蓼科高原日記

音楽・本・映画・釣り竿・オーディオ/デジタル機器、そしてもちろん自然に囲まれた、ささやかな山暮らしの日常

Victor A-X900の不具合修理(メンテナンス)

前記事に書いたように、今般中古品として入手したVictor製プリメインアンプ「A-X900」には、不具合が一つ表に現れている。

 

左出力が不安定で、小音量時には音が出ず、ボリュームを上げていけば聞こえ始めるものの、その過程でガリノイズが発生し、さらに出力音についても、明らかに信号の間引かれた密度の小さなものになってしまっているのである。

 

lifeintateshina.hatenablog.com

 


その対処をしたいとの気持ちは山々だが、元より私には電子・電気工学の知識も技術も経験もなく、工具・計器類もほとんど持ち合わせていないため、悲しいかな、できるのは修理というほど大袈裟なものではなく、ちょっとしたメンテナンスに限られてしまう。

 

でもまあ、何もしないよりは増し――と、先ずは原因を探るべく、ごくごく単純な確認から開始した。

 

 

初めに、このアンプに具わっている二系統のスピーカー端子の、別の方へケーブルを繋ぎ替えてみたが、状況に変化はなかった。

 

また、音を出しながらボリュームつまみを左右に回してみると、ガリノイズの出るのはやはり左チャンネルのみである。

 

無論、これだけでは原因の特定はなされないものの、少なくとも、これらの周りが悪さをしているのでないらしいことだけはわかった。

 

 

 

 


次いで、該当する症状についてネットで調べた結果、幸い、同様な事例に関する情報が多数見つかり、どうやら、「リレー(装置)の接触不良」である可能性が高そうである。

 

このリレーなるものの役割は、回路や配線にショートなどの異常が生じている際に電流が流れて破損・事故の起こることのないよう、まずはリレーを切った状態で異常有無のチェックを実施し、問題なしと判断された後、リレーを繋いでアンプ本来の機能を発揮させることだという。

 

プリメインアンプやパワーアンプの電源を入れると、数秒おいて「カチッ」と聞こえるのが、このリレーの繋がった音である。

 


リレーの原理はシンプルで、少し離して向かい合わせた二枚の極板を、場合に応じて電磁石で引き付けることで電流を制御する。

 

そして、この極板の接触面が劣化したり、間に異物が挟まることで接触不良が生じ、今回のような不具合がよく起こるらしいのである。

 

したがって、この場合の対処は、接触不良を引き起こしているものの除去、あるいはより根本的に、リレーそのものの交換をすればよいことになる。

 

とは言え、このリレーがどのような外観を具え、アンプ内のどの辺に置かれているのかも分からなかったので、これらを把握できる画像も掲載されている記事を探し、次のページを参照させて頂くことにした。

 

elmo1963.blog.ss-blog.jp

 


A-X900の上蓋を開けて見回すと、なるほど、マッチ箱ほどの大きさの、黒いプラスティック製カバーを被った物があり、これがリレーらしい。

 

20210716-リレー装置(1)

 

しかし、A-X900は二系統のスピーカー端子は具えているものの、上の記事のアンプとは異なり、リレーは両系統共用の一つのみだ。

 


次はいよいよ原因の除去だが、初めに白状した通り、私には上の記事と同じ対処を行うことはできないので、一番簡便な、リレー極板のクリーニングを実施することにした。

 

そのためにはリレーのプラスティック・カバーを外す必要があるのだけれど、ツメで留められている感じですんなりとは外れない。

 

無理に力を加えて破壊してしまっては元も子もないので、おっかなびっくり、縦方向や横方向に軽く押し潰すようにしながら上へ引き上げたり、少し捻ったりしているうち、何とか外すことができた(どれが当たりだったのかは忘れてしまった……)。

 

すると確かに、二枚向かい合った極板が二組、すなわち左右両チャンネル用の極板が現れた。

 

20210716-リレー装置(2)

 


ここまで来れば、あとは極板の接触面をクリーニングするだけである。

 

これについては、接点復活剤をスプレーしてしまうのが気分的に一番すっきりするのだが、仮にプラスティック類を侵さないものにしろ、極板以外の部分にかかるのもどうかと考え、頭を潰した綿棒(これも上記記事を踏襲)に接点復活剤を含ませ、これで極板の間を入念に、また全体も一通り拭いた。

 

その綿棒に目立った汚れの付着するようなことはなかったので、念のため今一度同じことを繰り返し、少し時間をおいた後、乾いた綿棒で今一度余分な剤を拭き取った。

 


そして、期待と不安を胸に抱きながら音出しによる確認を行ったところ、一瞬、シャリと小さな音が聞こえたものの、従前よりは明らかに小さくなっており、ボリュームを軽く左右に二三度回すと完全に消えた。

