さて、前記事でご紹介したyoutubeの動画を、それぞれの続編も含めて参考にさせて頂きながら、デッキの窓、本体の天板および前面パネルを外し、SONY CFD-700から分離したカセットデッキ部は次のものである。
これと本体とが、そもそも5つか6つのコネクタで繋がっていたのだが、基板を裏返してデッキのメカニズム=機構を露わにするには、さらに11個のコネクタを基板から外さねばならない。
しかも、すべてのコネクタが色やサイズで相手を識別できるようになっているわけでもなく、無暗に外したら復元に酷く苦労することは明らかだったので、これも動画に倣い、リード線にラベルを付した上で一つずつ外していき、漸く内部を見ることができた。
話の順序としてはこれを先に書くべきだったかもしれないが、今般入手した個体の不具合の状況はというと、A, B双方のデッキとも、早送り・巻き戻しができず、再生はヘッドが上がって一瞬音は出るものの、すぐにヘッドが落ちてしまい、Aデッキ側ではさらにテープの巻き込みも生じた。
これらの事象を鑑みるに、やはり回転機構が正常に働いていないことが原因らしく、それはモーターの回転を伝えるゴムベルトの劣化によって引き起こされている可能性が高いようである。
実際、上の二枚目の画像からもお分かりの通り、装着されていたゴムベルトは、すっかり柔軟性が失われ、形状が保持されていた。
こうなっていては代替品の調達が必要であり、二つの動画ではこれに関し、それぞれ千石通商さんで取り扱っている品と、もう一つ、バンドー化学のバンコードなる製品が使われていた。
価格はと確認すると、リング状の成形品である前者が一式(計4本)で千円強であるのに対し、文字通り線状のコードを適当なサイズにカットして自ら溶着加工して利用する後者は、Amazonで750円(1.5mm径のもの200cm)だった。
ちょうどAmazonで他の買い物があり、同時購入すれば送料がかからないことから、加工の手間は要するものの、これもまた一つの経験と考えてバンコードを選択したのだが、まずその溶着で泥沼に嵌ってしまった。
この作業は言葉通り、カットしたバンコードの両端に熱を加えて溶かし、その部分を接合するわけだが、十分な強度がどうしても確保できないのである。
先ず第一に、何分直径1.5mmと細いのでずれなく合わせるのが難しく、何度か(も)練習してこれは克服したものの、やはり少し強く引っ張ると接合部で断裂してしまうことから、次には熱の加え方や接合時の力の加減を少しずつ変えて何パターンか試し、最後には簡単な治具まで作ることとなった。
それでも、溶着部に生じるバリを除去すべく、バンコードを指に巻いてこれを爪切りでカットした際に断裂が頻発し、これを鑑みるに、どうも引っ張り強度に比べて曲げ強度が大きく劣るのではないかと思う。
このように苦心惨憺の末、何とか必要な本数を用意したのだけれど、ここでサイズの見積もりを誤ったらしいことに気付いたのである。
このサイズは、デッキに元々装着されていたベルト長と、バンコードは「5%」伸長で使用すべしとの文言に則って算出したのだが、本来のベルトよりバンコードの方が一回り太い上、素材的にも張力が大きいため、装着したところテンションが掛かり過ぎている印象を禁じ得なかった。
それでもどうにかベルトをプーリーに掛けることはでき、それを回転させて連動も確認できたので、これも動画に倣って回転可動部のグリスアップを行った上、基板をねじ留めして11個のコネクタを繋ぎ、本体と接続。
そしてまずAデッキにカセットテープをセットし、再生ボタンを押したのだが……
作業前と状況は変わらない――どころか、よく見るとヘッドさえ上がっていないのだ。
早送りと巻き戻しはどうかと試してみたが、パイロットランプが何度か点滅するだけで、機構自体はやはり働かない。
次いでテープをBデッキへ移して確認を実施したが、結果はAデッキと同じだった。
やはり先に覚えた不安は正しかったようだ――と今更ながら認識したので、今一度バンコードを加工して先程より一回り大きなサイズのベルトを用意し、再びデッキを分離してコネクタを外し、基板をひっくり返して機構部を露わにしてベルトの架け替えである。
念のため、ここで再度前回より入念なグリスアップを施し、元へ戻して動作確認を行ったのだが、状況には何ら変化は見られなかった。
もしかしたら、強すぎるベルトを装着したことで、機構部に歪みが生じてしまったのかもしれず、仮にそうだとしたら、この調整は計測器具などを持たない素人には到底無理だろう。
そう思いながらしばらく眺めてみたところ、配線に加え、内部のメカニズムも非常に複雑で、やはりとても手に負えそうもないことから、遺憾ながらこれ以上の深追いは断念し、デッキ修理作業から撤退することに決めた。
「簡潔こそが叡智の真髄である」とは確かシェイクスピアの言葉のはずだが、それに照らすとこのCDラジカセは……と、負け惜しみながら思ってしまう。