蓼科高原日記

音楽・本・映画・釣り竿・オーディオ/デジタル機器、そしてもちろん自然に囲まれた、ささやかな山暮らしの日常

銀河帝国の崩壊(Against the Fall of Night) アーサー・C・クラーク(著)

「銀河帝国の崩壊(Against the Fall of Night)」は、ロバート・A・ハインライン、アイザック・アシモフと共にSF界のビッグ・スリーとして数多の著作をものしたイギリスの作家アーサー・C・クラークの初期の作品である。少年時代から天体観測を趣味とし、また…

死ぬまでに観たい映画1001本[改訂新版] スティーブン・ジェイ・シュナイダー(編)

数年間隔で、映画を観たいという気持ちが心に湧く。比較的時間が自由になる暮らしをしていることもあって、そうなると映画を集中的に見る期間がしばらく続くことになるが、今般またその状況に陥ることとなった。その契機は、ネット上でふと目にした「死ぬま…

大いなる眠り(The Big Sleep) レイモンド・チャンドラー(著)

「大いなる眠り(The Big Sleep)」は、改めて述べるまでもなく、ダシール・ハメットとともにハード・ボイルド派を代表するアメリカの小説家レイモンド・チャンドラー(Raymond Thornton Chandler)の手になる、長編の処女作である。刊行されたのは1939年…

Special Relativity and Classical Field Theory(特殊相対論と場の古典論) Leonard Susskind(レオナルド・サスキンド)、他著

「Special Relativity and Classical Field Theory(特殊相対論と場の古典論)」は、スタンフォード大学教授レオナルド・サスキンドが同大学で行った社会人向け講座(The Theoretical Minimum)から誕生した三冊目の書籍である。古典力学および量子力学を主題と…

FMレコパル 1978年10月23日増刊号[小学館]

私がオーディオに興味を覚えたのは、中学2年の終わり頃だった。きっかけは、よくある通り、これの好きな友人に影響さたことである。ちょうどオーディオが華やかな様相を呈していた時期で、さまざまなメーカーが積極的に製品をリリースしており、またこのジャ…

中性子星 ラリイ・ニーヴン(著)

アメリカのSF作家ラリイ・ニーヴン(Larry Niven)の中短編集「中性子星(Neutron Star)」には、次の8編が収録されている。・中性子星・帝国の遺物・銀河の<核>へ・ソフト・ウェポン・フラットランダー・狂気の倫理・恵まれざる者・グレンデルこれらの内はじ…

集英社 中国の詩人―その詩と生涯 第4巻 庾信(ゆしん)―望郷詩人

集英社版「中国の詩人―その詩と生涯」 第四巻は、「庾信(ゆしん)」に当てられ、サブタイトルとして「望郷詩人」が冠されている。庾信は南北朝時代の天監12(西暦513)年、この時代にしては珍しく比較的安定した梁に生まれ、15歳で早くも後に文選を編む昭明太子…

おろしや国酔夢譚 井上靖(著)

西暦1783年1月(天明2年12月)、伊勢白子(現在の三重県鈴鹿市)の船頭、大黒屋光太夫は、紀州藩の囲米を江戸へ運ぶべく十六名の乗組員とともに神昌丸で白子の浦から出航したが、駿河沖で暴風に遭い航路を外れ、舵を折られたため操船できないまま約八ヵ月間の漂…

世界山岳全集7(朋文堂)―K2登頂、ブロード・ピーク八〇四七メートル

1950年、フランス隊のアンナプルナ登頂により人類が初めて8000m峰の頂きに立ったのに続き、その三年後にはイギリス隊が世界最高峰たるエベレストへの登頂を果たしたことで、地球上でもっとも高いこの領域への門戸が大きく開かれたことはご存じの通りである。…

