以前横浜に住んでいた時、スキーの帰りに長野新幹線に乗ったことはあるが、金沢まで延伸され北陸新幹線と名称が変わってからは、旅行自体長らくしなかったこともあって乗車していない。
現在の居住地である茅野市から金沢へ行くのにこれを利用する場合、乗車区間は長野から目的地までと全行程の2/3に留まるものの、やはり200km/hを超える列車だけあって所要時間の短縮は大きく、朝八時前に茅野駅を発って午前中に金沢駅に着いてしまう。
片や必要な特急料金は指定席4,850円、コストパフォーマンスを考えれば決して悪くないとは思ったが、コストダウンの方法が何かないだろうかと調べた末、「えきねっと」の「新幹線eチケット(トクだ値14)」を利用すれば通常の30%オフで入手できることを知った。
ただし、トクだ値設定のない列車もあり、また名称からも推察される通り乗車日の14日前までに申し込みが必要、さらに設定分が売り切れてしまったら申し込めない。
実際、今般も「はくたか」にはトクだ値が設定されていた一方、その前後の「かがやき」は通常の新幹線eチケット料金のみだった。
ところで、このチケットは特急券と乗車券がセットになっているので、当方から行く場合は茅野から長野までの乗車券を別途用意する必要がある。
この分断によって生じる料金の嵩みを避けらられないだろうかと色々調べたが、その方法を見出すことはできなかった。
もっとも、特急券と乗車券の合計額が30%オフとなることを鑑みれば、上の嵩みなど気にする必要はないだろう。
もう一つ、eチケットとして利用するICカードが必要とのことだったので、当初はモバイルSuicaを手持ちのスマートフォンにインストールしてこれに当てようとしたのだけれど、ここでまた同端末がNFC(Near Field Communication)機能を搭載しておらず頓挫してしまった。
仕方ないので素直にSuicaを購入し、えきねっとで予約した座席の紐づけを行い、新幹線乗車の準備は完了した。
先述したAndroidバージョンの古さによる問題もあるし、そろそろ機種変更を考えるべきかもしれない。
旅行初日、八時前に茅野駅を発ち、松本で乗り換えてほぼ十時に長野に到着した。
新幹線乗車までに二十分ほどの時間があったので、ここで昼食用の弁当を購入しようと、先ずはすぐ目に付いた売店に並ぶ駅弁を眺めてそのいくつかに食指は動いたのだが、如何せんどれも高い。
折角旅行に出たのだから少しくらいの贅沢は――という誰にもあるだろう気持ちがないわけではないものの、何となくそこに付け込まれているような気がして結局見送り、駅ビル内にあった中華料理店の弁当を先ほど見た駅弁のほぼ半額で購入した。
新幹線の改札もSuicaで問題なく通過。
紐づけができていなかったら――との懸念も杞憂に終わり、無事、間もなく到着した「はくたか555号」の乗客となって十一時半過ぎには金沢へ着いてしまった。
取り立てて列車の写真を撮るつもりはないけれど、自分の乗車する(した)ものについてはその姿を残しておきたい気持はないわけではない。
その程度のことゆえ、その筋のマニアの傍若無人な蠢きに周りの冷たい視線が注がれている場合などは身を引くし、ぼんやりしていて撮り忘れることもある。
今般も後者に該当し、撮影を失念してしまった。
走り始めてからそれに気付き、金沢駅に着いてから先端まで行って撮ろうかとも考えたが、座席が12両編成の6両目でそこまで歩くのが億劫だったことから、せめて――と側面の画でお茶を濁した。
しかしその後、思わぬアクシデントにより図らずも駅へ入構してきたはくたかの顔を撮る機会が訪れたのである。
さて、長野から金沢まで、はくたかに一時間半ほど乗車して受けた最大の印象は、「あッという間」という何とも情けないものだった。
確かに乗車時間自体短いにせよ、今思い返しても体感はそれを大きく上回っていた。
あまりの感動に時の経つのも忘れてしまった――のならいいのだけれど、遺憾ながらそうではなく、この印象は主に、トンネル内の暗闇や防音壁を目にしている少なからぬ時間が、走行の静かさ滑らかさという作用もあって圧縮されてしまったためのような気がする。
目的地への迅速な到着を主眼とした乗車ならこれは利点と言えるだろうが、移動にも感興を求めたい者にとっての旅の手段としては、望ましいとは言い難い。
しかしともあれ、予約の際にE席を希望した所以の、立山連峰の遠望は果たせたこともあって、それなりの満足感は得ることができた。