パイオニア製スピーカーS-101のウーファーエッジを交換して鳴らし始めてから一月余りが経過した。
その作業において、ガスケットとフレームの接着にも水性接着剤を使用したことに加え、同スピーカーは他の多くのモデルのようにユニットを前面バッフルにねじ留めする形ではないことから、両者間に十分な接着力が得られないのではないかと少々懸念していたが、幸い緩みなどは生じておらず、再生音にも何ら問題はないようなので、この辺りでS-101の仕様と音質について書いておこうと思う。
S-101が世に出たのは1987年、発売時の定価は一台25,000円だった。
このスピーカーの大きな特徴としては、上にも述べたようにウーファーを前面バッフルではなく内部に設けられたバッフルにマウントしていることで、これにより前面バッフルの不要振動を抑えている点が挙げられる。
同機ではウーファーだけにこのマウント方式が採られているが、翌年に発表された姉妹機S-101customにおいては、ツイーターも同じミッドシップマウントとなっているようだ。
主な数値的仕様は次の通りである。
方式:2ウェイ・2スピーカー・バスレフ方式・
ユニット:低域18cmコーン型+高域2.5cmドーム型
インピーダンス:6Ω
再生周波数帯域:45Hz~40000Hz
出力音圧レベル:90dB/W/m
クロスオーバー周波数:2500Hz
外寸:幅215x高さ363x奥行224mm
重量:7.7kg
特別瞠目させられる値はないものの、時代の趨勢か高域が伸びていること、および外寸の割に大きな重量を具えている点に目が止まるかもしれない。
さて、このS-101を、少し前のアンプであるトリオKA-5300に接続して鳴らして強く感じたのは、先ず音の鮮明さである。
喩えれば雨上がりにさッと陽が射した時の景色のように、楽器の姿、それらの奏でる一音一音がくっきりと目の前に現前し、なるほどこれがミッドシップマウントの効用か――との想いが自ずと頭に浮かぶ。
実際、これは主に低域の再生音から来ており、ウーファー径が18cmということを考慮しても低域は抑え気味で、大きなマッスをもって聴き手に迫るのではなく、あくまで確固とした実体として再現している印象だ。
これは当然、豊穣な量感とは相反する性質であり、聴き手の好みや音源によってはすっきりし過ぎて物足りなさを喚起するかもしれないが、全身の体感よりあくまで聴覚、もしくは視覚で捉えたい音楽には絶大な力を発揮するに違いない。
以下の記事でご紹介した通り、KA-5300がエネルギッシュで大らかな音を奏でるタイプのアンプであることを考慮すれば、上の諸印象はやはりS-101に与るところが大きいと言うべきだろう。
lifeintateshina.hatenablog.com
ただ、S-101が小音量でもぼやけることなく音像を描き出していること、およびそこからアンプの出力を上げていくにつれ、安定感はそのまま、次第に肉付きも増して来る事実から推すと、同スピーカーの真価はもっと高い所にあるような気もする。
ここには7.7kgという自重が少なからず利いているようだ。
現代へ通ずる潮流への分岐点――ふと頭にそんな考えの浮かぶスピーカーである。