蓼科高原日記

音楽・本・映画・釣り竿・オーディオ/デジタル機器、そしてもちろん自然に囲まれた、ささやかな山暮らしの日常

時刻表古今東西

長岡市への小旅行が呼び水となり、長らく心の奥底に潜んでいた旅心が頭を擡げてきたこと、およびその疼きを鎮めるために旅行関係の書籍および映像作品を少なからず購入した(してしまった)ことは以下の記事にご紹介(というか白状)したが、その獲物の中に鉄道の時刻表がある。

 

lifeintateshina.hatenablog.com

 

もっとも、時刻表を利用する実際の旅行を現在計画しているわけではなく、単に鉄道の路線や所要時間を眺めようというのが目的だったので、はじめは昔使ったものがどこかに残っているはず――とあちこち探してみたのだけれど、見つからなかった。

 

ただ、旅行ガイドの類は発掘されたことから、時刻表は実用性の喪失を考慮してどうやら捨ててしまったらしい。

 


その後、買い物の序にふと立ち寄ったブックオフの店舗に何冊か数年前のものが並んでいるのを目にして、2021年発行の一冊を購入したのだが、帰宅して先ず巻頭の路線図を眺めたところ、記憶の底に残っているそれと比べ、遥かにすっきりしていること、特に北海道について特に顕著なことに驚いた。

 

これほどまでに廃線が進んでいたのかと改めて認識して、悲嘆に近い気持ちに苛まれたのである。

 

無論これは、地位も名声も財力もない一市民がどうこうできる問題ではないのだが、路線のびっしり詰まった、かつての窮屈ささえ感じる図版が無性に懐かしくなり、またしてもそんな古書の物色が始まってしまった。

 

 

 

 


そうして気付いたのは、定期刊行物として出された往時の時刻表は結構な高値で取引されている一方、我が国には少なからず存在するといわれる時刻表マニアを主なターゲットとしたのだろうか、時刻表復刻版なるものがいくつも出版されており、こちらは新品も常識的価格で入手可能という事実である。

 

そこでこれに狙いを絞り、さらに何時の時代のものがよいかと見ていったところ、東海道新幹線開業直後の1964年10月号の復刻版に出くわし、この頃なら路線も充実しているはずと考えてAmazonで注文した。

 


が、届いたパッケージを開梱してみると、現れた品物がひどく小さいのである。

 

20230322-時刻表復刻版1964年10月号

 

復刻版と銘打っているので、てっきり本来とまったく同じ内容・大きさの冊子を想像していたのだが、踏襲しているのは内容だけで、サイズは縮小されているようだ。

 

しかし、個人的にはこれはさして問題ではなく、実際、これでもかと言わんばかりの懐かしい路線図が掲載されているのを目にして留飲を下げたのである。

 

(付記:その後、当該復刻版の大きさは所謂現在の「小さな時刻表」に相当し、当時はこれが標準サイズだったことを知った。)

 

 

――と、本来の動機からすればこれで一件落着のはずだが、凡人の気持ちとは本当に困った代物で、復刻版物色の過程でこちらも目にした、1925年4月号、記念すべき時刻表創刊号が気になって堪らず、その内容を調べると、当時日本領だった朝鮮・台湾・南樺太、さらに実質的支配下にあった満州の各鉄道の情報まで掲載されていることを知り、どうしても欲しくなって追加購入。

 

それでもこれでどうやら――と思ったのも束の間、今度はかつてヨーロッパを鉄道で旅行した際に世話になったトーマスクックの時刻表を想い出してこれに対する食指が動き出し、さらに西の外国のものだけでは片手落ちのような気がして東の鉄道大国、中国のものは入手できないだろうか――という泥沼へ嵌まり込んでしまった。

 

しかし心底から欲すると道は通じるのだろうか、古書店やオークションを眺めている内、決して高額ではない手頃な品に邂逅し、双方とも手にすることができた。

 


これらがあれば、昔体験した旅行の追想、および時代や地域を超越した旅の空想も自由自在で、ここに紀行文学・映像作品を加えれば、実際の旅行へ出ずとも十二分に愉しめそうだ。

 

――などと独り悦に入る者を時刻表マニアと呼ぶのだろうか……