OTTOのプリメインアンプDCA-A15の酷いバリノイズが再発し、これを治めることができずに使用不能となってしまったため、スピーカーが一セット余るという状況に陥ってしばらく経った。
生鮮食料品ではないのだから、別段急いで鳴らす必要はないのだけれど、孤立して立っているその姿を見ると何となく哀れを催すことから、相方のアンプをまた一台見つけることにした。
上のアンプは、もう40年以上前、個人的に初めて手にした製品という思い入れがあり、できれば同じ機種を――という気持ちなのだが、何分マイナーな製品ゆえ中古市場に出回ることがほとんどない。
少し範囲を広げ、同じOTTO製でもよい――としても状況はさほど変わらず、しかも希少性のためかそれなりの値が付き、特に正常に動作するものとなるとかなりの高値となってしまう。
一方、動作が不明、あるいはそれに問題のある個体については、これまでの経験から、「音が出ない」系の症状への対処法はわずかながら分かってきた一方、「要らぬ音が連続的に出る」不具合となると手に負えないこともあって、なかなか購入に踏み切れずに日が過ぎて行った。
そこでさらに条件を緩め、ターゲットをDCA-A15と同じ時期の製品としたところ、一気に対象が増えてしまったが、幸いなことに(?)私には「価格」という欠かせないフィルターがあり、これをかけたところ適度な品数に絞り込まれた。
こうして得られた視野をつらつらと眺めている内に目に付いたのが、テクニクスのSU-8044, SU-8055というモデルである。
いずれも従来知らなかった機種なので調べてみると、この二機の他にさらに8077, 8088, 8099という上位機種があり、いずれも発売時期は1979年頃ということ、および、8077までは当時隆盛だったシステムコンポの構成品でもあったらしいことがわかった。
しかしながら、発売時の価格は8044(￥44,800)、8055(￥51,800)と、当時の物価水準に照らして決して安いものではなく、その上のモデルは8077(￥69,800), 8088(￥99,800), 8099(￥158,000)となっており、8099などは相当なハイエンド製品と言うべきだろう。
なお、これらの型番は、来たるべき1980年を意識したものであろうとも類推でき、実際に1980年が到来した時にはSU-Vシリーズが世に出たことはご存じの通りである。
さて、これらSU-80xxシリーズで目を引くのは、LEDインジケータによるVUメーターを装備している点、および関連して一種独特の面構えを具えていることだ。
これは人により好悪の分かれるところかもしれないが、個人的には、VUメーターを具えたどことなく宇宙的かつ未来的な感じ(あくまでも「感じ」)は嫌いではなく、かつ、ネット上には「隠れた名機」として8055を絶賛している記事なども見られたことから、大きく食指が動き始めた。
加えて、元々、アナログ式VUメーターの付いたアンプには憧れがあったものの、同じ思いを持つ愛好家は多いのだろう、価格も上がってこれまで手が出なかったのだが、このシリーズに関しては、8055までは比較的値が落ち着いているのである。
こうして8044, 8055に注目することとなったのだが、やはり古い機種ゆえ、その状態に応じて付される価格は小さくない幅で分布しており、奮発して安全を買うか、苦労を覚悟して博打を打つか、その選択に迫られた。
しかし、自分の今いる世界はジャンクオーディオ、ということを鑑みると、後者を採る方向へ進むのは自然の成り行きである。
あとは現在の私のスキルで鳴らすことのできる品を手に入れることが決定的重大事となるわけだが、この点に関しては、先ず動作不能品は除外し、動作未確認となっているオークションにおいて、入力信号がないにも関わらず画像でVUメーターの振れている例や、説明内にその旨が明記されている品も、DCA-A15と同様、私の手には負えない症状を来たしている可能性が高いに違いないと考え、外すことにした。
そうこうしている内、今般、「SU-8055とチューナー(ST-8044)のセット、2,500円」という破格の売り物に邂逅、当然ながら動作未確認だったものの、画像を見る限り上の事象は生じていないらしいことから、購入に踏み切った。
果たしてこの一品は、どんな愉しみ(苦しみも含めて)を与えてくれるのだろうか。
