蓼科高原日記

音楽・本・映画・釣り竿・オーディオ/デジタル機器、そしてもちろん自然に囲まれた、ささやかな山暮らしの日常

FMレコパル 1978年10月23日増刊号[小学館]

私がオーディオに興味を覚えたのは、中学2年の終わり頃だった。

 

きっかけは、よくある通り、これの好きな友人に影響さたことである。

 

ちょうどオーディオが華やかな様相を呈していた時期で、さまざまなメーカーが積極的に製品をリリースしており、またこのジャンルを扱った雑誌もいくつも出ていた。

 


その代表的なものとして、いずれも隔週刊(だったと思う)の「FMファン」と「FMレコパル」があり、どちらを愛読しているかにより二派に分かれていた感がある。

 

他に、「ステレオサウンド」なる高級志向を謳った季刊誌も既に世に出ていたようだが、我々の間には全く認知されていなかった。

 

当時の同誌はそれなりに真摯な紙面作りをしていたようだが、その後現在に至る様子を振り返って眺めると、これは幸いだったと言うべきだろう。

 

 

 

 


さて、上の友人は「FMレコパル」派だったため、私もそれに倣ってこの雑誌を購読し始めた。

 

これは以後数年に亘り続けたが、やがて世がCDの時代となり、それまでは考えられなかった高音質再生が手軽に実現できるようになったことで却ってオーディオに対する関心が薄れ、いつの間にか買わなくなって、その後しばらくは実家の書棚に並んでいたものの、大学生となり独り暮らしを始める際に処分してしまった。

 


数年前からそんなオーディオに対する熱が再燃するとともに、その頃に対する懐旧の情も強く湧き出したことから、同誌の古書に手頃なものがないかと折に触れて見ているのだけれど、私と同じような思いを持つ向きが多いのか、まず例外なくそこそこの値が付されている。

 

もちろん稀覯本的価格というわけではないのだけれど、200円という当時の定価を下回ることは期待できそうもない状況の下、一度手放したものをまたより高い価格で再購入するのはどうしても釈然とせず、以前持っていたものを保存しておけばよかった――という後悔の念に苛まれてきた。

 


そんな中、今年に入って、テクニクスSU-8055およびトリオKA-5300という、私のオーディオ事始めより前の製品を手にしたことから、FMレコパル・FMファンどちらでもよいから、これらにより当時の斯界の様相を知りたいと強く思うようになった。

 

これならいずれにせよ初めて買うものなので、少しばかり値が張ってもよかろうという気持ちになるのが人情というもの。

 

そんな気持ちでのんびり待っている内に遭遇して入手したのが、「FMレコパル 1978年10月23日増刊号」である。

 

20230811-FMレコパル 1978年10月23日増刊号表紙

 


かつてのこの雑誌の購読時には、増刊号なるものに接した記憶はないのだが、実際に手にして690円という価格を目にし、400ページを超える厚さに触れても、やはりその感は変わらない。

 

FMレコパルには、当時重要な音源だったFM放送の番組表とともに、オーディオと音楽、両分野の記事がバランスよく掲載されていたのに対し、この増刊号は「オーディオ特集」と銘打っている通りここに特化した内容となっている。

 

しかし表紙のイラストや内部の体裁、記事タイトルから全体の雰囲気に至るまで、確かにFMレコパルのもので、今改めて目にすると何とも大衆的で安っぽい印象を否めない一方、あの頃のことが色々と思い出されて来て懐かしい。

 

20230811-FMレコパル 1978年10月23日増刊号コンテンツ

 


考えてみればこのところ、オーディオ機器にしろ鉄道時刻表にせよ、はたまた今般のFMレコパルにしても、視線が過去へと自ずと向いてしまう。

 

そういう年齢になったということか。