蓼科高原日記

音楽・本・映画・釣り竿・オーディオ/デジタル機器、そしてもちろん自然に囲まれた、ささやかな山暮らしの日常

令和6(2024)年・初夏[5]―高山

高山には午後二時に到着した。

 

高山駅西駐車場という、名称通り駅の西側にある駐車場に車を停め、駅の自由通路をそこに展示された匠の技に関する品々を眺めながら渡り、線路反対側の観光案内書で観光マップとバス時刻表を入手。

 

20240705-(1)屋台

 

時刻表をもらったのは、高山駅西駐車場もしくは他二ヵ所の駐車場を利用した場合、「匠バス」に乗車すると駐車料金が3時間無料となると知っていたからである。

 

その料金は150円/hと決して高額ではないけれど、節約できるものはした方がよいだろう。

 

ただし、「匠バス」と名を冠した路線は南北線東西線・飛騨の里線とあるものの、案内所で確認したところ上のサービスが適用されるのは東西線のみということだった。

 

こんな紛らわしいことをしてはクレームが頻発するような気もするが、やはり車で来ながらバスに乗るような観光客は少なく、表面化してはいないのかもしれない。

 


高山も白川郷と同じく、多くの人で賑わっていた。

 

もちろんそのほとんどは観光客、そしてこの時も平日だったこともあり、その半数は外国からの訪問者という印象だった。

 

30年以上前に二度ほどここを訪れた時は、人出はやはり目立ったものの外国人の姿などほとんど見かけなかったことを鑑みるに、時の経過・時代の変容を思わずにはいられない。

 

 

 

 


「古い町並み」と観光マップに記載されている通りを中心に2時間ほど、匠バス東西線に一度乗車したのを含めてぶらつき、観たかったそれは一通り観了。

 

その満足感とともに疲労もかなり覚えていたので、馬籠に続き五平餅を一本食した。

 

この辺りのものは楕円形に伸ばした小判型・草鞋型のよく知られた形状で、馬籠で食したものとは異なっていたが、風味には共通点が多かった。

 


駐車場へ戻ると午後五時少し前、寝場所となる道の駅へ引っ込むのは言うまでもなく、夕食を摂るにもまだ早い。

 

さてどうしたものかと少し考え、午前中に果たせなかった入浴でも――とふと思いついて適当なところがないか検索したら、近くにゆうとぴあ稲荷湯という銭湯があったのでそこへ行ってみることにした。

 

車で走ること数分、着いてみると駐車場はほぼ一杯、時間を追うに従ってさらに混むだろうことから急いで暖簾を潜ると、先客はそれなりにいたものの窮屈感を覚えるほどではなく、汗と疲れを落としてさっぱりした気分で表へ出ると、予想通り駐車場は完全に埋まっていた。

 


夕食は観光の中心部から外れたところを走っている時目にとまったかつ庵で。

 

地元にもあるチェーン店に入るのは少々芸がないとは思ったが、またあちこち探してせっかくの爽快な気分を台無しにしたくないという気持ちの方が強かった。

 

食事を終えて外へ出ると、まだ蒸し暑さが若干残っている。

 

もちろん汗は掻きたくなく、またもう暫く時間も潰したかったので、近くにあったスターバックスへ。

 

考えてみるとこれに入るのは初めて、注文の手順がわからない。

 

取り敢えずカウンター前にできていた待ち行列に並んだが、間もなくこれで正解だったことが判明、要するに数多のファストフード店と同様、注文と支払いを済ませ、飲食物を受け取ってから席へ着けばよいわけだ。

 

アイスコーヒーを飲みながら一時間ほど持参した本を読み、午後七時半頃、まだ暮れ切っていない空の下へ出ると肌に触れる大気はちょうどよくなっていたが、塒へ向かうにはまだ少し早い。

 

そこで夜九時半まで開いている図書館でもう一冊の持って行った本を読み、さらにヘッドフォンで音楽を聴いて、九時過ぎ、おとなしくすればもう「仮眠」と見てくれるだろう時刻に道の駅へ行き就寝。

 

この夜はそれまでの疲労と寝不足による眠気に加え、入浴して心身がさっぱりしたことから、熟睡とはいかないまでもそれなりの睡眠を摂ることができた。

 

 

 

 


翌朝も早く、六時前に起きた。

 

高山の名物だという朝市をぶらつくためである。

 

この朝市は「陣屋前」と「宮川」の二つがあり、どちらもこの時期は朝七時から開始となる。

 

それまでまだ時間があったので、前日に続き今一度古い町並みを散策した。

 

さすがにこの時間には観光客の姿はほとんど見えず、昨日とは打って変わってこの町本来の落ち着いた佇まいを目にすることができた。

 

20240705-(2)高山の町並み

 

気が付くと七時を回っていたので、その近くへ来ていた陣屋前朝市をまず眺めてみたが、いくつかの露店が支度をしているだけで営業はまだしばらく始まりそうもない。

 

そこで踝を返して宮川朝市へ行くと、こちらは多くが既に店を開いており、細いながら人の流れも生じていた。

 

特に買うべき目当てもない、単なる冷やかし客、遠慮がちに遠めから各店の商いものを眺めて歩いていると、あっさりと反対の端まで来てしまい、些かあっけなく寂しい散策に終わってしまった。

 

この手のものは却って人出があった方がよいようだ。

 


午前中はもう少し観光を重ねる心積もりだったが、連日かなり歩き回って脚に疲労が溜まっていたのと、せっかく胸に刻んだしっとりとした高山の姿に雑踏を塗り重ねたくなかったことから、時刻はまだ八時ながら帰路に就いた。

 

この際も往路は避けて「野麦峠」越えの国道361号を辿り、午後早く無事帰宅した。