2021年のはじめに真空管プリアンプを入手したことで昔のオーディオ熱が再燃し、続いてやはり中華製の真空管パワーアンプ、デジタルアンプと購入、ここで気持ちが落ち着くかと思いきや、それどころかかつて憧れたブランドや往年の名機に対する興味が噴出し、オーディオ黄金期と言われる1980年代に名を馳せたモデル、およびJBL, TANNOY, BOSEといったエンブレムをまとった製品(ただし、いずれも非高級品)で家の中が埋まるまでになった。
そして、今年に入ってテクニクスSU-8055とダイヤトーンDS-251というさらに古い時代の製品の醸し出す音色に魅了されたことで、さらなる状況の悪化を招いてしまった。
しかしながら、こうしてずらりと並んだオーディオ装置群を眺めると、確かに気分は悪くない。
が、そこに一つ、小さな傷をつけていたのは、他でもない、1990年代のアンプが抜けているという事実である。
とはいえ、既に設置スペースを確保するのが難しい上、'80年代とは対照的にそれに続く10年はオーディオ暗黒期として知られることもあるので、これまで積極的に動くことはなかったのだが、折に触れてと中古市場に目をやることだけは続けていた。
そんな中、DENONのプリメインアンプPMA-7.5に遭遇した。
DENON――昔、これをデノンと読んで、オーディオ仲間に「それはデンオンだ、」と笑われたことが懐かしい。
それが今世紀に入って私の思った読み方へと変わったのも、ちょっとした因縁かもしれない。
デノンについては、古くからの名門、かつ1990年代にオーディオ業界が低迷する中でもコンスタントに製品を発表し続けてその地位を高めたブランドとして関心をもってはいたのだけれど、それだけに中古市場でも人気が高いらしく結構な値で取引される例を多数目にしていたことから、価格面での折り合いが難いだろう――そう思いながら過ごしているうち、今般、送料を含めてきっかり2,000円で出現。
状態は、外観にそれなりの傷、機能面については小音量時片チャンネルから出音せず、ボリュームを上げていくと鳴り出すということで、決して美完品ではないものの、当該モデル同等品の凡その相場が5,000円程度と見られることからすれば、買って損はなかろうと踏んでこれを購入した。
さて、デノンのアンプとは、一体どのようなものだろう――と期待しながら、届いた荷を開梱して取り出しての第一印象は、こんなに安っぽいのか……というものだった。
電源スイッチをはじめとする各ボタンが、鍍金してそれらしく装ってはいるもののすべてプラスティック製で、恐らくボリュームも同様、さらに側面パネルは素のプラスティックである。
これを発売時の価格49,800円と照らし合わせると……なるほど1990年代の様相が自ずと理解できるような気がする。
初対面でこのようなネガティブな心象を抱いてしまったのは残念だが、ともあれ先へ進むことにしよう。