蓼科高原日記

音楽・本・映画・釣り竿・オーディオ/デジタル機器、そしてもちろん自然に囲まれた、ささやかな山暮らしの日常

球転がし(真空管聴き比べ)

新年早々、真空管プリアンプ「AIYIMA TUBE-A3 PRO」を購入したことについて、以下の記事を書いた。

 

lifeintateshina.hatenablog.com

 

とは言っても、本格派オーディオならぬ、中華製のいわゆるプア・オーディオなのだが、これがなかなか面白く、その後もずっと本器を挟んだ形で音楽を聴いている。

 

ところで、真空管には(も)寿命があるので、今後も末永く使えるよう、予備の球(真空管)を手元に置いておきたくなり、今般これも購入することにした。

 

駄目になったら買えばいい――というのは至極当然な考えだけれど、何分レガシー・アイテムなので、いつ市場から消えてなくなるかわからないため、ある内に入手しておこうというわけである。

 


この真空管アンプの製品仕様を見ると、搭載されている球は、中国・北京製の6J1なるもので、幸い今のところ、Amazonを初めとしてネット上に多数出回っている。

 

しかし、6J1と互換性のある真空管もいくつか挙げられており、どうせなら違う球を買って聴き比べてみたいという気持ちが湧いてきた。

 

この聴き比べを、オーディオマニアは、俗に「球転がし」というらしい。

 

で、互換真空管も含めて調べた結果、こんなものを見つけた。

 

amzn.to

 

そこの説明によると、6J1はロシアVOSKHOD製6J1P(西欧表記)の劣化コピーで、6J1Pは米国GE製5654Wのコピーとのこと。

 

つまり、6J1Pと5654Wは6J1の上位製品とも言え、互換性もあることから、これに白羽の矢を立てた。

 

それが届いて、早速聴き比べてみたので、簡単なインプレッションをご紹介しようと思う。

 

下の画像において、左から順に中国、ロシア、米国管である。

 

真空管

 


アンプへの装着に先立ち、脚に若干曲がりが見られたため、手元にあったラジオペンチで整形。

 

さらに念のため、先に購入した接点復活スプレーでクリーニングした後、アンプ本体へ装着した。

 

そしていよいよ音出しである。

 

なお、改めて言うまでもないこととは思うが、以下の記述は、ある環境下に設置した特定の音響機器を使用した上での、私の個人的見解である点は、ご理解頂きたい。

 

 

 

 


はじめに、ロシアVOSKHOD製6J1Pについて。

 

アンプに装着して電源を入れると、フィラメントの輝度に明らかな差がある。

 

これは不良品か?と不安を覚えたが、音楽を再生したところ無事音が出て一安心。

 

さて、オーディオを語る際、どうしても――と言うべきか、どうしてか――と問うべきか、ともかく低音と高音が話題となりがちな気がするが、この球で再生された音楽を聴くと、自然と中音域に意識が向く。

 

決して中音が相対的に前に出るのではなく、その艶が増したような印象に、耳が「おや?」といった反応を示す感じだ。

 

そしてこれに起因するのだろうが、高音が伸びやかに聞こえ、全体的に透明感が向上して、従来見えなかった音に気付くこともしばしばである。

 

しっとりとした優美な音色は、クラシックの音源を聴く愉しみを一段増してくれる。

 

反面、低音域は若干抑えられる感があるので、適宜イコライザーで補正した方がいいようだ。

 


次に、米国GE製5654WGE管だが、こちらは、音のふくらみが一まわり豊かになったというのがその第一印象である。

 

無論、これは水膨れのような弛んだふくらみ方ではない。

 

音の躍動感がアップすることで、引き締まったボリュームの増大がもたらされ、同時に音の輪郭が太く鮮明化する感じもある。

 

また、フロント楽器が一歩前に出て、より立体的な音像が結ばれる点も見逃せない。

 

ロシア管とは趣を異にする、若干硬質な音色は、ジャズの再生にその本領を発揮する。

 


いずれにせよ、一つ千円もしないものの交換でこれだけ音色の変化が生じるのは、実に興味深い。

 

もし、数万円、物によっては数十万円もする真空管を搭載するアンプでそれらを比較したら、どのような差が見られるのだろうか。

 

いつか機会があったら、是非体験してみたいものだ(遺憾ながら、当分ありそうもないけれど……)。

 

 

 

 

 

試聴にかけたのは、


Bill Evans「Interplay」

01. You And The Night And The Music
02. When You Wish Upon A Star
03. I'll Never Smile Again(take 7)
04. Interplay
05. You Go To My Head
06. Wrap Your Troubles In Dreams
07. I'll Never Smile Again(take 6)

 

Interplay

 

Mozart「弦楽四重奏曲第14番(ハイドン・セット第1番) ト長調 K.387」
Quartetto Italiano

第1楽章 Allegro Vivace Assai
第2楽章 Menuetto
第3楽章 Adagio
第4楽章 Allegro Assai