上にあり、今般のように対称性の少なからず崩れた位置で聴くのは初めてだったわけだが、この条件がバランスにこれほど劇的に影響するとは思ってもいなかった。

 

しかし音波の空間伝播の様子を今一度考えてみれば、最も支配的であろう直接音の強度はほぼユニットからの距離の二乗に反比例するわけで、遠近のちょっとした差が音量感に大きな相違を惹き起こすことは十分あり得るはずだ。

 

特に、両チャンネルの中心に音像が定位するような音源では、それがはっきり認識できるに違いない。

 

そこで音楽をかけたまま、今度は数cmずつ、台座であるMDFボードごと右スピーカーを後方へ移動させていった結果、無事、中央に音像を位置させることができた。

 

調整が手際よくできたのは、正に手製スタンドのおかげである。

 


なお、間接音が大きく寄与する環境などでは、こちらの考慮も重要であろうし、特に左右で音質に差異の生じている場合はより複雑微妙な補正作業が必要となることはいうまでもないが、今般、単純な例ながら設置条件の影響を体感できたのはよい経験となった。

 

 

 

 


さて、こうしてセッティングが落着した後、一ヵ月間鳴らしてきたSS-G333ESの音質は――というと、最も強く感じる特質は、エッジを張った直後にごく短時間聴いた際の第一印象と同様、「全帯域に亘ってのバランスの良さ」である。

 

それに加えて、重心がどっしりと低い所に位置している点も挙げたい。

 


前者に関してもう少し言葉を重ねると、以下の記事の最後にもちょっと書いた通り、エッジ修理の直後には低域の一部帯域に硬さ・ぎこちなさがあるようで、十分に鳴っていない感じがなくもなかったのだけれど、その違和感は、思った通りこの一ヵ月間のエージングで完全に消失した。

 

片や中高域に目(耳)を向けると、DS-66EXに時折感じる刺激感もなく、実に滑らかな音が潰れることなく、十分な解像度を伴って細部まで忠実に滔々と流れ出してくる。

 

音色の傾向としては、ちょうどDS-66EXとTANNOY Revealの中間といったところで、これまで前者では煩く、後者ではややくすみの感じられたオーケストラ音源の再生において、SS-G333ESはそのスケール感とともに大きな力を発揮する。

 


もう一つの重心の低下について、これもDS-66EXとの比較の形で述べると、ウーファーの径が4cm増え、その面積は1.3倍になったこともあってか、単に聴覚のみではなく、全身の皮膚を透して骨格まで震わせるかの如き、量感を伴った朗々とした響きが実に心地よい。

 

ただ、DS-66EXで聴くことのできる、明確な輪郭、奥行き感とでもいうべき点では、一歩の引けをとっている印象を否めない。

 

更なる鳴らし込みでこの点も改善するかどうかの観察も、今後の愉しみとして行っていきたい。

 

さらに欲を言えば、大口径ウーファーの代名詞ともいえる38cm(15inch)ユニットを搭載したスピーカーではどうなるのか――と興味は尽きないが、設置スペースなど現実問題を考えると、それが満たされる機会は、仮にあるとしてもかなり先のことになりそうだ。

 


張り替え用エッジに荒技ともいえる加工を施しての修理だったこともあり、もしかしたら出音に大きな劣化が生じてしまうのではないか――との懸念を当初は抱いていたのだが、それもすっかり解消した。

 

失敗もあっての少なからぬ苦労は、それを補って余りある満足感で報いられたと感じている。