(承前)
スピーカーを重ねて置けば、共鳴して音がおかしくなるのは当たり前――との声が聞こえて来そうである。
いや、それくらいのことは知識として持ち合わせているし、理解もしているつもりだ。
だからこそ、DS-66EXに切り替えてその音の確認を行ったのである。
また、タンノイ、ダイヤトーン両スピーカーのユニットの生み出す磁場の相互干渉の可能性も頭にあった。
しかしながら、それらの影響を実際に耳で聴くという経験はこれまでしたことがなかったため、これほど激烈な変化に遭遇して今更ながら驚いた次第だ。
その再生音を強いて喩えれば、狭い室内に詰め込まれた多人数が、わいわいがやがやわあわあ、好き勝手にしゃべっている感じ――とでも言ったらいいだろうか。
音楽を魅力あるものとするに重要な要素であるハーモニーが完全に崩壊してしまっており、なるほどこれでは聴いていて気分の悪くなるのも当然かもしれない。
さて、ではどう対処するか。
この問題の原因としては、上に書いたように二通りを想定したわけだが、磁場の干渉は一先ず措き、経験のある共鳴への対処から行うことにした。
実は、以前、地袋の上にスピーカーを直起きした際にもこの共鳴が発生し、ある方策が奏効したのである。
その方策とは、ダイソーの「防振シート」(4枚入り)をエンクロージャーの底面に貼付するという、至極単純なもので、早速これをまた購入してきた。
左右のスピーカーそれぞれの底面四隅に貼るとなると、二つ必要――などとは贅沢なこと。
今回私は、1枚のシートを対角線2本に沿ってカッターで切って4片とし、スピーカー1台に当てたので、防振シートは2枚で済んだ。
単に物資、延いては金員の節約だけではなく、接触面積は小さい方がいいのではないか――との考えもある。
なお、この防振シート、地震の際に家具の転倒を防止する目的のものなので、粘着力がかなり強く、切るのには少し苦労するし、表面の弱いものに貼付した場合、剥がす際に塗装落ちなどを引き起こす可能性もあるかもしれないので、もし使用される際はご注意頂きたい。
これをタンノイ・Revealの底面四隅に貼り、DS-66EXの上に慎重に置いた(一旦置くと、しっかり密着して位置の微調整はきかないので――その場合はやり直す)。
そうして、先に出力先として切り替えたDS-66EXの方を鳴らしてみると、思った通り、きちんと以前の音に戻っていた。
これなら、磁場の干渉については当面考える必要はなさそうである。
次いで、スピーカー・セレクタつまみを回してRevealに切り替えたところ、先ほどまでとはまったく違う、各楽器の調和した響きが聴こえてきた。
のは間違いない……
のだが、やはり、お世辞にも「良い音」とは言えないのだ。
籠った――というより、詰まった(stuffedではなく、stuckの方)音になってしまっている。
ツイーターの不良かと思い、耳を近づけると鳴っているようだし、念のためWeb上の「簡易音生成器」で高音を出してみて、機能していることは確認できた(スピーカーにダメージを与えないよう、音量は十分に抑えた)。
よく聴くと、高音が出ていないわけではなく、中高域が頭打ちになっている。
Revealのクロスオーバー周波数は3KHzだが、どうもこの辺りの音が弱いようなのだ。
ともあれ、これがあの有名なタンノイの音だろうか――と疑念を感じながら、ふと思い付いたのは、タンノイと言えばクラシック音楽――との評判だ。
そこで、再生中だったジャズを止め、クラシックの音源を掛け直したのだけれど、音像や音場云々ではなく、音そのものに瑕疵があったわけであるから、ソースのジャンルが変わったからと言って良く聴こえるはずはない。
もしかしたら不良品を掴んでしまったのかもしれない……と残念な気と後悔の念に心は満たされてしまった。
そんな気分に苛まれて音楽を止め、同病相憐れむ相手を求めるわけではないけれど、このようなことを経験した人は他にもいるのだろうか――と、ネットで少し調べてみると、機種や症状はさまざまながら、やはりタンノイのスピーカーにおいて、初めは満足のいかない音だったものの、鳴らしているうちに一変して良くなった――との事例に複数出会った。
いわゆる「エージング」の効であろうが、今回私の入手したのは中古品で、それなりに使われていたと思われるから、同じことで改善するとは期待し難い。
しかしながら、他に対処法の当てもないので、しばらく鳴らし込んで様子を見てみようと思う。
これが奏効してくれることを祈りつつ。