蓼科高原日記

音楽・本・映画・釣り竿・オーディオ/デジタル機器、そしてもちろん自然に囲まれた、ささやかな山暮らしの日常

鳥羽まで行き戻り、伊勢神宮を参拝して津へ

三日目、7:50発きのくに線新宮行列車に乗るべく、七時に宿を出て紀伊田辺駅へ向かった。

 

事前に見たYahoo!乗換案内では紀伊田辺駅始発となっていたのだが、到着した列車内には何故か少なからぬ乗客の姿がある。

 

20240928-(1)きのくに線新宮行列車

 

一瞬、座席確保のための折り返し乗車かという考えが頭に浮かんだが、そもそも列車はこれから向かう新宮を指して入って来たのだからこれは当たらないとすぐ思い直し、少々疑問を抱きながらともあれ乗り込んで進行方向に向かって左側に座を占めた。

 

この列車も全席ロングシートだったので、正面に太平洋が見えるようにしておき、必要に応じてより良い眺めの得られる場所へ移動しようと考えてのことである。

 


一時間ほど経った見老津駅辺りから海が目に入ってくるようになり、和深駅では景勝地として名高い枯木灘を眼下に見ることができたが、停車時間が短いため車内からだったのは些か残念だ。

 

さらにニ十分強、串本駅を過ぎたところでは、海上に数多の岩の連なる橋杭岩の奇観を望んだ。

 

いずれも目に焼き付けるのが精一杯で写真に残すことはできずなかったので、これらもいつか、改めてゆっくり訪れたいと思う。

 


新宮駅では次の列車への乗り継ぎにニ十分と少しあり、昼食を調達しようと改札を出たところ、すぐ前に地元の味を口にできそうな徐福寿司が目に入ったが、生憎定休日らしく閉まっていた。

 

そこで他にはないかと検索し、駅の線路を挟んで反対側の彩菜なる店で鯖味噌に弁当を調達して新宮駅へ戻り、既に入線していた多気行列車に乗り込んだ。

 

これもまたロングシート車両で、混雑してきたら食事を摂るのは憚られる気がしたことから、そうならない内にと発車してすぐ、正午にはまだ間があったが弁当を開いた。

 

鯖が新宮の味と言えるかどうかは措くとしても、質量とも値段以上の感があり、十分に満足できた。

 

 

 

 


折に触れて車窓に現れる熊野灘を眺めつつ鉄路を辿って、午後二時過ぎに多気駅に到着。

 

ここで二十五分待った後、亀山からの参宮線鳥羽行列車の乗客となった。

 

その目当ては伊勢神宮参拝、しかし外宮と内宮両方を訪ねることは時間的に少々難しく、遺憾ながら内宮へのお参りは他日を期すことにしたため逆に余裕が生まれ、それならこの機会に参宮線を完乗しておこうと、伊勢市駅を遣り過ごして終点鳥羽まで行った。

 

20240928-(2)鳥羽駅

 

十分後、同じ列車で折り返して伊勢市駅で下車し、駅前に建つ鳥居を潜って参道を辿り、伊勢神宮外宮へ向かった。

 


歩くこと五分強、火除橋を渡って神域へ。

 

手水舎で身を清めてから、正宮の豊受大神宮をはじめ、風宮・多賀宮・土宮の各別宮を参拝するとともに、式年遷宮の行われる古殿地や神楽殿なども拝観して踝を返し、まがたま池に臨む休憩所で奉納舞台や向こう岸に佇む白鷺を眺めながら一息入れた後、俗界へ戻った。

 

20240928-(3)伊勢神宮外宮

 


大通りを渡ると赤福の外宮前店が目に入り、折角だからと足を止めてショーケースを覗くと、間髪を入れずに「赤福はすべて売り切れ」との御託宣。

 

そのまま出ようかとも思ったものの、ふと目に留まった餡入りわらび餅が美味そうだったので購入した。

 

二個で五百円という値は、あとで口が感じた味と秤にかけ、旅先でのちょっとした贅沢と考えればまあいいだろう。

 


伊勢市駅から快速みえ22号でこの日の宿泊地である津へ着いたのは午後五時半過ぎ。

 

旅のプランを練っている時、津は鰻で有名で名店が多いということを知り、ここでも一つささやかな贅沢をしてみようと、予め目星をつけておいた駅前の大観亭津駅西口店の暖簾を潜った。

 

そして鰻が三切れ載っているという中丼を注文。

 

「三切れ」というのがどの程度の分量なのか分からなかったが、間もなく出された丼の蓋を開けると、合わせて蒲焼き一枚弱ほどの身が載っていた。

 

ごはんは300gというので十分だと思い、盛りを増やすことはしなかったが、いざ食してみるとあっさり腹に収まってしまい少々物足りなさを覚えた。

 

どうも美味さに引かれて箸が進んだらしい。

 

再訪する機会があったら、その節には迷わずごはん450gの「中盛」にしたい。

 

夕食にはまだ早いながら当方の後にも来客が続いてほぼ満席となり、それとともに売り切れの掲示を出すようにと指示する声が厨房から聞こえた。

 


その夜の宿「ビジネス旅館 若草」までは徒歩ニ十分ほど、宵闇の下りた街を歩いたためだろう、実際より遠く感じた。

 

ビジネス旅館と屋号に冠している通り、部屋は質素ながら清潔な和室で快適に過ごせたが、予め用意されていた敷布団一枚では寝ると若干身体が痛く、押し入れからもう一枚拝借して重ねた。

 

大浴場とは言えないながら和風の宿らしく湯舟に浸かれたのもありがたかったけれど、前日のサイクリングで蒙った腿の日焼けが酷く沁みた。