今般入手した往年のトリオ(TRIO)のプリメインアンプKA-5300の状態は、前稿に書いた通り右チャネルからの出音がなく、左からの音も不安定――とのことだった。
これを実地に確認すべく、念のため先ずはスピーカーではなくイヤフォンを繋ぎ、iPodを音源として音楽をかけてみたところ、上の文言に違わないことがわかった。
左からのみ聞こえる音は、bass, treble, balance各操作で変化はするものの、断続・跳躍を伴って不快感を禁じ得ず、片や右チャンネルに関しては、かなり音量を上げても全く鳴らない。
同機はリレーを搭載しているが、この現象からすると無音の原因はリレーの接点劣化ではないようで、左出力の不安定は明らかに各機能部の接触不良と思われる。
一方、外見的には大きな傷や目立つ汚れはなく、製造から半世紀近く経っていることを考えると良好と言ってよい。
もっとも、さすがにフロントパネルやつまみには経年によるくすみが感じられたので、最初にクリーニングのためこれらと天板を外すことにした。
天板はごく一般的なねじ留めである。
フロントパネルをシャーシから分離するには、bass, treble、ボリュームおよびそれと同軸のbalanceつまみを外さねばならないが、前の二つは嵌め込み式なので簡単に引き抜くことができたものの、ボリュームは軸にねじ留めされており、生憎その頭に合う六角レンチが手元になかったため、急遽調達する羽目となった。
正確なサイズは不明、しかし2mmレンチで入らないのでこれより小さなもの――と頭に入れ、外出した際にダイソーへ立ち寄ってみると、1.3mm, 1.5mmを含むセットがあったのでこれを購入。
帰宅して早速合わせてみたら、1.5mmレンチがフィットして無事ボリュームつまみも外すことができた。
それと同軸のバランスつまみは音質調整のものと同じく、引き抜くだけである。
こうして外したパーツにマジックリン相当の洗剤を噴射し、しばらく置いてウェスで擦り、水で濯ぐと、確かに輝きは増したけれど、水垢のようなくすみは落ちていない。
そこで、先のSU-8055でも使った車の塗装仕上げ用コンパウンドで印字が掠れない程度に磨いてみた結果、やはり完全な除去とはいかなかったが、パールシルバーのSU-8055よりは一段、くすみは目立たなくなった。
この正体は何か、完全に落とす方法はあるのかは興味ある問題だが、今は他にすべきことがあるので立ち止まらず先へ進むことにした。
そう、より重要な機能面の調査だ。
右チャネル無音の原因はリレーの不良ではないだろうとの思いと同時に、簡単にクリーニングできるなら――という気持ちも胸にあったのだが、リレーのカバーは押しても引いても捻っても外れなかった。
となると、クリーニングを行うにはハンダを除去して基板から取り外すことが必要、しかしハンダ面へのアクセスは底部からではなく、基板をひっくり返す形で行う組み立てとなっており、かなり面倒、かつ作業もし難いだろうことが予想された。
そこでこれは一先ず措き、左の出音不安定問題に対処することにした。
テクニクスSU-8055でも奏功した水洗いである。
その際の留意事項は既述した通りなのでここでは割愛し、結果についても最も肝要な十分な乾燥を待った上、再び出音状況を確認して後日ご報告したい。