先に書いた通り、DENON(デノン)製プリメインアンプPMA-7.5に見られる出音不良は、症状をこれまでの経験に照らすとその原因はリレーの接触不良と思われることから、これに対処することにした。
手っ取り早いのはリレーの交換だろうが、少し調べたところ同じ製品は固より、代替品も入手は容易でなさそうだったため、先ずはクリーニングを試みることに。
そのリレーへアクセスするために側板、そして天板を外すと、内部にはぎっしりと部品が詰まっている。
幅が250mmと小さいとは言え、奥行きは335mmあることを考えれば、1980年代のいわゆる物量投入モデルにも決して引けを取らない印象、特に目を惹くのは筐体中央にどっしりと鎮座した巨大なトロイダルトランスだ。
もっとも、同機購入の決心はこの点に大きく動かされてのものだったので、事前に知ってはいたのだけれど、実際に目にすると改めて感心させられ、外面の安っぽさによる落胆の気持ちがかなり改善し、修理(というほど大袈裟なものではないが)の意欲も自ずと掻き立てられた。
さて、リレーはどこか――と見ても表には出ていない。
しかし位置的にここだろうと踏んだ通り、画像上部の基盤をめくるとその下に据わっていた。
クリーニングなら、固定されたままでもカバーさえ外せれば――と色々弄ってみたもののびくともしないので、やはり素直に分離することにし、本体をひっくり返して底板を外し、リレーの足を基板に留めているハンダを除去した結果、無事第一段階をクリア。
ただ、いつものことながら、この状態にしてもカバーを外すのは容易でなく、カッターで止めツメを削った上、マイナスドライバーでかなり強引に抉て漸く内部構造を露わにすることができた。
一見、接点は特に汚れてはいないようだったが、綿棒の頭を潰して接点復活剤を噴射し、これで入念に磨いたところ、やはりそれなりの汚れはあったことが判明。
これを二三回繰り返して綿棒に汚れが付かなくなった後、余分な剤を残さないよう、今一度真っ新な綿棒で拭き取ってクリーニングは完了、あとはカバーの装着、基板へのハンダ付けと逆の手順を辿って組み上げた。
こうして再び、期待とそれなりの自信を胸に出音の確認を実施した。
電源を入れるとパイロットランプが緑に点り、少し間をおいて赤へ。
ところが、これを待って音楽を再生したにもかかわらず、スピーカーからは何も聞こえてこない。
しかも両方とも、さらにボリュームつまみを回してもうんともすんともいわないのである。
これは一体?と暫し呆然としている内、ふと、パイロットランプの挙動が気になった。
手持ちのSONY(ソニー)TA-F555ESXもそうだが、一般には赤から緑へ変わるのが人間の感覚にも沿うと思われるのに、このPMA-7.5はその逆である。
もしかしたら誤った改造などがなされて回路がおかしくなっているのではないか――といった疑念が頭に浮かんだものの、思い返してみるとこれははじめからのことで、不完全ながら音も出た事実から払拭した。
もう一つ気付いたのは、以前は確か、プロテクトが解除される際に「カチリ」とはっきり聞こえたのに、この音が消えてしまったという点である。
これらを鑑みるに、今般の作業に落ち度――具体的にはどこかの断線――を来たした可能性が高そうで、カバーを抉じ開ける際、確かにかなりの荒技をかけてしまったことに思い至った。
そこで再度リレーを取り出し、カバーを外してみたところ、カバーと本体の境界付近にも極めて細いコイル線が這っており、ちょっとした当たりで簡単に切れてしまいそうである。
明確な断線は確認できなかったものの、本体奥へ引っ込んだところの線の状態が気になったので、物は試しとハンダをほんの少しそこへ流し込んでみた。
さて、改めて組み直して今度は不安一杯での確認だ。
電源スイッチを押し込むと、やはり緑のパイロットランプが点り、そして……カチリと聞こえると同時に赤へと変わった。
続いて音源装置も作動させた上、ボリュームを回していくと、左右いずれのスピーカーからも音が流れ出した。
さらに音量を上げ下げしてみても、特に両者間に差は感じられず、つまみの操作につれて滑らかに変化しており、音質も問題なさそうである。
一点、若干のガリの感じられるのは気掛かりではあるが、これを追いかけるとすれば他の接点のクリーニングとなり、コンパクトな筐体にぎっしりと部品のつまった姿を見ると、分解にしろ水洗いにせよ、躊躇を禁じ得ない。
何より、これは使っている内に自然と消えるような気がするので、当面は様子を見ることにしようと思う。