蓼科高原日記

音楽・本・映画・釣り竿・オーディオ/デジタル機器、そしてもちろん自然に囲まれた、ささやかな山暮らしの日常

マレー鉄道のETSでイポーへ、そこでの残念と満足

クアラルンプールの夜は、昼間勧誘されたマッサージを受けにのこのこ出かけ……たりせずおとなしく床に就いたので、翌朝は6時頃に目が覚めた。

 

赤道の近くの土地ゆえ夏ながら日の出はさほど早くなく、まだ夜の明けきらぬ中、散歩へ出た。

 

昨夜賑わっていたアロー通りもまだ寝ぼけ眼、灯りの点った店もまだ多くはなく、辺りを一周して宿へ戻り、地階のレストランでチャパティとカレーのインド風モーニングセットを注文して朝食を済ませた。

 


この日はマレー鉄道(KTM, Keretapi Tanah Melayu)でイポーを目指す。

 

乗る列車は都市間高速列車ETS(Electric Train Service)、その名称が示す通りの電化された幹線を走行する特急である。

 

乗車する列車はKLセントラル駅を9時前に出るので、余裕を見て7時半頃宿をチェックアウトし、モノレールで同駅へと向かった。

 

車窓からKLのランドマークである世界第二位の高層ビルMerdeka118(ムルデカ118)を眺めながら、次に来るときはあれにも上ってみようなどと思っている内にKLセントラル駅に到着した。

 


マレーシアのすべてのクロスシートの列車がそうなのかは定かでないけれど、今回乗車するETSは車両の中央を境に座席の向きが反対に設置されている。

 

従って半分は進行方向に背を向ける形になるわけだが、KTM公式サイトからの予約の際にはどちらが列車の進行の向きかわかるよう配慮されており、もちろん座席指定もできるようになっている。

 

しかし、同様な座席配置のベトナムの列車の予約では、サイトがその点まったくなっておらず座席選択が非常に悩ましかった。

 

 

 

 


ETSは全席指定ながら、これから改札を始めるとのアナウンスと同時に待っていた客が一気に動き、かなり長い列が発生。

 

しかも改札を抜けると我先にと足早に、どころか中には走って列車に向かう姿も散見された。

 

この理由についてはその後の旅行で判明したので、これも追ってご紹介することになるだろう。

 

20251102-(1)ETS

 


指定座席に腰を下ろして待つこと暫し、列車は定刻にKLセントラル駅を発車、マレー鉄道の旅が始まった。

 

が、この日の乗車時間は二時間半と短い上、あまりに快適だったこともありほとんど印象に残らなかった。

 

実は、今回の旅の計画段階では、「マレー鉄道」という言葉から連想される古き良き時代の趣を味わうべく、ゆっくりとマレー半島を縦断しようと考えていたのだが、ネット上色々探しても特急や急行でない普通列車の情報が見つからず、またマラッカへの立ち寄りの便宜のためシンガポール―KLセントラル間を端折ってしまったことから、遺憾ながら諦めたのである。

 


イポー駅に着き、先ずは由緒あるその駅舎を外から眺め、心に留めた。

 

20251102-(2)イポー駅

 

時刻は正午、昼食を摂りたかったのだが駅前の大通りにはそれらしい店は見当たらず、チェックインは無理にせよ荷物を預かって貰おうと取り敢えず宿へ行くことにした。

 

それは地図によると駅から南方へ500mほど、ただマラッカとクアラルンプールでの苦い経験があるので、不安を否めず気も足も重い。

 

交通量の多い道をかなり気を遣って何度か横断し、目当ての場所に辿り着いてみると、不安は的中、地図上に示された位置には宿はなかった。

 

ただ、宿の情報の一つとして周囲の風景の画像が掲載されており、これを頼りに探索したところ今回はすぐに見つけることができた。

 

20251102-(4)宿の周り

 


宿ではやはりチェックインはまだできず、荷物を預けてロビーもどきで休憩しながら、近くに昼食を摂るに適当な店はないかとGoogleマップを眺めたら、近くのバスターミナルの一画に手頃な料金の食堂が見えたのでそこへ向かった。

 

店の構えは古びたガレージといった感じでお世辞にも清潔とは言えない。

 

しかし家族連れを含めて結構客は入っており、掲げられたメニューの写真もテーブルの上に並んだ料理の実物もなかなか美味そうなので空いている席の一つに腰を下ろした。

 

注文した料理の名は忘れてしまったが、出てきたのはオムライス風のナシゴレンである。

 

念のため持参したウェットティッシュでスプーンを拭く。

 

このようにするのは決して失礼なことではない――と事前にガイドブックで読んでいたが、実際周りの客も多くがティッシュペーパーなどで拭いてから使っていた。

 


料理は期待以上のものだった。

 

これで8リンギット――という嬉しい驚きに加え、中国系の料理人、給仕係の兄ちゃんとおばちゃん、そして見習いらしい少年、全員が自らの職場と仕事に誇りをもって生き生きと働いている姿に接して大きな感銘を得、非常に満ち足りた気分で店を後にした。

 

20251102-(3)バスターミナルの食堂

 


さて、観光はどうしようかと自問して頭に浮かんだのは、確かイポーは川を挟んで旧市街と新市街を持ち、旧市街には落ち着いた街並みが見られるというガイドブックの記述である。

 

そこでその旧市街へと考えたのだけれど、荷物になるのでそのガイドブックは家に残してしまい、記憶もはっきりしなかったため行き方がわからない。

 

取り敢えずまた駅の方へと足を踏み出し、そこへ着いてしまっても、旧市街の位置が記憶がよみがえることはなく、強烈な陽射しを浴びたことで気力が萎えそれ以上探すのも億劫になってしまったことから、すごすごと今来た道を引き返して宿に入った。

 


その薄暗い通路で同宿者に出会ったので挨拶したが、何の反応もなし――どころか不機嫌な面でそっぽを向かれてしまった。

 

顔付からするとユダヤ人らしい。

 

時が時だけにムスリムの多い国で居心地が悪いにせよ、あれでは自分で自分の首を絞めるようなものだろう。

 

などと些か不愉快な思いが心に兆したが、その後長期旅行中の日本人青年と言葉を交わし、また部屋から出ようとドアを開けた時、シャワー上がりの文字通り水も滴る金髪美女の下着姿に遭遇してすっかり気分は回復。

 

我ながら自分の単純さには呆れるばかりだ。

 


夕食も先ほどと同じ店で、と考えたのだが、ここは昼までの営業と知って断念、近くのインド人経営の食料品店でカップラーメンと米菓子を調達してこれに充てた。

 

シャワーを浴びると、その後はもう外へ出たくなくなってしまう。

 


帰国後、イポー駅から東へ少し歩けば件の旧市街に至れたことをガイドブックで確認した。