蓼科高原日記

音楽・本・映画・釣り竿・オーディオ/デジタル機器、そしてもちろん自然に囲まれた、ささやかな山暮らしの日常

OTTO DCA-A15のノイズ問題(2)

先に以下の記事に書いた通り、OTTO DCA-A15に生じる凄まじいノイズは、通電および使用をしばらく継続するリハビリテーションでは残念ながら改善しなかった。

 

lifeintateshina.hatenablog.com

 

そこで次に、素子の劣化などがないかを確認すべく、筐体の蓋を開けてみることにした。

 

OTTOのすべての製品が同じスタイルを採っているのか否かは定かでないが、蓋(上蓋)を開けると、基板は上下ひっくり返った形で取り付けられている。

 

これはハンダの状態を見るには都合が良い反面、コンデンサーなどの素子は基板の下に隠れてしまっており、見ることができない。

 

 

ご丁寧に、この基板をひっくり返す手順が上蓋の裏に貼付されているのだが、それによると、まずボリュームなどつまみをすべて引き抜き、さらにそれらの軸の根元のナットも全部取り外し……と、結局全分解に近いことが要求され、取り敢えず状態を確認しようとの目的には少々大袈裟すぎるため、これは一先ず措き、横から懐中電灯の光を当てて眺めて見た。

 

すると、コンデンサーの根元に何か樹脂のようなものが付着していることに気付き、これが液漏れと言われるものだろうか――と思ったのだが、このアンプにおいては根元すなわち上方に当たるわけで、通常の置き方をされていたであろうという至極もっとな仮定の下では、漏れた液が重力に逆らってそっちへ流れることはないはずだ。

 

ここでまたネットで調べたところ、液漏れはコンデンサーの膨張とともに見られる場合が多い、基板への固定に接着剤が使われることがある、といったことを知り、これらを鑑みて液漏れではなさそうだとの(希望的)結論に達した。

 

実際、あとで底面の一部が外せるようになっていることに気付き、その覗き窓から確認した結果も、上の結論の妥当性を裏打ちするものだった。

 

 

 

 


では他にこのノイズの原因となりそうなものは?とまたネット上へ戻って調べているうち、今度はウィスカー現象なるものに出くわした。

 

ウィスカー(whisker)とは頬髭、特に猫や鼠のヒゲのことで、電気工学においては、錫や亜鉛などの金属表面にその猫のヒゲのような形に単結晶が自然に発生・成長する現象を、ウィスカー現象と呼ぶらしい。

 

そして、錫といえばハンダの成分で、ここにウィスカーが生じてショートを引き起こし、延いてはオーディオ装置における盛大なノイズとなるケースがあるというのである。

 


そこで上蓋を開けたままにしておいたDCA-A15を再び観察――最初に述べた通り、基板がひっくり返っているのでハンダの状態は一目瞭然――すると、明らかにウィスカーと思われる金属光沢をもったヒゲは認められないものの、ハンダの周囲に黒い汚れのようなものが生じて隣接するハンダに達している箇所が散見された。

 

20211230-DCA-A15基板

 

これが導通性のものかどうかははっきりしないが、あって都合の良いものとは到底思えないため、先端の尖った四角錐ポンチで軽くこそぎ落とした上、古歯ブラシで払い除けた。

 

こんなことであの激烈なノイズが消えたら儲けもの――といった気持ちで、ともかくスピーカーと電源へ接続してパワースイッチを入れたところ、辺りがシンと静寂に包まれた。

 

無論、それまでより静かになったわけではないのだけれど、何度も電源を入れた瞬間にあの雑音を経験していたので、これがなくなって正しくそんな感覚を覚えたのである。

 

試みに今一度電源を切って入れ直しても問題なく、各スイッチをあれこれ操作しても、あのノイズが発生することはなかった。

 


こうして意外と簡単に問題の解決を見ることができ、何事も試してみるものだと改めて思いながら、本来ならそのまま少しまとまった試聴へと移るところだが、緊張の後の安堵で少々気が抜けてしまったため、小休止を挟むことにして一旦電源を切った。

 

そして、ブレイクの後、電源を入れところ……

 

やはりノイズに耳を聾されることはなく、これなら問題は完全解決、と気分よく音楽をかけた。

 

が……何となく音に迫力がない。

 

といっても、これは質に関することではなく、音量が少ないためで、それはなぜかと思案――するまでもない、右スピーカーからの出音がないのである。

 

何度もあの爆雑音を再生したことでスピーカーが逝ってしまったのかもしれない――と、念のためケーブルを繋ぎ替えてみたところ、今度は左側が無音となり、やはりアンプに原因のあることがわかった。

 


実はその後、ラウドネススイッチの切り替えにより、正常に出音される状態になることも何度かあったのだが、最終的にはこれも効かなくなり、右チャンネルは完全な沈黙に陥ってしまった。

 

雑音から無音へと、問題が転換してしまったわけだ。

 

今度はこの原因究明と対処……これだからジャンクオーディオはやめられない……

 


(T.B.C.)