蓼科高原日記

音楽・本・映画・釣り竿・オーディオ/デジタル機器、そしてもちろん自然に囲まれた、ささやかな山暮らしの日常

ダイヤトーンDS-251の修理(エッジの亀裂とコーンの折れ筋)

(承前)

 

ダイヤトーンDS-251のウーファーエッジは、ロールが奥へ凹んだ所謂逆ロール型である。

 

そして既述した通り、同メーカーのスピーカーに往々にして見られるエッジの硬化は出てはいないものの、一ヵ所、径方向にエッジを寸断する形で亀裂が生じていた。

 


さらにウーファーのコーンにも、こちらは周の方向に折れ目のような筋が走っており、手で軽く動かした感じではさして問題はないようだが、その様子からすると恐らく裏ではもっと深い傷になっていると推測されたので、先ずはこちらから対処することにした。

 

そのためにユニットを外し、序に内部の様子や本当にアルニコ磁石が採用されているかを確認しようという気持ちもあったのである。

 


ウーファーユニットの固定は留めねじ4本だけというシンプルなものだが、バッフル面に貼られたレザーの効用か、密着度は非常に高い。

 

バッフルとユニット、どちらにも傷をつけないよう、その間にマイナスドライバーを徐々に挿し入れ梃子のように軽く動かすと、無事ユニットが外れた。

 

目に入った磁石の形状はネット上などに紹介されているのと同じアルニコ特有のもので、先ずは一安心。

 

内部は密閉型だけに吸音材がしっかりと詰められてはいたものの、隙間なく――というほどではなかった。

 

 

 

 


さて、問題の筋だが、思った通り裏でははっきりした傷になっている。

 

このような傷に対する修復材があるのかどうかは知らないが、仮にあるにせよそれなりの値段はすると思われるので、深く探したりせず代用品で間に合わせることにした。

 

以前、同じダイヤトーンのDS-66EXの修理にも使った、マスクの不織布である。

 

マスクの縁を切り取って層ごとにばらした不織布を適当な幅・長さの短冊形に切り、接着剤で亀裂に貼り付けるという、至極簡単な手当てであるが、これで十分使用に耐え得る状態に戻せるはずだ。

 


ただ、コーンの機能を鑑みると、接着剤は乾燥後にしっかりと硬化するものを使うべきだろう。

 

とは言っても特別な製品ではなく、お馴染みの木工用ボンドで、これを筆で不織布の短冊に塗り、曲がっている傷を完全に覆うよう、二列並べて貼り付けた。

 

20230319-DS-251 コーン修理

 

この傷の原因は不明だが、スピーカーの移動の際、何かにコーンをぶつけたのではないかと思う。

 


残るエッジの亀裂にも同じ対処を施す。

 

はじめ、こちらも補修が目立たないよう裏貼りにするつもりだったのだが、フレームが邪魔でエッジの最外部分まで手当するのが難しかったため表貼りに変更。

 

さらに、上とは異なりエッジの柔軟性を損なわない接着剤が望ましいので、この性質を具えた「アルテコ パワーエース 速乾アクリア」を用いた。

 

ウーファーをバッフルへ戻した姿は些か痛々しいけれども、使用時には高級家具調(?)のグリルネットを装着するのでまあいいだろう。

 

20230319-DS-251 エッジ修理

 


もう一つ、ウーファーコーンの退色も目立ったことから、カーボンコーティング(何のことはない、単なる墨汁の塗布)――も考えたが、取り敢えず最小限の手当てで鳴らしてみることにして見合わせた。

 


なお、前記事に述べた通り、この個体の再生周波数帯域の上限は仕様に及ばず14.5kHz辺りに留まってしまっているのだが、こうして一先ず修理を終えて軽く音楽を再生してみたところでは、確かに後の時代のモデルに比べると高域が若干詰まった感じではあるものの、決して聴くに堪えないような音ではなく、見方によってはスピーカーの個性とも言え、エージングによりこの音質が向上こそすれ低下はないであろうことを考えれば、十分使用できそうである。

 

そのインプレッションについては、エージングの結果を俟ってご紹介しよう。