蓼科高原日記

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ダイヤトーンDS-251の仕様と音質

ウーファーのコーン及びエッジに補修を施したダイヤトーン製スピーカーDS-251も、鳴らし始めて三週間ほど経ち、音もほぼこなれたようなので、この辺りでその仕様と音質の印象を記しておこうと思う。

 


先ずはその他の主な仕様を挙げると、

 

方式:3ウェイ・3スピーカーアコースティックエアーサスペンション(密閉)方式
ユニット:低域25cmコーン型+高域5cmコーン型+超高域3cmコーン型
再生周波数帯域:40Hz~25kHz
インピーダンス:8Ω
クロスオーバー周波数:2kHz、10kHz
外寸:幅315x高さ525x奥行215mm
重量:10kg

 

というのが公称値である。

 

20230410-ダイヤトーンDS-251の仕様と音質

 

 

方式の3ウェイについては、次項のユニットに明記されているように、スーパーツイーターを搭載した実質的には(2+1)ウェイとも言える構成であり、同機が世に出たのが今から丸半世紀以上前の1970年ということからして、当時はまだツイーターの長高域特性が弱く、これを補おうとの意図によるものだろう。

 

実際、この頃のモデルには同様な構成を採っているものが少なからず見られる。

 

そう言えば、コーン型のツイーター・スーパーツイーターからの音を聴くのも初めてだ。

 


その高音だが、以下の記事に既述した通り、周波数を指定しての音波再生を行ったところ、14.5kHzまでは出力されるものの、15kHz以上は再生されない結果となった。

 

微かに抱いていた、エージングにより改善するかとの期待も儚く散り、今般再度確認を行っても状況は同じだった。

 


もう一つ、このスピーカーの大きな謳い文句は、すべてのユニットにアルニコ磁石を採用していることで、その真偽は定かでないながら、これは当時人気絶頂だったJBLのスピーカーを意識したためだという話も、どこかで目にした記憶がある。

 

 

 

 


では、音質の印象に移ろう。

 

ただ、改めて断るまでもないだろうが、以下は当方の再生環境下において同スピーカーを鳴らした場合の、しかも個人的な感想であることをご理解頂きたい。

 

因みに、ドライブするアンプはテクニクスのSU-8055である。

 


はじめに、再生される音楽の包括的特質を端的に表現すれば、ヴィンテージ色の強い外観に起因するプラセボ効果もあってか、「時に磨かれた艶やかさ」を最も顕著に感じる。

 

決してべたべたと柔らかいものではなく、適度な硬さを具えた、ニスや漆を纏った木材の醸す類の艶である。

 

近年の傾向とも言うべき、音の細部まで描出しようとの意向は感じられず、血の通った有機的な音の集合として音楽を再現しようという姿勢が、上の特質として自ずと現出しているようだ。

 

もっともこれには、SU-8055の資質も多分に与っているように思う。

 

ソースや聴き手の好みによっては古臭さが鼻につくかもしれないが、個人的に、アコースティック楽器によるクラシックやジャズは正に絶品。

 

所謂Hi-Fi(High Fidelity=高忠実度再生)も円熟期に至って発表されたモデルらしく、ぎこちなさや堅苦しさの一掃されている点も特記したい。

 


続いて各帯域について述べると、ウーファーに対する補修の影響は幸い実聴上皆無で、左右チャンネルからは全く同質な、豊かであると同時に深みのある低音が再生された。

 

これは、ダイヤトーンお家芸である、計算されつくしたアコースティックエアーサスペンション(密閉)方式のエンクロージャーとともに、25cmという大型ユニットをアルニコ磁石で駆動していることも大きく与っているに違いない。

 


もう一つの危惧であった高域については、確かに近年のスピーカーを鳴らした後に聴くと


若干頭の閊えた感じを覚えないでもないが、それはほんの束の間のことで、すぐにごく自然に音楽に対峙できるようになる。

 

寧ろ、このDS-251に続いて近年のモデルで聴くと、シャラシャラとした不要な装飾が目に見える――耳に聞こえる、ではない――ような気がして何となく落ち着かない。

 

これすなわち、音楽表現に必要な帯域は、現状でも十分に再生できているということだろう。

 

なお、同機には高域調整機能として2kHzから25kHzまでの帯域を3段階に切り替えられるレベルコントロールが装備されているが、これを操作しても音色の変化は極めて微妙で、これは発売当時からそのような評判だったらしい。

 


残った中域については、ダイヤトーンお得意の領域だけに、見事な実在感をもって描かれる艶やかな音像が、これを聴く者に迫真の臨場感を抱かせてくれる。

 


このような満足を与えてくれる機器の購入費用が、アンプとスピーカーを合わせてわずか七千円ほどだったことを考えると、コストパフォーマンスは極めて高いというほかない。

 

これまでは1980年代をオーディオが最高の光輝を放った時と考えていたが、DS-251とSU-8055によりこの認識が揺るぎ始めてしまった。