蓼科高原日記

音楽・本・映画・釣り竿・オーディオ/デジタル機器、そしてもちろん自然に囲まれた、ささやかな山暮らしの日常

プリメインアンプ OTTO DCA-A15

OTTO(オットー)製プリメインアンプDCA-A15と聞いて、「ああ、あの製品か、」と頭に浮かぶ人は、ほとんどいないに違いない(現在ではOTTOそのものが消滅してしまっているので、これをご存じない方のために一言すれば、三洋電機のかつてのオーディオブランドの名称である)。

 

それもそのはず、この機種はオーディオ評論家という太鼓持ちの先生方のヨイショはもちろん、広くユーザからの高い評価を得た類のものではなく、それどころか、恐らく単体として販売されてもおらず、単に往年のシステムコンポ、いわゆるシスコンの一構成品をなしていたに過ぎないからだ。

 

しかし、こう書けば、わざわざそんなアンプを入手した理由はもうお分かり頂けるだろう。

 

そう、個人的に、私が初めて手にしたオーディオ製品が、そのOTTOのシステムコンポだったのである。

 


時に1980年のことで、このシスコンは以後20年近く働いてくれたものの、やがてボリュームにガリが出たり、出音が不安定になったりしたため、SONYのハイファイコンポーネントシステム「DHC-MD373」に座を譲り、今思えば惜しいことをしたものだが、2000年の引っ越しを機に廃棄してしまった。

 

それを今般、改めて手に入れようと思い立ったのは他でもない、今年の始め、ふとしたことから真空管プリアンプを手にしたことがきっかけでオーディオに対する関心が再燃し、これまでにご紹介した通り、この一年、アンプおよびスピーカーが次から次へと増えてきたわけだが、その一環として、我がオーディオ事始めとなったOTTOにも目が向いたのである。

 

 

 

 

 

もっとも、既に40年以上前の、しかもメジャーとはいえない製品ゆえ、今となっては入手困難だろうし、そもそも型番が記憶にないという状態だった。

 

しかしともあれ探してみようと、取り敢えず「OTTO システムコンポ」をキーワードとして検索したところ、ここはマイナー製品であったことが幸いして多すぎない適当な数の情報が得られ、さらにその中に、こちらはほぼはっきり記憶に残っているパネルデザインを具えたアンプを見出すことができた。

 

そこに印された文字から、目指す製品が「DCA-A15」であることを知り、あとはいつものように中古市場を注視しながら、価格や状態がこちらの希望に合致するものの出現を待っていたところ、漸くそれが実現。

 

その一品は、価格については何の問題もなかった一方、専門外の業者によくある「通電のみ確認済み」という状態で、この点、何分古い物だけに気になるところだが、最悪、オーディオ機器として機能せずとも、記念のオブジェ、想い出のインテリアとして十分用をなしてくれるだろうと考えて購入したのである。

 

なお、上に「パネルデザインははっきり記憶に残っている、」と書いたことは、次の画像のシンプルかつ端正な表情から、容易に納得いただけるかと思う。

 

20211224-otto-dcaa15

 


さて、実物を手元に置いて、まずは中古品、特にジャンク品紛いに対する通過儀礼ともいえる、外観の確認とクリーニングだ。

 

傷はほとんど見られなかったけれど、一つ、テープを張った痕が歴然と残っており、これが結構目立つので、早速その除去に着手した(先のSONY TA-F555ESXもそうだったが、何故テープなど張ってしまうのだろう……)。

 

lifeintateshina.hatenablog.com

 

使用したのは、上の記事でもご紹介したハンドクリーム。

 

しかし相当の歴史を経てきた痕らしく、かなり目立たなくはなったものの、落とし切ることはできなかった。

 

そこで続いて、KURE556を使ってみることに。

 

件のテープ痕は印字の近くにあり、KURE556がその文字を犯す恐れがあって少なからず躊躇したのだが、幸いそのようなことは起こらず、テープ痕もほぼ落とすことができた。

 

ただ、金属そのものに些か変質が生じてしまったらしく、光の加減によってはわずかにそれが認識されてしまうが、この程度は仕方あるまい。

 

あとは接点復活剤を含ませたウェスで接続端子を磨き、乾ウェスで余分な剤を拭き取ってクリーニングは完了。

 

 

 

 


続いて、いよいよ機能確認、音出しである。

 

ボリュームを絞り、電源スイッチを――と、ここで初めて、トグル型のそれが左、すなわち外側へ曲がってしまっていることに気付いた。

 

そこで一旦電源プラグをコンセントから抜き、果たしてこんな手でいいのだろうかと危ぶみながら、ウェスを噛ませたラジオペンチで挟んで少しずつ力を加えたところ、幸い折るようなことなく直すことができた。

 

そして電源をオン。

 

すると無事パイロットランプが点灯――したのはいいが、それと同時にバリバリバリという凄まじい音が右スピーカーから迸り出たため、慌てて電源スイッチを切る羽目となってしまった。

 


こんなことは今年中古で購入した先の三台のアンプ「PANASONIC WP-1100A」「VICTOR A-X900」「SONY TA-F555ESX」では起こらなかった初めての事態で、念のためケーブルのショートなどがないか確認してみたが、問題はなさそうだった。

 

そこで今一度、恐る恐る電源を入れると、やはり同じようにスピーカーが逝ってしまうのではないかと危惧されるほどの盛大な雑音である。

 

が、先ほどとは異なり、今回は心構えができていたので慌てることなく、試みにボリューム、トーンコントロール、バランスなどを操作してみた。

 

これらによる変化は特に見られなかったのだが、ラウドネススイッチを元々のオフからオンへと切り替えた瞬間、雑音はぴたりと止んだ。

 

そこで今度は逆にラウドネスを切ってみたところ、雑音の再発はなく、さらにオン・オフの切り替えを何度か繰り返しても静かなままだった。

 


本来なら、無論根本原因を究明して適切な対処を行うべきところだが、電気回路に関しての知識も経験も持ち合わせていない身にはどうしようもなく、ともあれ現象が収まったので、当面、これはこれで良しとすることにした。

 

ただ、この雑音が聞こえなくなると、その下にジーといった感じのノイズが埋もれていたことが判明。

 

さらに、ボリュームにガリが生じている。

 

上のノイズは両チャンネルに見られる反面、ガリの方はどうも右だけらしい。

 

何度かボリュームつまみを回すと、次第に小さくなったところをみると、原因は接触不良のようだ。

 


が、他の機能も見るため、これも一先ず措いて音楽を再生することにした。

 

さて、一体どんな音を聴けるのだろうか――と不安8割、期待2割といった気持ちで身構えたが、スピーカーから流れてきたのは、実にしっとりとした、それでいて決して軟弱ではない、しっかりとしたサウンドだった。

 

遥か以前のシステムとは構成がまるで違うことはさておき、この音なら、確かに長年に亘って聴き続けてもさほど不満は感じなかったはずで、改めて「いい製品を使っていたのだな、」と深い感慨を覚えた。

 

ところが、そんな夢見心地の気分は、突如蹴散らされてしまった。

 

そう、またしてもあのバリノイズが轟き出したのである。

 

これはやはり、蓋を開けて見ねばなるまい……

 


(T.B.C.)