蓼科高原日記

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SONY TA-F555ESXの仕様と音質

SONYのプリメインアンプTA-F555ESXを中古で入手し、鳴らし始めてから一ヵ月が経過した。

 

もうリハビリも済みほぼ実力を発揮していると考えられるので、例によってその仕様と、音質に対する個人的印象をご紹介したいと思う。

 

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何しろこのTA-F555ESXは、プリメインアンプ界における798戦争の主役にして覇者ともいえるTA-F333ESXの上位モデルとして発売当時から評価が高く、その後も名機として語られ続けている製品ゆえ、仕様に関して多言を弄する必要はないだろうけれど、念のため主な項目を簡単に記載しておく。

 

・発売時(1986年)価格:¥128,000
・実効出力(20Hz~20kHz):180W+180W(4Ω)、120W+120W(8Ω)
・出力帯域幅:10Hz~100kHz(60W出力時、高調波歪率0.04%、8Ω負荷)
・高調波歪率:0.002%以下(10W出力時、8Ω負荷)
・混変調歪率:0.004%以下(定格出力時、8Ω負荷、60Hz:7kHz=4:1)
ダンピングファクター:100(1kHz、8Ω負荷)
・消費電力:315W
・外形寸法:幅470x高さ166x奥行436mm(木製サイドパネル取外し時:幅430mm)
・重量:26.0kg(木製サイドパネル取付け時)

 

これら、およびその他の仕様を眺めると、この当時の同ランクのプリメインアンプとほぼ同等の数値と言えるだろうが、一つ、重量の26.0kgには少なからず瞠目させられる。

 

実際、この重量をもたらす、いわゆる「Gシャーシ(Acoustically Tuned Gibraltar Chassis)」と強力な電源部は、間違いなくTA-F555ESXを特徴付ける主体であろう。

 

 

 

 


当時のカタログによると、このG(ジブラルタル)シャーシは、無振動・無共振という理想を追求した結果の産物であり、大理石の主成分である炭酸カルシウムを不飽和ポリエステルに加え、それをグラスファイバーで強化した素材を一体成形したもので、金属シャーシに比較して優れた振動減衰特性・高強度を具えている上、非金属の非磁性体ゆえに周囲への磁気的な悪影響もないとのこと。

 

そしてこの名称は、スペインのイベリア半島南端ジブラルタルにある、難攻不落の自然の要塞として知られる「ジブラルタルの岩」に因むそうだ。

 


一方の電源部には、パワーアンプを構成するAクラス段とパワー段の整流回路を独立させ、Aクラス段用にA電源、パワー段用にB電源を搭載するS.T.D.(Spontaneous Twin Drive)電源を採用しており、大出力時にもパワー段の干渉を受けることのない、Aクラス段の安定動作を実現している。

 


さて、肝心のその音質だが、これもまずはカタログから本機が如何なるサウンドを目指したかを要約し、以下、これに沿う形でインプレッションを述べてみたい。

 

・音の透明度・解像度の向上(←Gシャーシ)
・広ダイナミックレンジ・躍動感のある重低音の実現(←S.T.D電源)
・音の純度の確保(←シンプル&ダイレクト・トーンコントロール、ソースダイレクト・スイッチ)

 


なお、リスニングは、従来VICTOR A-X900に接続していたDIATONE DS-66EXおよびTANNNOY RevealをTA-F555ESXへ繋ぎ替えた環境で実施した。

 

このことから、VICTOR A-X900との比較もいくつか織り込むことになったが、これはこれでそれなりに意味があるように思う。

 

 

 

 


まず、TA-F555ESXの特徴として最もよく挙げられる上の第2項について言えば、実際、DS-66EXで聴くと、A-X900に比べて一段パワフルかつダイナミックな印象を受けると同時に、低音に関しては、一回り骨太に響く感がある。

 

そもそもDS-66EXは密閉型でタイトな響きを売りとするスピーカーだけに、粗削りとの評価も見かけるTA-F555ESXでは暴れの生じることもあるのではないかと些か懸念していたのだが、これは杞憂に過ぎなかった。

 

これはDS-66EXの包容力の大きさを示すと解釈できなくもないが、Revealでもまったく同じ傾向が見られたことを鑑みるに、やはりアンプ自体の特性に因る部分が大きいようだ。

 


次に音の透明度・解像度について。

 

音の透明度は、従来聴いていたA-X900が非常に重きを置いている特性ということもあるからだろう、TA-F555ESXの方が優れている感じはない。

 

寧ろ、色彩が鮮明化した印象を強く覚えた。

 

Revealを繋いだ際、A-X900ではトーンコントロールで高域を若干上げたくなることが多いのに対し、TA-F555ESXではその必要性を全く感じないのは、このためだと思う。

また、解像度がダイナミズムに潰されるようなことはなく、音の細部までしっかりと表現される点は素晴らしい。

 


残りの一つ、音の純度もまた、A-X900の誇るところだけあって、やはりそれと比較してのTA-F555ESXの優秀性は認めにくい。

 

とはいえ、無論劣っているわけではなく、ソースダイレクトをオンにした際の音のpurenessはA-X900と甲乙つけがたい十分な高みにある。

 

ただ、それが極めて優れていることもあってか、これを切ってトーンコントロールを効かせると、ごくわずかながら濁りの混じるような気がしないでもなかった。

 


その他気付いた点として、DS-66EXからの音楽再生において、音場の奥行きと立体感はそのまま、低音に限らず全体的に躍動感がアップした印象がある一方、中高域の響に若干の不自然さを覚えた(特にクラシック音源において)ことを付記しておこう。

 


以上を総合するに、TA-F555ESXの実力は評判通りであり、名機としての誉れもまったく得心である。

 

それと同時に、数年先立って世に出た、価格が2/3に過ぎないワンランク下位のモデルであるA-X900の力量もまた驚嘆に値することをあらためて認識した。

 

また、以下の記事に書いた、スピーカーをB系統へ繋いだ際の若干の出音不安定が、すっかり解消していたことも付記しておきたい。

 

lifeintateshina.hatenablog.com