何年か前の、今の時季より少しあとだったように思うが、突然両手の甲がそれこそ言葉通り燃えたように真っ赤になってしまった。
気付いたのは入浴後である。
一体これはどうしたことだろう――と不安になったが、その時は特に痛みも痒みもなく、それにもちろん一般医療機関は閉まっている時刻だったので、必要なら翌日受診すればいいだろうと様子を見ることにしたところ、就寝後、寝具の中で突如手が疼き出し、猛烈な痛痒に苛まれた。
この感覚は遥か昔に経験したことがあるようだが、何だったろうか――と記憶の底を探っているうち、子どもの頃に時折生じた「しもやけ(霜焼け)」だと気付いた。
もしそうなら原因がはっきりして却って安心なわけで、試しにオロナインを塗布してみたら、その直後は疼きが昂進したものの、やがて反転して徐々に治まっていった。
その後、別の不調で病院を受診した際、担当医から「ひどいしもやけですね」と言われて上の判断の正しかったこともわかったが、結局それが完全に治ったのは春になって雪の消えた頃だった。
それから毎年、この時季になるとしもやけが手に出る。
このしもやけ(凍瘡=とうそう)の原因は血行不良ということで、真冬よりも、寒暖差の大きい晩秋から冬の初め、あるいは冬の終わりから春先にかけて起こることが多いらしい。
当初は、いきなり真っ赤になったように思ったが、何度かの観察を経て、実際はまず虫刺されのようなぽつんとした膨らみができ、それがはじけるような感じで周囲が赤くなることも知った。

この秋も先月の中頃、それがいつものように両手の人差し指の根元に現れ、一旦しもやけらしい様相を呈した後、速やかに処置――適宜のマッサージとオロナイン塗布――を始めたのが奏功してか、今般は既にだいぶ治まっている。
とは言え、これも経験から、冬を通じて春にかけ、今後同じ所や別の個所に再発することはまず間違いない。
物心ついて以来長らく、周囲の暖房設備の向上に加え、身体も強壮になったため出ることのなかったしもやけだが、寒い土地へ移ったことに加齢も重なり、再びこれが頭を擡げてきたのだろう。
こいつともうまく付き合っていかねばなるまい。