特に意識したわけでも、また特別な理由のあったわけでもないのだけれど、オーディオの記事から長らく遠ざかってしまった。
ふと気づくと、SONY MU-A301修繕・修理についての記事の最後に、音質についてはJBL Control 1Xtremeと繋いでしばらく鳴らし込んだ上、併せてご紹介しようと思う――と書いてから既に二月以上なので、その私的宿題をここで果たすことにしたい。
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先ずは両者それぞれの主な仕様から。
◆JBL Control 1Xtreme
方式:2ウェイ・2スピーカーバスレフ方式ブックシェルフ型
ユニット:10cmコーン型+1.2cmドーム型
再生周波数帯域:50Hz~20kHz
インピーダンス:4Ω
クロスオーバー周波数:4000Hz
外寸:幅155x高さ228x奥行139mm
重量:2.4kg
◆SONY MU-A301
実効出力(20Hz~20kHz):300W+300W(4Ω)、200W+200W(8Ω)、600W(8Ωモノラル)
出力帯域幅:20Hz~30kHz(150W出力時、高調波歪率0.1%、4Ω負荷)
ダンピングファクター:150(1kHz、4Ω負荷)
外形寸法:幅440x高さ144x奥行409mm
重量:16.0kg
JBL Control 1Xtremeのウーファーユニット径は、当時のカタログ、というかパンフレットにも100mmと記載されているのに対し、このモデルの元であるControl 1および1Xのウーファー径は公称13cmであり、当初は価格とともにサイズもダウンしたのかと思ったが、エンクロージャーの外寸やそこへのユニットのレイアウトバランスに大きな変化は感じられず、さらに張り替え用のエッジについて調べたところ、ファンテックさんのページに共用の製品が掲載されており、実際、それと同等サイズのエッジで問題なく用をなした。
スピーカーユニット径の公称値に関しては極めて大まかであることはよく知られた事実で、それは一般的に大きい方へ鯖を読んだものとなるのに、このモデルでは逆方向へずらされているわけで、もしかしたら、「こんな小さなユニットからパワフルでダイナミックなサウンドが迸り出る」という点を強調しようとの目論見がJBLにあったのかもしれない。
Control 1, 1Xとの比較で他に目に付く点としては、再生周波数帯域が低域は70Hzから50Hzへと広がった反面、高域が22kHzから20kHzへ抑えられたのと、6Ωから4Ωへのインピーダンス変更、および重量が1.8kgから大きく増加したことがあり、これらを鑑みるに、1Xtremeで小さくないアップデートがなされた感を受ける。
一方のSONYの業務用パワーアンプMU-A301には、弟機に当たるMU-A151があり、これに比して倍の実効出力を誇る反面、ダンピングファクターはMU-A151の方が200と大きな数値となっており、些か不思議な気がする。
いずれにせよ、現代の基準からすれば驚くような数値ではないものの、当時としてはそれなりの弩級機だったとではないだろうか。
ついでに言えば、これら両機の後裔として、MU-A200, MU-A400が世に出たようだ。
さて、JBL Control 1XtremeとSONY MU-A301を並べた場合、価格をはじめ体格・体力に大きな差があることは重々承知しているのだけれど、MU-A301は完全なプロユースモデルであり、Control 1Xtremeの方もJBLのプロフェッショナルシリーズに位置付けられているという共通項を鎹として敢えて接続する事にしたことも、上の記事に述べた通りである。
そして、このアンバランスともいえるコンビネーションから果してどのような音が再生されるのかという興味も少なからずあったわけだが、実際にそれを耳にした印象を簡潔に言うなら、「悪くない」に尽きる。
しかしこれだけではあまりにも漠然としていているの、でもう少し質的な表現をすれば、装飾や肉付けを排した、音源の骨格が直接的かつ明瞭に描き出されるのである。
すなわち、余韻に満ちた音場の広がり、迫り来るような音像の押し出しは希薄で、聴き手の嗜好や聴き様によっては無味無臭で味気ないと言えなくもないだろうけれど、端正かつ透明で抑制の効いたダイナミズムは、個人的には申し分ない。
では、この特質は主にアンプ、スピーカーのどちらに起因するのかとなると、手持ちの他の機種に繋ぎ替えてみたところでは、両者とも基本的にこれを具えており、互いに高め合っているように思う。
当方の環境では、音楽再生時の出力は-30dBのインジケーターが折に触れて点灯する程度と、MU-A301のポテンシャルのごく一部しか使用していないわけで、これを存分に発揮させたら――との新たな興味が胸に湧いてきた。
Control 1Xtremeの対極に位置する、15inch≒38cmウーファーを2つ搭載したような大型モニタースピーカーに対しても、決して力不足とはならないだろうことはまず間違いない。