蓼科高原日記|ささやかな山暮らし

音楽・本・映画・釣り竿・デジタル機器、そしてもちろん自然に囲まれた山暮らしの日常

真空管プリアンプ AIYIMA TUBE-A3 PRO

長い間、PC、iPod touch、AndroidスマートフォンへレコードおよびCDを取り込み、bluetoothでオーディオシステムへ音を飛ばす形で音楽を聴いてきた。

 

これで特に不満はなかったのだが、ふと、「真空管アンプで再生したら、どういう音になるのだろう、」という興味が湧き、そうなるとじっとしていられない性格なので、早速少し調べてみた。

 

といっても、システムを一から組み直すつもりは、時間的にも金銭的にも、そもそも気持ち的にもないので、真空管アンプにターゲットを絞ってのこと。

 

 

次に、現在のデジタル環境では、そもそも再生システムが調音機能を具備しているわけだから、プリアンプではなく、試すなら増幅機能を持ったパワーアンプがいいだろう――と考えた。

 

しかしながら、真空管パワーアンプを物色してみると、なかなか容易に手の出せるものがないのである。

 

中古でもいいのだが――とオークションサイトなどを見てみても、何分マニアの多数棲息する世界(笑)ゆえ、需要が豊富でそれなりの値がついてしまうようだ。

 

そこで方針を転換し、調音を担うプリアンプに目を向けると、こちらには気軽に試せる製品の多数あることがわかったので、増幅機能は既存オーディオにそのまま担ってもらうこととして、ではどれがいいかと比較検討した末、「AIYIMA TUBE-A3 PRO 」なる製品に決定し、Amazonnにて注文。

 

何と読むのか定かでないものの、その綴りからご想像頂ける通り中華製品である。

 

それが今日届いたので、製品に対する感想を書いてみたい。

 真空管プリアンプ


まず、全般的な印象として、しっかりと化粧箱に入っており、価格以上の満足を覚えた。

 

製品本体については、文字通り手のひらに乗るサイズで、外寸データから想像してはいたが、かなり小さい。

 

真空管を下から照らすブルーライトについては好悪の分かれるところかもしれないが、真空管自体の赤い発光はごく弱く、これだけではやや見栄えが悪いように思われる。

 

そして、ブルーライトは意外にも、この赤い弱光を追いやるどころか、却って引き立てるようにも見えるので、個人的には良しとしたい。

 

 

 

 


さて、いよいよ接続、そして音出しである。

 

購入製品は、ラインとbluetooth、二通りのインタフェースが可能だが、まずは現状との比較を明確に行うため、前者でPCとの接続を試みた。

 

ところが、デバイスの検出、ペアリングと進んだところ、PCがダウン。

 

リブートすると起動モード選択画面が出てしまったものの、とりあえず通常起動で何とか立ち上がった。

 

しかし、デバイスとしては見えているのに、再生装置として認識されておらず、音を出せない。

 

そもそもこのWindows 7マシンは元々bluetoothを装備しておらず、USBアダプタ(通称ドングル)を差してI/Fをとっていたのだけれど、こいつがなかなか曲者で、従来のシステムを鳴らすにもかなり手こずった経緯がある。

 

今回は真空管の音を聴くのが第一の目的なので、PCとの接続は一先ず措き、iPod touchへと切り替えた。

 

するとこちらは何の問題もなくすんなりと接続が確立された。

 

原因はやはりドングルにあることが判明し、一安心(?)。

 


ところが、期待に胸を膨らませて音楽を再生してみると、低音高音に乏しい、至極貧弱な音が流れ出たではないか。

 

本来の能力を発揮するにはやはりエージング(ある程度の時間、鳴らしこむこと)が必要なのかもしれない――などと、自分を慰めつつ、ともかくしばらくは――と聴いているうち、はッと気付いた。

 

この真空管アンプには、treble(高音)・bass(低音)、2バンドのトーンコントロール機能が付いているのだが、初期状態としてそのいずれもがマイナス方向へ絞られていたのである。

 

そこで両者をニュートラルの位置へ戻したところ、十分納得できる音となった。

 


最後に、まったく感覚的なものになるが、従来のシステムによる再生音との比較を述べておく。

 

それは、一言で表現すれば、「音の粒が大きくなった・音の輪郭が鮮明になった」というのが最も適切だと思う。

 

これに起因して、音の輝きが、従来のガラス質の煌めきから、落ち着いた金属の光沢へと変化した感がある。

 

また、解像度が落ちた反面、音の滑らかさが向上、さらに、音空間の広がりが抑えられた一方、その堅固さが増したように感じる。

 

これらの相違によるのだろうか、従来私の耳は、まず個々の音に注意が向き、それらの集合体としての音楽を聴いていた感が強いのに対し、真空管アンプを入れての再生では、初めに音楽を全体として捉え、次いでその構成要素を意識する方向へ傾いたように思う。

「繊細華麗な音、それが発散する豊穣に酔う」ことから、「質実な音空間、それを織りなす端正流麗な要素を味わう」ことへと、音楽体験が変容したとでも言えばよいだろうか。

 

 

 

 


さて、ここまでの記述からご理解頂ける通り、真空管アンプを加えたことで、音質の劇的な向上が得られたわけではない。

 

それにより生じたのはあくまで「音味」とでも言うべきものの変化、しかも、あらゆるリスナーにとって望ましいとも限らず、人それぞれ、好き嫌いの分かれる類の変化に過ぎない。

 

しかしながら、デバイスを一つ加えるだけで、このような決して小さくない違いが明確に出るというのは、実に面白い。

 

これでまた少し、趣味の世界が広がっ(てしまっ)た。

 


なお、試聴に力を貸してくれたのは次の二名盤である。

 

Art Pepper「Meets The Rhythm Section」

01. You'd Be So Nice To Come Home To
02. Red Pepper Blues
03. Imagination
04. Waltz Me Blues
05. Straight Life
06. Jazz Me Blues
07. Tin Tin Deo
08. Star Eyes
09. Birks Works

 

Meets The Rhythm Section


Miles Davis「Steamin'」

01. Surrey With The Fringe On Top
02. Salt Peanuts
03. Something I Dreamed Last Night
04. Diane
05. Well, You Needn't
06. When I Fall In Love

 

Steamin' With The Miles Davis Quintet