現代中国文学 第一巻 魯迅

五年ほど前、色々な文学全集を渉猟した時期に入手しながら長らく書棚に並べたまま開く機会のなかった、河出書房新社版「現代中国文学」を今般漸く繙いた。先ず手にしたのはもちろんその第一巻、魯迅の作品を集めたものである。叢書のタイトルからしても、こ…

アメリカ鉄道3万マイル テリー・ピンデル(著)

「アメリカ鉄道3万マイル(原題:Making Tracks)」のプロローグには次の言葉が記されている。旅に出た当初は、自分でも何を探しているのかわかっていなかった ただ…(中略)…鉄道の路線をたどることで私の中の過去と現代が、歴史の項目と新聞の見出しが、精神と…

東洋史通論 (創元社)

先に取り上げた「日本史通論」「西洋史通論」に続き、創元社は「東洋史通論」を出版した。各タイトルから、これらをもって全世界通史を世に送ろうとの意図を顕示したかったのだろうことがわかる。ここで「意図があったのだろう」ではなく、上のように捻くれ…

Introductory Real Analysis(A.N.Kolmogorov, S.V.Fomin著)

旧ソ連の碩学コルモゴロフ(A.N.Kolmogorov)の名を知ったのは、数学科の学生時代に確率論を受講し、その実学的有用性と重要性は十分に承知しながら、数学的地盤の軟弱さに対するフラストレーションに苛まれてこれを解消したいと思っていた時に教示された、公…

東欧SF傑作集(上) カリンティ、他(著) 深見弾、他(訳)

「東欧SF傑作集(上)」が創元SF文庫の一冊として出されたのは1980年、当方の書棚に並んでいる書籍の中では比較的新しい出版だが、収録作はそれよりかなり前に書かれたもの、「上」と銘打たれていることが示す通り、下巻も同年、恐らく同時に刊行されている。…

内田百閒全集 第一巻 冥途・旅順入城式・百鬼園随筆、他

内田百閒の作品を初めて読んだのは、大学生の時、岩波文庫版の「冥途・旅順入城式」だった。その、簡潔かつ淡麗な文章で綴られた、幻想・怪異そして諧謔の混在した世界に魅了され、すぐ続けて同じ岩波文庫の「東京日記 他六篇」を買い求めたが、上記はこの作…

オリエント急行殺人事件 アガサ・クリスティ(著)

これもよくアガサ・クリスティの代表作の一つと言われる「オリエント急行殺人事件」を読んだ、はっきりした記憶はない。しかしながら、映画化された作品を観たことはあり、その斬新とも奇抜とも言えるストーリーははっきりと記憶に刻みつけられていた。それ…

筑摩世界文学大系25 シャトーブリアン・ヴィニー・ユゴー

筑摩世界文学大系の第25巻は、フランス・ロマン派に当てられ、これを代表する三巨匠、シャトーブリアン、ヴィニーそしてユゴーの次の作品が収録されている。・アタラ、ルネ(シャトーブリアン)・軍隊の屈従と偉大(ヴィニー)・九三年(ユゴー) 殊更言うまでもな…

日本史通論 武藤誠(編)

「日本史通論」は、以前当ブログでご紹介した「西洋史通論」と同じく、大学教養課程の歴史講座における用途を企図して創元社から出されたテキストで、ご想像される通りさらに一冊「東洋史通論」もあり、これも当方の書棚に並んでいる。創元社「日本史通論」…

ヘディン探検紀行全集7 トランスヒマラヤ(上)

1905年10月、当時まだ地理的に空白だった、ヒマラヤ山脈の北、チベット高原中央部から南部にかけての地帯を踏破して禁断の聖都ラサへ足を踏み入れるという壮大な意図を胸に、ヘディンは第三回中央アジア探検へと向かった。その出発点となるインドまでは、普…

ポストマン デイヴィッド・ブリン(著)

近未来、核兵器と生物兵器の使用された世界大戦により、アメリカ合衆国という統一国家は瓦解し、人々は各地に孤立的なコミュニティを形成してサバイバリストという無法者の集団に対峙していた。そんな荒廃した世界に生き、旅をしながら折に触れてそれらコミ…

