一月ほど前に注文したものの、在庫切れでしばらく待たされていたスピーカーが漸く届いた。
恐らく納期に余裕を持たせたのだろう、当初は五月中旬と通知されたが、それよりは十日ほど早く手にすることができたわけだ。
今回は新品購入、機種はJBL製「STAGE A120」である。
創立者ジェームス・B・ランシングの頭文字をブランド名として冠するJBLといえば、スピーカーメーカーの雄として、単にオーディオマニアのみならず一般にも広く知られていることは、あらためて言うまでもないだろう。
いずれもペアで100万円を越えるハイエンド機種(当時としては)で、中学生には現実から遠くはなれた単なる憧れ、手に入れることなど夢の世界だった。
一方、ちょうど同じ頃、JBLはコンシューマー市場も視野に入れ始め、モデル名は忘れたが、10万円を切る製品がぽつぽつ登場して来たように記憶している。
それから数十年が経過した現在、私は「STAGE A120」を、実に2万円を割り込んだ価格で購入した。
この間、世の中ではCDやPCの登場と爆発的普及、さらに企業としてのJBLにも、サムスン電子の傘下へ入るなど大きな変化のあったことは確かだが、それらを鑑みても、これほど手軽にJBL製品を手にできるようになるとは、我々の年代にとっては少々信じがたいことである。
無論、このように安価なスピーカーから、果たして衆耳を魅了する「JBLサウンド」が再生されるのだろうか――との疑念は無きにしもあらずだったが、その片鱗くらいは味わえるだろうと考え、利用者の評価もまずまずだったことから、今回の購入に踏み切った。
既に我がオーディオのメインシステムともなっている真空管パワーアンプとの接続を想定してである。
届いた荷の梱包は、中国での製造とはいえ、さすがに有名メーカーらしくしっかりしていた。
それを開梱して製品本体を取り出し、新品なのでそれほど神経質になる必要はないだろうとは思いながらも、念のため簡単にチェックを行った。
エンクロージャーは天然木仕上げで、木目を出した部分と黒塗りの部分からなる、ツートーンのやや凝ったデザイン。
その好悪は人によって分かれるかもしれないが、質感は悪くなく、それなりの高級感も漂わせている。
また、小型スピーカーによく見られる、エンクロージャーの容積を確保するために奥行を変に深く取った、個人的にあまり好きではないフォルムでない点もよい。
さて、ざッと見たところ、エンクロージャーを初め、端子およびスピーカーユニットにも瑕疵はなく一安心――と思いきや、底面に若干の歪みがあるらしく、基本的な縦置きにして、真上から見ての右上隅を抑えると、わずかなカタつきがある。
右左、両方ともそうなので、恐らく工程上の問題によるものだろう。
このカタつきは、付属のゴム足を底面に貼付しても遺憾ながら消えなかったが、重大事とは思われないし、万一の場合は、先に使って大きな効のあった「防振シート」をまたダイソーで買えばいいだろうと自らを納得させ、アンプと接続して音を出すことにした。
そのサウンド・インプレッションについては、新たに記事を起こしてご紹介しよう。