蓼科高原日記

音楽・本・映画・釣り竿・オーディオ/デジタル機器、そしてもちろん自然に囲まれた、ささやかな山暮らしの日常

SONY SS-G333ESのエッジ修理(張り替え)―続き

(承前)

 

その失敗とは、二枚目のエッジが一台目に張ったものより若干小さく仕上がっていたことである。

 

張り合わせの際、無論のりしろはほぼ同じだけ取ったつもりなのだが、そうなっていなかったようだ。

 

このため、エッジをコーンに当てると、ロールがコーンの外縁にかかって接着部に全体的な浮きが生じ、一台目のように指圧を繰り返してもまったく着かず、そうこうしているうち接着剤が乾燥してしまい、一旦剥がさざるを得なくなってしまった。

 


ところで、先の記事に書いたように、今回購入したエッジは4枚セットである。

 

保険として予備を持っておくのも悪くはあるまいと考えたことは、正に正解だった――と言いたいところだが、実は、すぐに使用する二枚のダウンサイジングを済ませた時、残り二枚を今後他のスピーカーに張ることはあるまい、それならついでに――と、これらに対してもカット・アンド・ペーストを実行しており、何とも悪いことに、この二枚もやはり、少し小さく仕上げてしまっていたのだ。

 

それでも物は試しと、その一つをコーンへ接着させようとしたものの、やはり駄目。

 

さらに最後の一枚を張ろうとしたら、泣きっ面に蜂、弱り目に祟り目、コーンの裏縁に半周ほど塗ったところで、接着剤が切れてしまった。

 

いまさらやめるわけにも行かず、乾燥後の柔軟性には欠けるものの同じ水性、背に腹は変えられぬ――と木工用ボンドを代用してみたが、奏功せず。

 

感じとして、今回のエッジ(ウレタン)とコーン(High Stiffness Polyolefineなる素材らしい)に対しては、「アルテコ パワーエース 速乾アクリア」の方が強い接着力を示すようだ。

 

 

 

 


このように、失敗を克服する試みはすべて水泡に帰してしまったわけだが、またエッジを購入するのは如何にも悔しく、手元にあるものを何とか再利用したいと考え、ともかく接着剤がついてカサカサになってしまったエッジを元に近い質感へ戻すべく、入念に水洗いした。

 

ところが、これが水性ボンドのいいところだ――などといい気になっていた時、ふと、ウレタンの劣化は主に加水分解によって生じるという事実を思い出して茫然自失。

 

しかしもう後戻りはできないので一通りの洗浄を終え、ともかくしっかりと水分をタオルで吸収し、十分に自然乾燥させた上で、質感に劣化がみられるかどうか確認することにした。

 

それと合わせて、「アルテコ パワーエース 速乾アクリア」の追加購入に走った――

 


さて、水洗いしたエッジのその後、欲目ということもあるにせよ、幸い、弾力性をはじめ質感に大きな変化は感じられず、伸びや縮みもなさそうだったので、ともかく張ってみることにした。

 

と言っても、そのままでは先の二の舞となってしまうのは自明、何とかサイズアップの手を考えねばならない。

 

その一つとして、全体的に引っ張って伸ばすのはどうかと思ったが、それができるような素材ではない感じだし、力の加減を誤って引きちぎってしまう不安もあって却下。

 

やはり素直に、今一度エッジの一ヵ所を切断し、そこに他のエッジから切り取った断片を付加するのが妥当な策だろう、とこれを実施した。

 

接合部の分布の対称性が崩れ、その一つはごく近接してしまうことになるが、そもそもエッジを切り張りすること自体がイレギュラーな処理なので、細かなことは気にしない。

 

今度は実際にコーンに当てながら、適正サイズとなるよう「コニシ ボンド G17」で慎重に接着した。

 

 

 

 


こうしてエッジの再準備が整った後、追加購入してきた「アルテコ パワーエース 速乾アクリア」をコーンの裏縁に塗り、一台目と同様、指圧の要領で少しずつ圧着させることを何周か繰り返したところ、無事接着させることに成功した。

 

ここで遅れ馳せながら、接着に苦労したのは、室温のかなり低い状況で作業を行ったことも大きく影響しているだろうことに気付いた。

 


ともあれ、大きな山は越えたわけで、あとは概ね、二台並行して順調に作業を進めることができた。

 

一通りの乾燥を待った後、エッジとコーンの境界に接着剤を盛り、特にエッジ同士の接合部には、空隙が残らないよう入念に注入。

 

ノズル付きチューブはこの用途に大きく役立ってくれた。

 

20220330-SONY SS-G333ESエッジ張り替え済ウーファー

 

上の画像でムラが目立つように見えるのは接着剤が生乾きのためで、乾燥後透明化すると数段見栄えは上がった。

 


再び乾燥のため少し時間を置き、最後はフレーム側への接着である。

 

この際にはボイスコイルと磁石が擦れないようにする、いわゆる「センター出し」が云々されるが、今般入手したものに関しては自然な状態で擦れは出ていなかったことから、そのまま接着に及んだ。

 

逆に、変なテンションをかけないよう留意した。

 


ゴム製のフリンジについては、元々はこれも接着処理されていたのだが、速乾アクリアではゴムに対する接着力は覚束ないし、木ねじで留めるだけでも十分だろうと考え、今回は飛ばすことにした。

 

何か問題があればやり直せばよい。

 


最後に、極性を間違えないよう注意してリード線を繋ぎ、エンクロージャーへマウントおよび木ねじで固定して作業は完了である。

 

20220330-SONY SS-G333ESエッジ張り替え済全体

 

ただ、「アルテコ パワーエース 速乾アクリア」は最大の接着強度に至るのに20℃の気温下で24時間を要するとのことゆえ、アンプと結線しての音出しは、当方の室温を考慮して丸一日と少し待ってから実施することにした。

 

ボリュームを絞った状態で音楽を再生し、期待と不安を胸に抱きながら徐々に音量を上げていくと、しっかりとしたサウンドが眼前に姿を現した。

 

先にエッジのない状態で少し聴いた時のような、干渉によりスカスカになった低音ではなく、しっかりと中身の詰まった、密度の高さを具えている。

 

若干、そこに硬さというか、ぎこちなさがあるように感じないでもないが、これはエージングにより改善・解消されるに違いない。

 

音質の印象は、例によりそれを俟ってご紹介したいと思う。