蓼科高原日記

音楽・本・映画・釣り竿・オーディオ/デジタル機器、そしてもちろん自然に囲まれた、ささやかな山暮らしの日常

カセットテープ今昔

去年の十月、そして十一月に、それぞれ「SONY CFD-700 DoDeCaHORN CD」「SANYO U4-W26(K)」という二台のラジカセを購入したのは、昔録ったカセットテープが古い段ボール箱から出てきて、これを再生する手段を手元に備えておきたかったため――ということは、既に記事に書いた。

 

そして、CFD-700は遺憾ながらその用をなさなかったものの、U4-W26(K)の方はデッキ部がしっかりと生きており、入手の目的を果たすことができた上、折角の録音機能を試すべく新品のテープを購入して録音を行ってみたことも、既述した通りである。

 


そのテープを購入する際、果して現在も製造販売されているのだろうか――との不安を覚えたのだけれど、これは杞憂に過ぎないことがすぐに判明した。

 

といっても、このメディアが全盛を誇っていた頃とは大きく様相が変わっていることに気付き、少なからず戸惑いを感じたのも事実である。

 


まず何より、以前(1980年頃)はさまざまなメーカーが、それぞれグレードの異なるいくつもの製品をラインナップしていたのに対し、現在はこのメディアを製造しているメーカーがごく少数に限られている上、製品もほぼ一種のみ、バラエティはただテープの長さ、すなわち録音(再生)時間の違いだけらしいという点だった。

 

さらに、その録音時間については、往時はほとんど見られなかった10分という短いものが結構幅を利かせていることにも少々驚いた。

 

もっとも、これは私がカセットテープに接していた次の時代にカラオケが隆盛となり、その練習用として広く使われるようになったものが、当時の愛用者により綿々と利用し続けられて来たことによるようだ。

 

 

 

 


記憶を掘り起こすと、かつては国内各社の最も廉価な製品の定価が、60分テープで400円、その一つ上のグレードのものが550円だったように思う。

 

さらにその上にハイポジションやメタルテープがあり、後者の最高峰といえる、ずっしりと重いダイキャスト製フレームを纏ったTDKのMA-Rには、2000円ほどの定価が付されていたはずだ。

 


確か、60分400円のテープは語学等一般用、次の550円のものからが音楽用と謳われていたはずだが、当時中学生だった私は、通常の音楽鑑賞には基本グレードのテープを使用し、その上のものはちょっと特別な音源やエアチェックのマスターテープ用としていた。

 

これは周りの連中もほぼ同様だったものの、私がさまざまなメーカーの製品を色々試してみるタイプだったのに対し、TDKMaxellといった特定メーカーのテープのみで統一する友人もいた。

 

そんなTDK信者の一人は、話の種に上のMA-Rを買って皆に見せびらかし(てくれ)たものだ。

 

 

 

 


「定価」というものが厳然と存在していた当時も、もちろん大抵の場合は値引き販売されており、その率は製品や販売店によって異なるわけだが、半額となっていることはまずなく、唯一、定価400円のBASFの60分テープがこれに該当し、私などは好んでこれを利用した。

 


今般、私が久しぶりに手にしたのは、MaxellのURという製品の90分テープ5本セットで、ネット通販での購入価格は千円強+送料、一本当たり約300円だったので、上記BASFとほぼ同額といえよう。

 

20230104-カセットテープ今昔

 

しかし、その実物を手にした際の第一印象は、身体に微かに残っていたのとは大きく異なり、何と素っ気なく、丸っこいのだろう――というものだった。

 


カセットテープ華やかなりし往時は、各社ともテープ自体の特性・性能は固より、フレーム及びパッケージのデザインにまで力を注いでいることが如実に見て取ることができ、その結果として百花繚乱たる様相を呈していたものだが、それに比べると正直味気なさを禁じ得ない。

 

フレームもケースも透明で、記されている文字も品名のみ、無駄を排したシンプルさと見ることもできるのだけれど、いずれも縁が丸め処理されていることと相俟って、往時の御粧ししたシャープな姿を覚えている者には何とも馴染み難いのである。

 


さて最後に、肝心の性能について――といきたいのは山々なのだが、今当方の手元にある、カセットテープへ録音のできる機器はSANYOのラジカセU4-W26(K)のみで、既にご紹介した通り同機は録音レベル調整機能を具えておらず、テープの性能を十分に汲み出すことが難しいため、述べるのは控えるべきだろう。

 

本稿にはただ、性能はやはり往時の製品の方に軍配が上がりそうだということと、商品レビューに見かけて懸念した、「録音できない不良品」は一本も含まれていなかったことだけを記し、いずれ何らかの形で上が実現可能となったら、また改めて書いてみたいと思う。