時刻表をはじめ、旅や旅行に関連した書籍を渉猟してそれらが次々と手元へ届いて来る内、以前購入してその後どこかへ仕舞い込んだ本もあったはず――と物置を引っ掻き回した結果、十冊以上を見出すことができた。
その中に交じっていたのが、二冊の「地球の歩き方」、「ロンドン」および「パリ」で、忘れもしない、初めて海外へ出るに際して購入したものである。
書名からも分かる通り、その時の旅行先はこれら二つの都市、往復の航空便と宿泊ホテルがセットされている以外は自由行動という所謂フリーツアーだった。
そのため、観光の計画は自分で立てる必要があり、そのために利用してなかなか役に立ってくれたことを懐かしく想い出した。
実際、今般改めて内容を眺めて見ても、必訪の名所から穴場に至る多様な観光情報はもちろん、各種交通手段や注意事項、またこの時は特に必要なかったものの、宿泊案内も充実している上、歴史や文化・慣習といったことまで記載されているので、旅行のガイドブックとしてだけでなく読み物としても十分耐え得る印象である。
そこで、都市よりも広範な、国以上のエリアを取り扱った「地球の歩き方」を試しに何冊か買ってみることにした。
ただ、内容が充実しているだけに致し方ないのだろうが、一冊二千円ほどと値もそれなりに張るのである。
もっとも、実際の旅行に使うわけではなく、情報の新鮮さはあまり重要ではないため、いつものように古書市場に目を向けたところ、こちらでは千紫万紅の価格が踊っており、元値の十分の一ほどで投げ売りされている個体があるかと思うと、プレミア価格を誇る絶版ものもちらほらと見受けられる。
当然、後者には目を向けることなく、興味のある国、かつ安価なものを選んでの購入である。
こうして先ず十冊ほど、世界の一部に偏らないよう、東西ヨーロッパ、南北アメリカ、アジア、オセアニアそしてアフリカと、できるだけ満遍なくピックアップしたのだけれど、これが仇となってしまった。
というのは他でもない、こうして全世界に網を掛けた状態を見ると、その目をできるだけ細かくしたいとの気持ちが沸々と湧き出し、またしても次から次へと食指を動かされる羽目となったのだ。
今の時代、インターネットを利用すれば新鮮な様々情報を入手することができるわけで、わざわざ書籍として購入する必要もないのかもしれないが、当方のネット環境は従量制ゆえ、綿密な調査をするとそれなりに通信料がかかってしまうことを考えれば、対価を払って本を手元に置いておくのも悪くないと言えよう。
そう自己弁護しながらぽつぽつと注文している内、ふと気が付くと既に少なからぬ冊数となってしまった……