蓼科高原日記

音楽・本・映画・釣り竿・オーディオ/デジタル機器、そしてもちろん自然に囲まれた、ささやかな山暮らしの日常

岩波講座 世界歴史 古代2 地中海世界II

「岩波講座」は、岩波書店の専門叢書シリーズとして有名なものだが、「世界歴史」はその一つである。

 

この世界歴史は、元々1969年から71年にかけて全31巻(本編29巻+別巻+総目次・総索引)が刊行され、1997年から2000年に亘っては、構成を変えた新版全29巻が世に出て、さらに今年(2021年)の秋からはまた全24巻物が出版される予定のようだ。

 

 

私の所有するのは1969年に端を発する旧版で、初め各巻の標題を目にした時、これは通史を細部まで記述したシリーズであろうと考えて購入した。

 

20210314-世界歴史2

 

実際、古代―中世―近代―現代というそれぞれの時代区分の中、世界の各地域およびそれらの間の交渉をテーマとして書かれてはいるのだけれど、第1巻および2巻を読んだ限りの印象としては、複数の筆者がそれぞれの専門分野に焦点を絞って記述するスタイルもあってだろう、歴史を大きな流れで全体として捉えるのはなかなか難しい。

 

無論、これは私の基本的な歴史知識が貧弱なことが根本原因であり、それを具えた読者にとっては、通史の表にはなかなか現れない関係を見出したり、個別のトピックを深めたりするには申し分ない。

 

ただ、一点、細かいことになるが、「与えられた紙数の関係で遺憾ながら詳述できない」というエクスキューズを各執筆者がそれぞれ一度ならず繰り返されるので、読む進むうちに些か食傷させられるのは否めない。

 

もっとも、これは学識を存分に開陳できない筆者のもどかしさを察して隠忍すべきなのだろう。

 

 

 

 


以上の特色からして、旧版は広く一般読者を志向したものではなく、歴史に深い興味を持つ層や、学徒の卵などを主な対象としているように思う。

 

しかし、世紀末刊行の新版の構成を見るところでは、通史編(20巻)とテーマ編(7巻)が用意されており、より広範な読者に対するアピールの意図が感じられる。

 

これから刊行予定の最新版については、上の岩波書店さんのWebページによると、各巻共通して、まず「展望」によって当該巻の時代・地域全体をカバーする通史を叙述し、次いで「問題群」で特に重要なテーマを広がりをもちつつ論じ、さらに「焦点」として個別に掘り下げるべきトピックなどを取り上げる、ということだ。

 

この紹介を鑑みるに、ざっくり、旧版と新版の折衷、俗な言い方をすれば「いいとこ取り」を狙ったように思うが、さてどんな書籍が誕生するのだろうか。

 


いずれにせよ、このシリーズは、巻数および各巻のページ数だけからしても、「気軽に歴史に親しみましょう」といった性質の本でないことは間違いない。

 

私も引き続き、旧版の第3巻以降を繙いていくつもりだが、それらに含まれる豊富な内容を十分に自己のものとするのが果たしていつになるのか、そもそもそのような時が来るのかどうか、全く予想がつかない。

 

だが、仮にそれらが実現せず、単にそれぞれ読む機会毎、その場一時の愉しみで終わっても、それはそれでいいと思っている。

 


例によって、最後に今日聴いた音楽を。

 

Wynton Kelly「Kelly Great」
01. Wrinkles
02. Mama "G"
03. June Night
04. What Know
05. Sidney

 

20210314-Kelly Great

 

Dizzy Gillespie「Groovin' High」
01. Blue 'n' Boogie
02. Groovin' High
03. Dizzy Atmosphere
04. All the Things You Are
05. Hot House
06. Salt Peanuts
07. Oop Bop Sh'Bam
08. That's Earl, Brother
09. Things to Come
10. One Bass Hit, Pt.2
11. Ray's Idea
12. Our Delight
13. Emanon

 

20210314-Groovin High