パナソニック製パワーアンプ「RAMSA WP-1100A(以下、RAMSAと略記)」の定格出力は、ステレオモードで80W+80W(8Ω)、110W+110W(4Ω)、BTLブリッジモードで220W(8Ω)である。
ビクターのスピーカーSP-E5500(以下、ビクター大と略記)の最大許容入力は60W(瞬間は100W)、インピーダンスは8Ωなので、これらを繋ぐのはまず妥当と言えるが、実はその前に、同じビクターの小型スピーカーSP-UXWD70-H(以下、ビクター小と略記)とRAMSAを接続し、鳴らしてみた。
ビクター小の許容入力は不明だが、これを含むミニコンポのアンプ出力が20W+20Wなので、恐らくそれと同程度だろう。
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この、一見パワーに差のある組み合わせを取ったのは、「アンバランスの妙」とでもいうべき思わぬ効果が見られるかもしれない――との期待と興味があったためである。
もっとも、両者の力関係上、下手をするとスピーカーを飛ばしかねないことから、音量についてはかなり注意を払って音出しを実施したことは言うまでもない。
で、実際にこのペアで再生した音を聴いての感想を言うと、秘かに期待したような棚ボタ的獲物は残念ながらなかった。
ELEGIANTのデジタルアンプで鳴らした時に比べると、音素が耳を刺す如き鋭さは抑えられ、低域もややふくよかになった感はあるが、普段のレベルまで音量を上げると、かなり喧しさの目(耳)立つ音となってしまった。
そこで早々にこの予備的実験は打ち切り、本来の目的であるビクター大の駆動へと移った。
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こちらのインピーダンスは先に書いたように8Ω、ビクター小は4Ωなので、出力は若干抑えられるはずだが、スピーカーとしての能率の相違もあるため、今度もまた音量は絞った状態から徐々に上げていった。
初めの内の印象をざっくり言えば、「存在感の薄い音」である。
しかしながら、ボリュームを回すに従い、漸次音像の存在感が増していき、その変化が実に明確に感じられて面白く、ふと気付くと通常は上げないレベルの音量となってしまっていた。
そこから再び、逆に音量を下げながら聴いた結果、この印象、すなわち「音量の増減が音像の濃度変化を引き起こす」ことを再確認すると同時に、音像の「サイズ」はさほど変わらないことに気付いた。
ビクター小が上手く鳴らなかったのは、本アンプの再生する音像サイズが大きく、小さなボディでは再現に無理があったためらしい。
一方、ビクター大とのコンビでは、まだまだ双方に余力があるのは間違いなく、一体どこまで響いてくれるのか、さらには、RAMSAはどこまで大型のスピーカーを駆動できるのだろう――と、興味は尽きない。
業務用・プロ仕様のパワーアンプについては、オーディオファンの間でも見解が分かれており、「音が粗雑で聴くに堪えない」といった否定的意見が聞かれる一方、「大口径スピーカーを力負けせず鳴らしてくれる」と賛美する肯定派も見られる。
この事実は私も事前に承知しており、期待と不安の混在した気持ちで購入したのだが、実際に聴いてみた個人的感想は、「非常に面白い製品カテゴリー」ということになる。
先ず試聴したのがジャズで、弦楽器の繊細な旋律やそれらの微妙な和音などは未確認だけれど、音が粗いといった印象は全く受けなかった。
また、業務用アンプをリスニングルームで使用する場合に問題となる冷却ファンの音について言えば、機種によってはこれが無視できない例もあるようだが、ことこのRAMSAに関しては、音楽を再生すれば全く気にならない。
無論、静音時、あるいは極めて小さな音の再生されている時には聞き取れるけれど、そもそもこの種の製品はそのようなピアニズムを味わうためのものではない。
ともあれ、上に述べた、音量を上げた時の音像の圧倒的存在感は大きな魅力であり、特に大型スピーカーを擁するシステムにおいてアンプが力負けしているようなケースでは、このカテゴリーの製品を試してみる価値は十分あるように思う。
少なくとも、デフォルトで選択肢から外すのは、価格面を考えてももったいないことだ。
実際、私は今般、販売当時の定価が10万円強の中古品を千円札数枚で入手したが、現行機種は、同程度の定価でよりハイスペックの新品(主にデジタルアンプ)が購入できるし、一層低価格の製品も見られる。
・Panasonic RAMSA
・YAMAHAプロオーディオ パワーアンプ
オーディオショップなどで業務用アンプが否定的に見られる理由の一つに、この価格の安さがあることは、まず間違いあるまい。
以上、本稿では、私の耳にはっきりと感受された音像の変化を中心にRAMSAによる再生音の印象を述べたが、オーケストラなどを聴いて「音場」に関しても何か気付くことがあったら、追ってあらためてご紹介したいと思う。