 

さらに音についても、先ほどまでのすかすかした感じはなく、密度の高い、しっかりした質に変わっていた。

 


終わってみればどうということもない作業だが、上の記事、および併せて参照させて頂いた情報がなかったとしたら、恐らく対応の手間暇は膨大なものになったはずで、それらを公開して下さった方々に改めて感謝したい。

 


前記事の最後に述べた「B級オーディオの愉しみ」は、今回のように問題が上手く解決すれば、真実、心の底からそれを感じる。

 


このA-X900については、あと一回、サウンド・インプレッションを書く予定だ。

 

 

 

プリメインアンプ Victor A-X900

またしてもオーディオ機器を購入してしまった。

 

当記事のタイトルに示した、Victor製プリメインアンプ「A-X900」がそれである。

 

そもそものきっかけは、何ということもない、もっともらしいことを滔々と述ているものの、詰まるところは単なるオーディオメーカーの幇間、その宣伝冊子との顰蹙を買って捨て値で売られていた古某誌をつらつらと眺めている(読んではいない)うち、ピュア――とまではいかずとも、ある程度名の知られた製品の音がどのようなものか、自分の耳で聴いてみたくなったのである。

 

先立つものの乏しさは相変わらず故、無論、ターゲットは中古品だ。

 


実は、当初白羽の矢を立てたのは、Technics製パワーアンプ、SE-A1000シリーズだった。

 

しかしながら、先にPanasonic製RAMSA購入の記事でも書いたように、パワー(レベル)メーターを具えた製品は、この部分が主な故障個所となるにもかかわらず、やはり見た目の派手さのためか人気が高いようで、SE-A1000シリーズもそれなりに値が上がってなかなか手が出なかった。

 

lifeintateshina.hatenablog.com

 

もっとも、3万円ほどの出費を覚悟すれば何ら問題はないのだけれど、そもそも今回は(も)必要に迫られての買い物ではないため、できれば1万円程度に抑えたく、さすがにこの予算では状態の思わしいものの入手は難しく、また、考えてみればパワーアンプは既に3台が目の前に並んでいる一方、プリメインアンプは1台も手元にないこともあり、こちらのカテゴリーで別の製品を探すことに方針を転換。

 

しかし、そこで興味を惹かれたのも初めはA-X900ではなく、SANSUIのAU-α607だった。

 


この製品は、SONYのTA-F333ESXとともに、従来10万円超クラスの機種に採用されていた技術を盛り込んだ意欲的なプリメインアンプを各社が一斉に79,800円の価格で売り出した、所謂「798戦争」の嚆矢となったものである。

 

時に1986年、世がバブル経済に浮かれていた頃のことで、相当な売れ行きを示したらしく、それらが現在、中古市場に大量に出回っているため、選択肢が格段に多くなるのはいいが、私の予算内に入ってくるものとなるとやはり容易には出ない。

 

そんな時、ふと目にしたのが、「Victor A-X900」だった。

 

価格はやはり79,800円ながら、発売時期は少し早く、1983年らしい。

 

因みに、紛らわしいことに、同じVictorには、後に発売されたAX-900というモデルがあり、こちらは38万円の高価格機である。

 

 

 

 


さて、798戦争で覇を競った各社の機種については、いずれも華やかなスローガンを掲げて一世を風靡したものの、今の目から見ると、徒に目新しさばかりを前面に出した、個性の乏しい製品が多く、団栗の背比べの印象が否めない――との意見もよく聞かれる。

 

それに対しA-X900は、価格とともに外観的にも上記戦士たちを髣髴させるものの、まだ変な競争心の表面化しない時の製品だけに、心做しか地に足の付いた、落ち着いた風情を具えているように感じられた。

 

丁度そんな時、折よく、想定予算内の一品が現われたため、早速手に入れた次第である。

 

目立った傷もなく、40年近く前の品にしてはこれ以上望めないほど綺麗な一方、価格が価格だっただけに、一点、「片チャンネルの出力が不安定」という顕在的不具合のあることが注記されていた。

 


商品が届いてすぐ、それがどの程度のものかを確認すべく、音源及びスピーカーと接続して音出しして見たところ、実際、小音量では左からの音が出ず、ボリュームを上げると出力されるものの、その際にガリノイズ――というほど鋭くはなく、ジャリといった感じ――も聴かれ、また明らかに信号が間引かれて何ともすかすかな音になってしまっている。

 

20210714-Victor-A-X900

 

 

そんなわけで、新品の機器なら次はサウンド・インプレッション――となるところだが、今回購入したA-X900に関しては、まずこの不具合対応を追ってご紹介することになるだろう。

 

これもまた、B級オーディオならではの愉しみといえる。

 

いや、決して強がりや負け惜しみではない。

 

本当に……