(昨年末の)旅の二日目は「あいの風・IR・ハピライン連携 北陸3県2Dayパス」を利用して金沢から敦賀まで往復した。
といっても列車に乗ることだけが目的ではないし、時間的にもある程度の余裕はあるので、福井と敦賀でのちょっとした観光も組み入れた。
宿を七時過ぎに出ると、前日は何とか持ってくれた空から冷たい雨が落ちている。
気温は自宅のある蓼科高原よりはずっと高く、家を出た時に着ていた上着を一枚減らしたのだけれど、一年でもっとも日の出の遅い時季、さらに経度の差から闇のまだ濃いこともあって、寒々とした気分でバスの乗客となり金沢駅へと向かった。
上記パスはスマートフォンの何種類かのアプリ上にデジタル乗車券として表示されるもので、当方は「RYDE PASS(ライドパス)」をインストールしてここから購入した。
注意すべきはまず利用開始日の指定で、これを誤ると修正できず泣きを見ることになる点。
そして端末が通信環境下にあることが必要で、SIMカードを抜いたような端末では使えないことである。
特に第一の点を鑑み、事前には正しくパスの購入されたことを一度確認するだけにし、あとは利用当日、使い方の最終確認を兼ねてIRいしかわ鉄道の改札窓口でアプリを起動し、利用開始日の指定を行った。
するとアプリ上にアニメーションの用いられた動きのある乗車券が表示され、これを駅員に見せることで改札となった。
一時間半弱の乗車の後、福井駅で降りていつものように観光案内所で地図をもらい、それを参照してまず福井城址へ向かう。
歩き始めはぱらつく程度の雨だったが、それが次第に激しくなり、目的地へ着いた時には本降りとなっていた。
それを避けたい気持ちもあって御廊下橋御門(山里口御門)櫓門2階の資料室へ入り、展示パネルの解説を拾い読みしたり窓から景色を眺めたりして暫し、うまく雨脚が弱まったので、表へ出て今一度周囲に目を回らせ、春には桜がさぞ見事だろうと思いながらそこを後にした。
続いて北北東へ300mほど歩いて養浩館庭園へ。
隣接する福井市立郷土歴史博物館との共通券(350円)もあるが、時間的制約から220円の単一券を購入。
はじめに、入園してすぐの、戦災で焼失したものを復元したという建屋へ入り、内部の造りや設えなどを目とレンズを通して記憶および画像に残すとともに、畳に着座してしばらく外の眺めを鑑賞した。

あたかも舟上にいるかのような興趣を喚起すべく、さらに観月を目当ての中心に据えての造営は京都の桂離宮を髣髴させ、復元時期の新しさから些か華やぎの強すぎる感は否めないものの、ふと気づくと思いの外長い時間が経っていた。
表へ出て、今度は苑路を辿りつつ庭園を嘆賞。
石と樹木、そして水、さらにそこに建物が加わって現出した統一・調和は秀逸と言うほかなく、名園と称されるのも宜なるかな、である。
来る時とは異なる路を辿り、福井神社を参拝して福井駅へ戻ったのが十一時過ぎ。
次に乗車予定の列車まで一時間ほどあるので、少し早いが昼食を摂ることにした。
観光マップによると片町通りの周りに飲食店が集中しているようだが、そこまで雨の中をさらに1kmほど歩くのもどうかと考えているうち、ガレリア元町というアーケード街を少し行ったところに、如何にも町の食堂といった感じの良さそうな店があったのでその暖簾を潜り、ソースヒレカツ丼おろしそばセット(税込み1000円)を注文。
個人的好みから言うとにはカツ丼のタレが少し濃すぎるきらいはあったものの、それを含めても十分美味い昼食だった。
12時8分福井駅発ハピラインふくいの列車に乗り、13時に敦賀駅へ到着。
途中、車窓がうっすらと白を被った景色を映したり、降る雨が雪に変わるところもあったが、多くの駅のホームの端に用意されたまったく出番のない除雪機はしょんぼりと所在なさそうだった。
敦賀では敦賀湾までバスで行き、赤レンガ倉庫などに寄りながら氣比神宮まで歩いて参拝し、時刻などの状況を見てさらに徒歩かもしくはバスで駅へ戻ろうと考えていた。
しかしそのバスについて尋ねようと観光案内所へ行くと折悪しくレンタサイクルを希望する先客がおり、少し様子を窺った感じではかなり長引きそうだったため、計画を反転させてまず氣比神宮を参拝をしようと歩き始めた。
駅からの距離は約1.5km、ニ十分ほどで到着し、重要文化財に指定されている大鳥居を潜って参道を辿り、手水舎で心身を清めた後、外拝殿の前で拝礼。

時間があれば南の池・亀の池のほとりを散策したいところだけれど、生憎少々忙しい状況だったので、最後に長命水を一口含んで神域を辞去した。
次いで1kmほど離れた敦賀湾へ向かって足を踏み出した――つもりだったのに、十分ほど歩いてもまったく海の気配が感じられず、これはおかしいとGoogleマップを確認したところ、却って距離が大きくなっていた。
一体何故、と思って今一度観光マップを見直したら、大鳥居を出て最初の舵取りを誤り、海岸線と平行に進んでいたことが判明。
取り敢えず引き返したものの、体力はともかく、進路を変更して改めて当初の目的地を目指そうという気力はすっかり失せてしまった。
神宮前まで戻って目に入ったバス停の時刻表は数分後に駅へ行くバスの到着を示しており、加えて急に暗くなった空から雨がまた降りだしたこともあって、不本意ながらここ敦賀での観光は打ち切ることにした。
金沢への帰りは往路を反対に辿るだけである。
まだ日没までは間のある時間帯だったが、空一面黒雲に覆われた車窓の風景は凄ささえ感じさせ、またただならぬばらばらという音に大雨かと思いきや大粒の霰で、名にし負う北国空を味わうことができた。
金沢駅へ着いて改札を出ると、先ほどまでとのコントラストもあって明かりが煌々と眩しい。
この日も有効な文化の森おでかけパスを利用して国立工芸館か能楽美術館へ行ってみようかとも考えたが、既に日の落ちて真っ暗な空から冷たい雨が降っているし、時間的にゆっくりできそうもなかったことから取り止めた。
その代わりというわけではないけれど、駅ビル内の土産物屋をはじめとするさまざまな店舗を冷やかしながらぶらぶら歩いている内、「香箱蟹ごはんのかにすし」というなかなか美味そうなものが目に止まった。
しかしその値を見ると税込みで1680円、少々高過ぎる気がして一旦は通り過ぎたものの、今は旅の途中、一点の贅沢があってもよかろうと思い直して踝を返し、これを購入。
宿へ戻って共用ラウンジで食した個人的感想を言えば、量の面では些か物足りないものの、味覚に関しては価格に見合うだけの満足は得られた。
もっとも、いくら旅においてでも常食とするものではないだろう。