当方の敷地は別荘地内の一区画で、1,000㎡を超える面積がある。
と言っても、傾斜地のため、平坦な部分は家の建っている部分とその周り、および玄関前の八畳ほどの「庭」だけだ。
10年ほど前だったろうか、その庭に小さな木が生えた。
当時はそこで毎年大々的に薪作りを行っており、玉材を斧で割った際、木片が飛んで幾度となくそれを傷つけたにもかかわらず、枯れることなく次第に伸びていった。
幹と枝、特に枝に鋭い棘があるため、少々厄介な存在ではあったのだが、こんな痩せた寒い土地で生きている姿にどことなく不憫を感じ、取り敢えずしばらくの間は――と、敢えて刈ることなくそのままにしてきた。
それが今では、幹の太さこそ直径10cm強だが、高さは10m近くになってしまった。
この程度で成長が止まってくれればいいのだけれど、さらに巨大化するとなると看過できないことから、これが何の樹かを改めて調べてみた結果、どうやら標準和名を針槐(ハリエンジュ)という、俗にニセアカシアと呼ばれる樹木らしいことが分かった。
問題はその特徴で、一番懸念していた樹高は25mくらいまで達する一方、根が浅いため強風などで倒れることが多いというのである。
しかも、実際に目撃した通り生育力が強く、十分に成長した暁には根から次々と別の株を生み出すらしい。
これらのことを知ってしまうと、もうこのままにしておく訳にはいかなくなり、除去することにした。
その最もシンプルな手段は言うまでもなく伐採で、まずはこれについて、適当な時季などを調べてみたところ、何と、切り倒すとその切り株や根から新たに多くの芽を吹いてしまうという。
では除去するにはどのような方法が良いのかと見ていくうち、「巻き枯らし」なるものの有効性を主張する情報に一つならず行き当たった。
先に、冬の草のない時季、鹿に樹皮を食われてしまった木のことを記事にしたが、そこに書いた「木は、幹の皮をぐるりと一周剥がされると枯死してしまう」というのは本当らしく、これを人為的に行うのが巻き枯らしである。
lifeintateshina.hatenablog.com
この巻き枯らしによっても新芽の出は皆無ではないものの、伐採に比べるとその数はずっと少ないという。
言ってみれば真綿で首を絞めるように枯死に至らせるわけで、実行するとなると少なからぬ躊躇いは覚えるものの、追って行わざるを得ない、新たに出てくる芽の除去を減らせることを鑑みれば、やはりこの方法を採るべきだろう。
実は、この決断は少し前に下していたのだが、時季について調べている際、「土用の間は土の神がその中に御座すので、土に関わること、伐採などもしてはいけない」との言説を目にし、特に急ぐ必要もないことからその明けを待って実施した。
この辺りでは九月中と早く秋の落葉を迎えるので、恐らく今般の処置によるそれをはっきり目にすることはないだろう。
そして、来春にはもう緑も繁らないはずだ。
立ち枯れたそれを、せめて何かに活かしてやりたいと思う。