固形燃料とダイソーのポケットストーブおよびメスティンで炊飯したり、イワタニ製カセットガスジュニアバーナーを使ったりしているうち、もう一つくらい、アウトドアや非常時に用をなす調理器具があってもいいのではないかという考えが頭に浮かんだ。
というのも、先にも書いた通り、上の固形燃料やカセットガスにはいずれも弱点があり、共に使えない状況はごく稀とは思うものの、できればその穴を埋めておきたいとの気持ちが生じたからである。
以上の動機から、選択対象は当然、ハイテクとは正反対の器具となるわけで、結局、木炭コンロ(七輪)に落着した。
私もこの手の品に深く馴染んだ年台ではなく、コンロと七輪の区別などもよく知らなかったのだが、色々な情報を総合したところでは、概ね素材の相違に基づく分類、すなわち、金属製のものをコンロと呼ぶのに対し、珪藻土で作られているものを七輪と呼ぶらしい。
もっともこれも、現在すでに七輪という呼び名が一般的でなくなっており、この品名を付して購入を敬遠されるのではないかとの懸念からだろう、コンロという名称へシフトしているようだ。
これらのうち、さてどれがよいだろうかと、まずは比較的身近なバーベキュー用コンロに焦点を当てたものの、これは何人か集まっての明るく楽しいアウトドア活動には申し分なさそうだが、非常時にこれを使うとなると、気分的にどうもしっくりきそうもない。
そこで次に、これまでほとんど接したことはないのだけれど、もっとしんみりした風情を具えた珪藻土製のものに目を向けたが、練炭コンロはその名称が示す通り燃料が練炭のみで、しかもコンロ・燃料とも、そのドカンとした姿形が好みに合わない。
一方の木炭七輪は、燃料には基本的に木炭が想定されているものの、豆炭も使えるということで、しかもいずれも使い勝手が良さそう、そして七輪自体の外観にも味わいを感じたため、これに決めた。
なお、画像からお分かりのように、今般私の入手した品も「木炭コンロ」と銘されている。
珪藻土を粘土状にし、金型でプレス成型した「練り物」と呼ばれるものらしく、そこに持ち手、吸気口の扉および補強材として金属を当てただけの極めてシンプルな構造だ。
価格も二千円でお釣りの来る、実に手頃な一品だが、その佇まいにはどこか人の心を和ませ、安心させるものがあり、それが得も言われぬ風情を醸しているように思う。
無論、純粋な観賞用途に耐えるものではなく、あくまでも実用品だが、「用の美」は十分に愉しめそうだ。
ただそれは、燃料も調達し、実際に使用してはじめて得られるもの。
必要に迫られての後者の機会はなかなか訪れそうもないし、そうそうあっても困るのだが、ともあれ燃料だけは用意しておこうと思う。