ビアス怪談集 アンブローズ・ビアス(著)

アンブローズ・ビアスという名に接して、「悪魔の辞典」「アウル・クリーク橋の一事件」といったタイトルを直ちに想起する人士は少なくないだろう。かく言う私自身、いずれも岩波文庫版の「悪魔の辞典」および、「アウル・クリーク…」を含む「ビアス短編集」…

黒死荘殺人事件(黒死荘の殺人) ジョン・ディクスン・カー[カーター・ディクスン](著)

「黒死荘殺人事件(黒死荘の殺人)」は、アメリカの推理小説作家ジョン・ディクスン・カーの手になる作品で、現在我が国ではこれが著者名として冠されることが通例だが、本来はカーター・ディクスン名義で発表された第二作である。そして、このペンネームは…

世界ノンフィクション全集13 フランス革命、ペトログラード1917年、中国の赤い星

世界ノンフィクション全集第13巻は、同前12巻に続いて人間社会における歴史的大変革を主題とした次の三つの文章を収録している(()内は著者)。フランス革命(ルイ・マドラン) ペトログラード1917年(N.N.スハノフ) 中国の赤い星(エドガー・スノウ) しかし、前巻…

日本の民話 (企画編集:未来社、総発売元:ほるぷ出版)

未来社が企画編集し、ほるぷ出版から発売された「日本の民話」は、昭和32(1957)年の第一巻「信濃の民話」にその源を求めることができるようだ。そしてこの流れから、いくつもの民話がとり上げられ、かつて「まんが日本昔ばなし」としてテレビ放送されたそう…

年刊SF傑作選1 ジュディス・メリル(編)

東京創元社の「年刊SF傑作選」は、アメリカで生まれ、後にカナダへ移住してそこで生涯を閉じたジュディス・メリルの編んだアンソロジーで、日本語版は第7巻まで出されている―ということは知識として頭にあったのだが、今般その第1巻の本文を読み終え、解説に…

筑摩世界文学大系64 古代文学集

筑摩世界文学大系の第64巻は、古代文学集である。時代は古代として、地域はどこに焦点が当てられているかというと、ギリシア・ローマだ。もっとも、こう言ってまず想起されるであろうホメロスは第1巻に収録されており、続く第2巻はギリシア・ローマ古典劇集…

白水社 西域探検紀行全集6 内陸アジア縦断 ボンヴァロ(著)

19世紀中葉から本格的に開始された西域―すなわち、古代の中国人にとっての自国西方タリム盆地の国々、現代においては中央アジアとその周辺を含むさらに広い地域―の探検に関する、さまざまな探検家=著者の紀行を集めた「西域探検紀行全集(白水社)」の第6巻に…

Yの悲劇 エラリー・クイーン[バーナビー・ロス](著)

改めてご紹介するまでもないかもしれないが、アメリカのミステリー作家エラリー・クイーンは、実際はフレデリック・ダネイとマンフレッド・ベニントン・リーという従兄弟同士の二人が、自分たちの共作による推理小説用に採用したペンネームで、同時に作品中…

小松左京短編集 大森望セレクション

小松左京と言えば、改めて説明することもなく、星新一、筒井康隆とともに日本SF界の御三家と称される巨星である。同時にまた、「霧が晴れた時」という自選恐怖小説集のあることなどからも窺われる通り、単にSFに限らず広い範囲に亙る文筆作品、さらにはラジ…

「雨の木」を聴く女たち 大江健三郎(著)

『「雨の木」を聴く女たち』(大江健三郎、著)は、1980(昭和55)年から1982(昭和57)年にかけて、文學界および新潮に発表された次の五作からなる連作短編集である。・頭のいい「雨の木」・「雨の木」を聴く女たち・「雨の木」の首吊り男・さかさまに立つ「雨の…