蓼科高原日記

音楽・本・映画・釣り竿・オーディオ/デジタル機器、そしてもちろん自然に囲まれた、ささやかな山暮らしの日常

時刻表いろいろ―交通案内社版

私が初めて時刻表を買ったのは、大学二年の夏、学友たちと本州西部一周旅行を企てた際のことだった。

 

もっとも、その旅行の音頭取りは他の奴で、私はどちらかと言えばお客さん的位置付けではあったけれども、大まかな経路くらいは把握しておこうと考えたように記憶している。

 

このような目的だったので、出版社などには何の拘りもなく、選んだのは当然小型の安い時刻表だった。

 


その一冊はJTB版だったと長らく思ってきたのだが、先に入手して記事にした三種、「全国小型時刻表」「携帯時刻表」「小さな時刻表」を眺めたところ、いずれとも異なるものだったような気がする。

 

では上の記憶が誤りで、実際はJR版だったかと「小型全国時刻表」「全国版 コンパス時刻表」「携帯全国時刻表」を並べても、やはりどれにも合致しないように思われた。

 


そこで、JTB版とJR版以外に全国の鉄道を網羅する時刻表はある(もしくは「あった」)のだろうかと調べた結果、交通案内社なるところからも「日本時刻表」「ポケット全国時刻表」の二つが出されていたことを知った。

 

そう、やはり両者ともかつて発行されていたもので、既に廃刊となっているのだが、この内の「ポケット全国時刻表」が、その姿形や特徴からして、私の初めて手にした時刻表に間違いないと確信した。

 

 

 

 


第一の拠り所となったのは、画像に写っていた黄色の背表紙だ。

 

これにより視覚的記憶が刺激された結果、書名に片仮名が含まれていたことも思い出し、加えて同書の特徴の一つである文庫本サイズという大きさと形状が裏打ちとなったのである。

 


こうなると当然、当時のさまざまな出来事や体験が自ずと思い出されると同時に「ポケット全国時刻表」に対する懐旧の情が湧き出し、これを実際に使用した頃のものをまた手元に置きたくなった。

 


しかしながら、私自身すっかり記憶の底へ沈ませていたという事実からも窺われる通り、交通案内社の時刻表はJTB版・JR版という圧倒的二大勢力の陰になりがちで、従って当時の販売部数、延いては現在の中古市場における流通量も少ないのではなかろうか――

 

そんな風に思いながらオークションなどで検索してみたところ、この類推は概ね正しいものの、望みの品との邂逅が絶望的というほどではなさそうなこともわかったので、気長に待つつもりで眺め始めた。

 

すると、今般も不思議と速やかに目当ての一品に出会い、さらに個人的な思い入れはないながらもコレクションを豊かにはしてくれるであろう「日本時刻表」の方も、ほぼ同時に手にすることができた。

 

20230605-時刻表いろいろ―交通案内社版

 


これらについて目に付くのは、上に述べたように「ポケット全国時刻表」が極小な文庫本サイズである点と、「日本時刻表」はその一種奇抜ともいえる書名と、こちらもJTB版, JR版とは一線を画すサイズを採用しているところだろう。

 

また、二大勢力との差別化は単に外観だけに留まらず、内容も独自の編集方針に基づいて盛り込まれており、一般的知名度は高くないにせよ、交通案内社版時刻表には熱烈な支持者も少なくなかったらしい。

 


私が旅行した際の「ポケット全国時刻表」の使い方は漫然と眺める程度のものだったので断言はできないものの、情報の不足や路線を辿る際の不便さなどは確かにまったく感じなかったように思う。

 

この点については今後じっくりと見ていくつもりである。