去る七月に青春18きっぷ二枚で四国と中国を周遊したが、その際使用したのは七日分で三日分が残っていた。
これを消化すべくまた新たな旅の計画を練り始め、今般は先の四国同様今まで訪れたことのなかった紀伊半島を一周することにした。
当方の場合、名古屋を起点に一周することになるが、その名古屋まで単に往復するだけだと七月の旅で辿った中央本線の経路を再び――となって少々マンネリの気がしないでもなく、また乗車距離もやや短くなり青春18きっぷの利点を十分に活かすことができないため、片道は確かまだ乗ったことのない飯田線の列車を利用するというオプションを加味。
日程は二泊三日で完結可能ながら、これではただひたすら列車で鉄路を辿るだけとなって些か味気ないので、観光の一日を間に入れて彩を添えることにし、先ずは宿泊地の選定を、飯田線を旅の始めに入れるか、それとも復路に組み込むかの検討と合わせて行った。
例によって特に何を見たい、どこを訪れたいといった希望はない旅ゆえ、列車の乗車時間と到着時刻を元に範囲を適当に絞り、その中から安価な宿のある地はどこか――と調べて選んだのは、紀伊田辺と津である。
紀伊半島には日本三古泉の一つとして知られ、美しい海水浴場も擁する白浜があるけれども、当然ながら宿泊料金の相場は周辺地域に抜きんでており、自ずと候補から外れた。
それに対して、そこから10kmほど離れた紀伊田辺には、ここが熊野古道への入り口の一つであることもあってだろう、外国人旅行者を目当てにしたゲストハウスが散見され、非常にリーズナブルな料金で泊まれる宿のあることを知り、ここに二泊することにした。
そして移動のない一日を利用して白浜を訪れようという算段である。
この観光に関しては、はじめバスに乗っての熊野古道を考えたのだが、長距離を往復するのは少々頂けず、かといって片道を新宮へ抜けるとするとここで一泊するか紀伊田辺へ戻って泊まった上、翌日同じ経路を辿ることとなるため見合わせた。
熊野古道へはいつか車で訪れたいと思う。
津の方も亀山と比較し、より安い宿が見つかったことからここに決め、飯田線の列車には復路に乗ることにした。
こうして骨格の定まった旅に、九月の上旬に出かけた。
八月上旬に宮崎での大きな地震があったこともあり、念のため各宿泊地および観光地のハザードマップを入手して持参。
加えて今般は直前に台風が到来し、果たして決行できるか些か気を揉んだが、幸いいずれの懸念も杞憂に終わり、無事帰還することができた。
その顛末を以後何回かに亙りご紹介しようと思う。