蓼科高原日記

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Technics(テクニクス) SU-8055の仕様と音質

水洗いという荒療治を施し、これが幸い奏功したTechnics(テクニクス)製プリメインアンプSU-8055で音楽を聴き始めてからもうすぐ一月になるので、例によってその主な仕様と、再生音質に対する個人的な印象をご紹介しようと思う。

 

20230302-Technics(テクニクス) SU-8055の仕様と音質

 


同機選定に至った経緯についての以下の記事にも書いた通り、このアンプの発売は1980年台を目前とした時期のことで、価格は51,800円、当時の物価水準からするとそれなりの値が付された中堅モデルと考えられ、これは以下の主な仕様からも窺うことができる。

 

lifeintateshina.hatenablog.com

 

実効出力(20Hz~20kHz):45W+45W(8Ω)
出力帯域幅:5Hz~30kHz(-3dB)
全高調波歪率:0.03%
SN比:Phono 82dB・Tuner, Aux, Tape 97dB・Mic 70dB
外形寸法:幅430x高さ142x奥行255mm
重量:7.2kg

 


同機がデジタル式VUメーター(パワーメーター)を装備していることも既述した通りだが、もう一つ、マイク入力、およびこれと他ラインからの音声とのミキシング機能を具えている点もまた、特徴として挙げられるかもしれない。

 

これは恐らく、家庭でのカラオケが広がり始めたことを反映したものだろうけれど、この機能あるがため、却ってオーディオマニア・ファンには外方を向かれるという嫌いがあったらしい。

 

しかし、現在中古市場などに数多く出回っている事実は、決して少なくない台数が贖われたことを示しており、実際、今般同機からの再生音を聴いて、その理由を十分に納得させられた。

 


当方では、SU-8055にビクター製DC-5500という、1987年頃に世に出たシステムコンポの一部を成すスピーカーを接続している。

 

それまで、スピーカーDC-5500は、ELEGIANTのデジタルパワーアンプPanasonicの業務用パワーアンプRAMSA WP-1100Aで鳴らしてきたのだが、いずれのアンプでも低音の軽さと高音の薄さが少なからず気になっていた。

 

音源によっては、例えばアメリカのウェストコースト・サウンドAORすなわちAdult Oriented Rock(今ではともに死語?)などなら決して悪くはないものの、私の聴くジャズとクラシックの再生では不満の種となっていた。

 

特に高域については、ジャズで多用されるシンバルの音が、まるで箔を打っているようなペラペラしたものとなり、これを気にし出すと聴き続けられないこともあったのである。

 

 

 

 


ところが、今般SU-8055でドライブしてみると、上の弱点が払拭され、どっしりと腰の据わった低音とかっちりとした質感を具えた高音が響いて来たのである。

 

上に示した通り、SU-8055の出力は45W(×2、以下同)なのに対し、ELEGIANTは50W、RAMSAは80Wとこれらの方が勝っているので、このスペックの差が理由ではなさそうだ。

 

他の仕様に関しても、SU-8055に比べてあとの二つは発売年がずっと新しいこともあり、やはり数値的には優位に立っているにもかかわらず、なぜ上手く鳴らないのか――と書いている内、この時代の違いに基づく、オーディオ機器に対する基本思想・姿勢ともいうべきものの差が、上の音の相違となって現前しているような気がしてきた。

 

これはあくまで私個人の直観的なもので、特に根拠はなく、またそれを突き詰めてもいないのだけれど、しかし不思議な確信めいた感じを否定できないのである。

 


ともあれ、SU-8055の生み出す音が、しっかりした骨格に適度な肉付きを具えたもので、ジャズのエネルギーと躍動感を見事に描き出してくれることは確か。

 

反面、精彩緻密な解像度は感じられないものの、上の魅力はこれを補って余りある。

 

片やクラシック音源の再生に関して言うと、はじめにジャズを聴いた感じでは、正直向かないのではないかと思った。

 

実際、ソロやデュオの楽曲では透明度の不足を些か感じることもないではないが、上の躍動感が臨場感へと自然と転化されるのか音場の充実度は高く、オーケストラ作品などは存分に堪能できる。

 

以上を標語的に纏め、「微分的分析力より、積分的総合力を重視したプリメインアンプ」とでも称えたい一品だ。