今般入手したダイヤトーン製スピーカーDS-251は、前記事に書いたように堅牢な突き板仕上げということもあって、50年前の製品としては比較的良好な状態を保っている。
しかしそうは言っても、長年に付着蓄積した埃や汚れは随所に見られたので、先ずこれらの除去を行った。
もっとも、分解してのオーバーホールを始めると収拾のつかなくなる予感もあり、取り敢えずは全体をしっかり水拭きするとともに、ヴィンテージの薫り高い家具長のグリルネットは取り外して水洗いした。
因みにこのネット、外枠だけではなく、ユニット部を刳り抜いた板が内側に当てられており、ここにも往時のメーカーの製品に対する姿勢を見て取れる。
もっとも、エンクロージャーへの固定にマジックテープを使用している点は、些か安直と言わざるを得ないが……
もう一つ特筆すべきは、バッフル表面にレザー(皮)の貼られていることで、これは高級感を現出するという目的と同時に、ユニットとの境界部の密閉度を確保する意図もあるように思う。
あとはいつものように、端子へ接点復活剤を吹き掛けた上、それが残らないようしっかり拭き取ってクリーニングは完了である。
続いて機能確認。
音は出る――と明記されてはいたものの、恐らく各ユニットが正常に機能しているかまでは確かめられていないだろうから、先ずこの点を調べることにした。
例によってweb上に公開されている簡易音生成器で、それぞれのユニットが担当する周波数の音を、音量を抑えて再生してみるのである。
DS-251のクロスオーバー周波数は2kHzと10kHzに設定されているので(この数値からも最高域ユニットはスーパーツイーターの役割であることがわかる)、1kHz, 5kHzそして15kHzの音を選択。
その結果、前の二音はいずれも正常に耳に届いた一方、15kHzの超高音は聞こえなかった。
まさか老人性難聴ではないはず――とは思ったものの、少々不安になったので念のため別の再生システムで鳴らしてみたところ、問題なく認識できて一安心。
序に、一体どこまで高い音を捉えられるのだろうと、次第に周波数を高めていった結果、23kHzまでは聞き取ることができた。
この限界が我が聴覚のものか、それともシステムのものかは定かでないけれども、現状十分な可聴域であることは間違いない。
閑話休題――ということは、DS-251に15kHzの再生能力がないということで、これは再生周波数帯域40Hz~25kHzという仕様を満たしておらず、スーパーツイーターの死んだ個体を手にしてしまったかと落胆したが、ふと思いついて若干周波数を下げ、14kHzを再生したところしっかりと鳴ってくれた。
今度は逆に上げていくと、14.5kHzまでは再生され、それより上は駄目ということが判明。
これでも仕様には及ばないわけで、もし上に挙げた10kHzが単にスーパーツイーターのカットオフだとしたら、活きているのはツイーターまでで、これが何とか14.5kHzまでカバーしていることも考えられる。
そこでこれを明らかにすべく、同機に具えられた機能でスーパーツイーターをオフにしてみたものの、はっきりした変化は聞き取れない。
やはりスーパーツイーターの問題か――と思いながらも、念のためネット上の情報をあれこれ見たところ、発売当時からこのような感じだったらしく、結局スーパーツイーターが正常か否かの結論は下せなかった。
ともあれ販売時の説明通り音は出ていることだし、仮にスーパーツイーターが駄目になっているとしても現状対応のしようもないので、これは一先ず措き、他に機能に関わる問題はないかのチェックを進めることにした。
この点、ダイヤトーンスピーカーで真っ先に想起されるのはエッジの硬化であり、DS-251もダンプ剤の塗られた布エッジが採用されているのでその可能性を懸念していたが、指先で軽く触れたり押したりした感じでは、エッジとして必要な柔軟性は具わっているようである。
手元にある同じダイヤトーンのDS-66EXに比べるとエッジが薄く、ダンプ剤の量も少ないことがその理由ではないかと思う。
ただ、逆に、これで密閉性が確保されているのだろうかという疑念を覚えながらエッジを眺めていると、一部にヒビを発見。
これも完全に裂けているのかは微妙なものの、何らかの手当をしておきたいところである。
さらに見ていくと、コーンにも円周方向に折れ目のような筋を見出すに至ったことから、併せて対処することにした。
これらについては続稿に記したい。