蓼科高原日記

音楽・本・映画・釣り竿・オーディオ/デジタル機器、そしてもちろん自然に囲まれた、ささやかな山暮らしの日常

鳥の雛

午後、天気が回復して青空が広がったので、陽射しは強いものの風が冷たく妙な大気を感じながら散歩へ出た。

 


いつものコースの一つを歩いて家へ戻る途中、道の上に何やら動く、黒っぽく小さなものがある。

 

近づいてみると鳥の雛である。

 

車はそれほど通らないものの、そのままでは轢かれてしまう恐れが高そうだったので、脅かさないよう掌に載せ、とりあえず路肩に繁る熊笹の根元へ移した。

 

そうして、親鳥がいるのか、巣はあるのだろうかと辺りを見回し、樹々を見上げてみたのだけれど、それらしきものは見当たらない。

 


と、せっかく避難させた奴がまたぱたぱたよちよちと道へ出てしまい、慌ててそれを追いかけていくと、別にもう一羽いた。

 

二羽並べてやれば落ち着くだろうし、親鳥も見つけやすいだろうと思いながら、その二羽を先ほどと同様、路肩の薮下へ置いてやったものの、やはりすぐまた歩き出してしまう。

 

それにそもそも、親鳥がいて巣があるにせよ、この二羽をそこへ運び上げることはできないに違いない。

 

ここに思い至って、人の手を加えない方がよいだろうことは承知しながら、家に持ち帰ることにした。

 

 

 

 


幸い、掌で暴れて心身を消耗させるようなことなく家に辿り着き、まず、小型の段ボール箱の中に古布を敷き、その上へ雛を置いてみると、ここでも柔らかさに安心したらしく、おとなしくじっとしている。

 

しかし、これが何鳥の雛なのか、何を喰わせたらよいのか、育てる上での注意点など、何も分からない。

 

そこで「鳥の雛」で検索しようろしたところ、さらなるキーワード候補として「落ちてる」とでてきたので、まずこれを見てみることに。

 

すると、地面にいる鳥の雛は、親鳥が見守っている可能性が高いのでそのままにしておくべし――といった注意が並んでいる。

 


こうして禁を破ってしまったことを再認識し、元の場所へ戻すことにした。

 

親鳥が人に触れた雛を見捨ててしまうのではないかとの懸念もないではないが、鳥が嗅覚に優れるといった話は聞いたことがないので、まあ大丈夫だろうと、箱を抱えて外へ出て歩き、先の場所へ。

 

今度は地面へ置いてもおとなしく座っているその二羽を残して家に戻ったのだが……

 


果たしてこれでよかったのだろうか、もっと良い対処の仕方があったのではないか、と不安になり、今一度さらにネットで調べると、「保温が大切」「仮巣を作るのも手」「一時的な栄養補給」といった文言に出会った。

 

これも何かの縁、乗り掛かった舟、できるだけのことはしてやろう――と、はじめの二つは先ほどの段ボール箱を使えるし、餌の方は――と考えて、どうやら雛はシジュウカラらしく、小麦粉でも害はないようなので、パンケーキの欠片を水で軟らかくし、これを口に含ませるため割り箸も用意した上で、またもや先の場所へ歩を運んだ。

 

が、着いてみると既に二羽の姿はなかった。

 


羽毛の生え揃っていたことからして、落巣雛ではなく巣立ち雛で、きっと親鳥が上手く事に当たったのだろう。

 

そうあって欲しいと思う。