さて、いよいよ最も気掛かりな機能面の確認だ。
音源のPCおよびスピーカーを接続した上、TA-F555ESXの本体に相応しくかなり太い電源ケーブルをコンセントへ挿し、少々緊張して電源ボタンを押した瞬間、天井の照明が一瞬暗くなった。
これも本機の電源部が如何に強力かを示すものだろう――と感心させられたのはいいが、プロテクトの解除される音が聞こえず、パイロットランプの切り替えも起こらない。
輸送中の衝撃か何かで不具合でも生じたのだろうか――と胸が騒ぎ始めた、それと同時に、カチリと耳に響いて緑色が点灯。
ビクターA-X900をはじめとする手持ちの他のアンプに比べてかなり待たされたわけで、この点にも顕著な差があったのである。
続いて、古い機種にありがちなガリノイズの発生状況を見るべく、ボリュームを徐々に回してみたのだけれど、何の音もしない。
まったく静穏そのものなのだ。
そこでバランス、トーンコントロールなど、各つまみを色々動かしてみたのだが、ウンともスンとも聞こえなかったため、これは出音機能の完全に死んだ外れ籤を引いてしまったらしい――と意気消沈しながら、ともかくPC上で音楽を再生してみた。
すると何と、スピーカーが鳴り始めたではないか。
つまり、出音機能が死んでいたどころか、ノイズが皆無、すなわち接点系の汚れや劣化などがほとんどないようなのだ。
これに安心すると同時に気をよくして、上に挙げたバランス、トーンコントロールをはじめ、ソースダイレクト、ミュートといった機能についての確認を行った結果、いずれも問題なく働いていることが分かった。
しかしながら、念のためスピーカーをもう一つのB系統へ繋ぎ替えたところ、若干の接触不良があるらしく、音の出方が少し不安定だった。
これは恐らく、A系統にスピーカーを接続した状態で長期間使われ、切り替えスイッチの操作もなされなかったために違いない。
実際、何度か切り替え操作を繰り返すうち、次第に出音が安定してきた。
ただ、A系統を使用した場合とは異なり、ごくわずかながら、ジーといった感じのノイズが連続的に聞こえる。
こちらについても、長きに亘り回路に通電のなかったことが原因ではないかと思われる。
もしその通りなら、使用しているうちに改善が期待できるだろうし、そもそも現状、対処を必須とする現象でもないことから、本件については当面様子を見ることにした。
異様な発熱も特に見られないし、内部をざッと眺めたところでも、思いのほか綺麗だし(それにしても、部品の充実度は凄まじいという他ない)。
ついでに、つまみやボタン、スイッチの操作感についても、個人的印象を少し述べておこう。
全般的に、決して悪い感触ではないものの、TA-F555ESXの迫力に満ちた外観からすると、やや重厚さに欠ける感を否めない。
外貌が一回りスマートなVictor A-X900に比べ、操作感の方は一段軽いのである。
もっとも、A-X900のボリュームつまみだけは重過ぎると感じているので、個人的には、TA-F555ESXのボリュームは現状のまま、ほかのつまみやスイッチはもう少し重厚な感触を与えてくれるのが望ましい。
しかしこれはあくまで、単に望ましいという程度のことで、もちろん不満はないのである。
なお、TA-F555ESXから再生されるサウンドだが、一聴しただけで、事前に目にしていた評価を首肯させるに十分なものだった。
ただ、これまでの経験上、アンプに関してもその本領を発揮させるにはそれなりのリハビリテーション(場合によっては再エージング)を要すると理解しているので、詳しいインプレッションは、その間さまざまなソースを聴いた上で、後日改めて書くことにしたい。
ともあれ、以上を総合的に鑑み、上のノイズの一件を含めても、外れ籤などとはとんでもない、それどころか特等――少なくとも一等を引き当てたとは言ってもよかろうと思う。