テクニクスSU-8055とビクターDC-5500というプリメインアンプとスピーカーの組み合わせは、幸い安定して良い音を聴かせてくれている。
ただ、DC-5500の方はシステムコンポの構成要素と位置付けられた製品で、単品コンポーネントとして販売されたものではない。
もちろん、安かろう悪かろうというスピーカーではなく、上に書いたことは事実なのだが、22(もしくは23cm)ウーファーを具えた3wayたるそれなりに大きなモデルでありながら、自重は6kgほどしかなく、正直頼りない感じを否めない。
これに加えて価格の面でも、アンプが5万円を超えているのに対し、スピーカーの方は恐らくペアで4万円までいかないと類推され、さらにそれぞれの時代(1979年と87年)の物価水準を考慮すると、かつてシステムの黄金比と言われたアンプとスピーカーの価格比3:5から大きく逸脱していることから、DC-5500では少々役不足なのではないか、もしかしたらSU-8055のポテンシャルを十全に発揮できていないのではないか――との思いが胸に蟠っていた。
それが嵩じて、再びスピーカーの物色の開始である。
先ずはいつものように適当な縛りの設定だが、改めて既存の十数組のスピーカーを見ると、最も古いものでも1986年製で、今般は1980年を目前にして世に出たアンプで鳴らすことを鑑み、70年代半ばくらいまでのモデルの中から選んでみることにした。
この時代のスピーカーには、現在に比べ大口径のウーファーを具えた2wayシステムが目立ち、これがどんな音を響かせるのかという興味も湧いたことから、現状当方の設置スペースの許す最大サイズである25cm程度を中心にあれこれ見ていった結果、当時人気を二分しその後も名機として長らく作り続けられた二つの製品に辿り着いた。
DIATONE DS-251とVICTOR SX-3である。
ダイヤトーンのDS-251は1970年に発売され、1973年に改良型のDS-251mkIIが出た後、1976年の生産終了までに累計60万本という売り上げを記録したモデルとして知られ、一方のSX-3は1972年の発売、こちらもSX-3Ⅱ, SX-3Ⅲとモデルチェンジされて約8年に亘り20万台以上も販売されたという。
いずれも世に出てから実に50年を経ているわけだが、これだけ売れた機種ゆえ現在も中古市場に頻繁に姿を見せている。
当時の価格はいずれもペアで5万円台、こちらも当時の物価水準からすると決して安価ではないものの、上の事情から値は自ずと抑えられて比較的入手し易い。
そしてSU-8055との価格バランスも良さそうなことから、この二機種に的を絞って適当な品に出会う機会を窺うことにした。
ところで、DS-251は片チャンネル当たり3つのユニットを搭載しており、字義通りに言えば3wayで、当初の選択基準から外れるのだが、具体的構成はウーファー(低域)、トゥイーター(高域)、スーパートゥイーター(超高域)となっており、往時主流だった2wayの拡張型と考えることも決して不自然ではないし、「全ユニットにアルニコ磁石を使用」という点に大きく惹かれたため選択肢に残したのである。
SX-3については、ヨーロッパ製スピーカーを髣髴させるその容姿には食指を動かされる反面、同機の誉め言葉としてあちこちで目にした「柔らかく豊かな低音」というのは個人的に好みにそぐわないことから、若干及び腰になったのは否定できない。
しかしこれも、敢えて手にしたら新たな発見になるかもしれないので、破格の品が出たらそれも天の配剤――と除外はしなかった。
こうして過ごすこと約一月、これぞと遭遇したのは、DIATONEのDS-251の方だった。
製造から50年を経過しているだけに、mkIIに比べてさえ外観の古めかしさは如何ともしがたいのだけれど、これが逆にいわゆるヴィンテージ・オーディオの香りを色濃く漂わせており、得も言われぬ味わいを具えていることも確かだ。
少々誇張したことを言えば、これを眺めていると、JBLハーツフィールド、タンノイ・オートグラフ、エレクトロボイス・パトリシアンといった、オーディオ史に燦然と輝く品々が自ずと我が脳裏に浮かんでくるのである(笑)。
それに、当時のメーカーの製品作りに対する意気込みだろう、エンクロージャーは合板製ではあるものの、表面はビニールシートではなく突き板で仕上げられており、その堅牢さに守られて大きな傷みは見られない。
片や、より重要な機能面についても、一応「音の出ることは確認済み」となっている。
そんなまずまずの状態の往年の名品に、送料を含め五千円札でお釣りの来る値札が貼られているのだから、これはもう買わない法はないだろう――
というわけで、既に部屋から溢れ気味の当方のオーディシステムにまた新たな一員が加わったのである。