蓼科高原日記

音楽・本・映画・釣り竿・オーディオ/デジタル機器、そしてもちろん自然に囲まれた、ささやかな山暮らしの日常

道具の力

ある電気機器の調子が悪くなったため、内部を見てみることにして天板を外そうとしたところ、留めねじが固くて回らなかった。

 

四本の内三本までがそうなのである。

 

もっとも、仮にこれが一本だけだとしても、その先へ進めないことは同じなのだが……

 


かなり力を加えたことで何度か舐めてしまい、ねじの頭のプラス溝を若干潰してしまった感も出てきたので、そのまま深追いするのは危険と判断して一旦作業を止め、さてどうしたものかと暫し思案。

 

その末に潤滑剤の使用を思い付き、ちょうど手元にあったKURE556を噴射して10分ほどおいた上で再度ねじ回しを試みたのだけれど、相変わらず三つともビクともしなかった。

 


そこで他に手はないかとネットで調べてみると、衝撃やを加えることで固着を緩めるという方策のあることを知り、手持ちのドライバーが軸とグリップとを分離できるものなので、その軸をねじに当て金槌で軽く何度か叩いてみたが奏功せず、続いてドライヤーで手を触れると反射的に引っ込める程度に加熱してから回してみたが、やはり駄目だった。

 

 

 

 


これらは十分注意して行ったのだが、溝の潰れは悪化してしまい、残された試行回数は少ないだろうと危ぶみながら落ち着いて考えてみると、使用しているドライバーは遥か昔、中学生時代に技術の授業のために集団購入したもので、これまで健気に役立ってくれては来たものの、当然ながら最高の機能性を具えたものではなく、握りも細くて十分なトルクを加えにくい上、長年の酷使で先端部にも若干荒れが認められる。

 

そこで今一度、より大きなトルクを得るべく握りに雑巾を巻き付けて慎重に挑んでみたが、突破口とはならなかった。

 

しかしながら、雑巾が緩みがちになったにもかかわらず、先ほどまでより力を加えやすい感じはあり、もっとグリップの太いドライバーを用いれば、もしかして――という閃きめいたものを覚えた。

 

そこで、そんな品を一本手元に置いておくのも悪くなかろうと、Amazonを眺めて見つけたのが、「ベッセル(VESSEL) ボールグリップドライバー +2×100 220」である。

 


それが届いたので、早速再度ねじ回しを試みた。

 

20230402-新旧ドライバー

 

念のため、今一度クレ556を噴射し、さらにドライバー軸を当てて金槌で叩いた上、体重を利用できるような態勢で新ドライバーをねじ穴へ嵌め込み、最初の加力がポイント――と意識してぐッと回すと、何ともあっけなく緩めることができた。

 

他の二つのねじも同様、先の苦労が嘘のように、舐めるようなこともなくすんなりと回ったのには、本当に驚いた。

 


「弘法筆を選ばず」との格言もあり、今般の事例でも、たとえば力士やレスラーのような筋力とともに加力のコツも有していれば、元のドライバーでも十分緩められたかもしれない。

 

しかし一方、技術者や職人にとって道具の重要なこと、目的に応じて適切なそれを用いるべき大切さもまた、よく言われるわけで、実際、それを見極める能力も技術の一部であろう。

 


ともあれ、今般の出費はわずか数百円、それに対する満足度を鑑みるに、極めて高いコストパフォーマンスを得たことは間違いない。