蓼科高原日記

音楽・本・映画・釣り竿・オーディオ/デジタル機器、そしてもちろん自然に囲まれた、ささやかな山暮らしの日常

四国の印象、木次線の無念

旅の四日目は、四国を離れて本州へ戻り、西日本を縦断――というほど大袈裟なことではないが――して山陽から山陰の出雲市へ出る。

 

前日に続いて観光といえるようなことはなく、移動が主となる一日だ。

 


先ずはJR高徳線高松行に乗るべく、朝6時前に宿をチェックアウトして徳島駅へ向かったのだが、前夜特に複雑な経路を辿った記憶はなかったのに方向を見誤り、どちらへ進めばよいかわからなくなってしまった。

 

朝早い時間帯で道を尋ねようにも通行人もほとんどおらず、さてどうしたものかと辺りを見回すと、少し先に工事に伴う交通整理をしている人の姿が目に入ったので、そこまで行って徳島駅の方向を聞いたところ、考えていたのとは大きく異なっていた。

 

夜間には方向感覚が狂いがちになるらしい。

 

 

 

 


目当ての列車には無事間に合い、6時半過ぎに発車。

 

9時過ぎに終点高松駅に到着し、同駅始発瀬戸大橋線快速マリンライナー18号岡山行の発車ホームへ行くと、既に通勤通学の時間帯は過ぎていたので前々日に比べると列車を待つ人の数はやや少なかったが、それでも列車入線時にはそれなりの待ち行列ができた。

 

その先頭、しかも改札口からかなり離れた乗車口で待機したのに降車客は少なくなく、それが途切れて乗り込んだものの遅れをとったらしく、次々に埋まる席をいくつも遣り過ごした末、何とか進行方向左の窓側という、予て考えていた一つに腰を据えることができた。

 

そして望み通り、来る時とは逆の、西の瀬戸内海を眺めて岡山へ戻った。

 


その瀬戸内海に浮かぶ島々もそれに類すると言えるだろうが、四国で最も印象的だったものの一つが山の多さである。

 

当方の居住地は長野県、殊更山に驚くのは奇異に思われるかもしれないが、四国では実際、どこでもどちらかに山が見えた上、その山というのがまた一つ一つ、独立峰として厳然と聳える――のではなく、それぞれぽこんぽこんと軽やかに座しており、その景観には、何とも言えない独特の趣を覚えた。

 

20240826-(1)瀬戸内海

 


岡山駅で桃太郎線の愛称で呼ばれる吉備線総社行列車に乗車し、備中高松駅に近い最上稲荷の大鳥居などを眺めつつ終点まで。

 

この路線も短いながら沿線に見所の多いことは承知しているのだけれど、それらは追っての愉しみにとっておくことにして、今回は見合わせである。

 


総社駅では次の乗車まで一時間ほどあったので、昼食を摂ろうと町へ出てみたものの、ふらりと立ち寄った旅行者にはこれといった飲食店は見当たらず、一つ目に入ったキッチン太郎という弁当屋でチーズハンバーグ弁当を購入し、駅へ戻ってホームのベンチに座って昼食とした。

 


正午前、入構して来た伯備線新見行に乗車し、次いで新見駅始発の芸備線備後落合行に乗り継いで終点まで。

 

岡山を起点として山陰へ出るなら伯備線を利用するのが常道で、新見から米子へ直通する列車もあったのだけれど、わざわざ備後落合で下車したのはほかでもない、木次線を辿ってみたかったからである。

 

20240826-(2)木次線

 

しかしながら、伯備線芸備線と乗り継ぐに従い、何となく車内の空気が暗く重く澱んで来たような気がし始め、嫌な予感がは漸次増大。

 

そして備後落合始発、木次線宍道行の単行列車に足を踏み入れた瞬間、その予感が杞憂でなかったことを痛感する羽目となった。

 

人相風体所持品態度などから一目でそれと類推される、世に悪名を轟かすマニアで車内は一杯だったのだ。

 


現在、木次線を走る普通列車ロングシート車両ということは知っており、旅情を味わうという点では些か物足りないかもしれない――と覚悟していたが、あのどんよりとした車内の雰囲気に包まれては、そんな微妙な情など云々するまでもなく、この路線で最大の見所であろう奥出雲おろちループを遠望できる地点などでは意識的に気持ちを高める努力とともに車窓を注視したものの、その甲斐もなく今一つ期待外れの感を禁じ得なかった――

 

と、ただ発散される雰囲気にあてられただけなら、こんなことは書かなかった。

 

それを敢えてしたのは、眉を顰めざるを得ない行動を一度ならず目撃した上、翌日には山陰本線において、思い出すだに不愉快な実害を蒙ったからである……

 

個人的に残念だったし、木次線も無念に違いあるまい。

 

 

閑話休題

 

途中、同路線は暑さによる線路の歪みのため一部区間の運行を見合わしているが、この列車は終点宍道まで行く予定、ただし状況によっては遅延や運行見合わせの生じる可能性もある――との車内アナウンスがあったが、幸い少し遅れただけで宍道駅へ到着した。

 


この日の宿泊地は出雲市、しかしそこへ向かう前に一旦宍道から逆方向の列車で松江へ行き、名にし負う宍道湖の夕日を見ようと思っていた。

 

地理に疎い悲しさで、当初は宍道駅近辺に適当なポイントを探せるのではないかと意気込んだのだけれど、地図を確認してすぐ、宍道湖の西南端に位置する宍道駅の近くからは湖へ沈む夕日の観賞は無理と知ったのである。

 

ただ、もちろんこれは松江へ行けば必ず目にできるものでもなく、空模様という前提条件が満たされねばならない。

 

ネット上に掲示されている、その状況を示す夕日指数なるものは、前日まで「はっきりと見られそう」だったのに、この日一転して「見るのは難しそう」に変わってしまった。

 

これと、松江まで行くと出雲市に着くのがかなり遅くなってしまうことを併せ鑑み、夕日は諦めることにし、真っ直ぐ出雲市へ向かうべく下りの山陰本線に乗車した。

 


この日の宿は駅から徒歩5分ほどの所に位置する「出雲ゲストハウス いとあん」。

 

ここもドミトリーと個室、それぞれの料金にさほど差がなかったのでシングルルームを予約しておいた。

 

かなり古い建物ながらトイレはrenovateされており機能的で清潔。

 

ただ、浴室は湯舟があるのに故障中とのことで入れず、しかも電灯が切れかかっており10秒に1度フラッシュのように一瞬点灯する状態だったので、外にわずかに残る明るさを頼りに辛うじてシャワーを浴びた。

 

洗濯機も同様、設置はされているのに故障中とのことで、ゲストハウスとしての広義のホスピタリティは今一つだった。

 

改善されているといいのだが。